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環境破壊系ダンジョンの経営は大変です。 3

 私は期日が来る前にダンジョンを解放することにした。その一番の理由はここ数日一切上がってこない総戦力グラフにあった。生物の数が増えても、彼らが成長しても見て取れるようなグラフ上での伸びがない。その横ばい状態は完全に頭打ちになっていることを示していた。

そこでダンジョンを解放したのだが、解放前に感じていた頭打ちの閉塞感は吹き飛んでいた。これまでも大部屋を三つ繋げる事でスピースを確保し、下に小部屋を作ることで水深に差を作るなど工夫はしていた。しかしいつも変わらない環境は生物に敵しているわけではない。

どうしても成長にブレーキがかかっているように感じたため、ダンジョン解放を決意したが、その判断は間違っていなかったようだ。


 指定した比較的標高が高い河川はまるで小さなダムのように変化していた。山間の谷間部分は完全に浸水し、ダンジョンの入り口に設定された場所から一斉にモンスターが解き放たれた。

 原生生物たちにとってはまさに地獄の釜が開いたような状況だった。最初に気づいたのは小川に水を飲みに来ていた鹿だった。地震のような全身を叩くかのような轟音が響き渡り、凄まじい勢いで水が吹き上がった。宙から振ってくる大量の水滴に、群れの仲間が逃げていく中、1頭の鹿は呆然と宙を見つめ続けていた。

 一体何が起こっているのか?目の前の現実を受け入れられないとばかりに宙を見続けるその一頭を現実に引き戻したのは足下に落ちてきた水草と魚だった。びちびちと跳ね回る巨大な魚、それと一緒に落ちてきた植物が脚に絡みつくように感じたとき、ようやく現実に頭が追いついた。このままだと溺死するかもしれないという事に思い至り最後の一頭も走り去った。


 それから数十分間吹き上がった水がやむことは無かった。地面がぬれて固まり、徐々に水がたまっていく。周辺にあった物を全て飲み込み、できあがった池はまだ舞い上がった土や、草木で汚らしい物だったが、そこには今までいなかったような生物がすみかを作り始めていた。

 解き放たれた生物にとって重要だったのは、今まで見たことのない生物たちは一体何者なのかという点。自分たちの生態系の位置は一体どこなのか?それを探し出すために彼らは一斉に動き出す。見知らぬ生物に攻撃を仕掛け、縄張りを作っていく。昆虫や小魚を残さず食べていた目玉メダカ、その目玉メダカを食べる鋏海老。彼らは一気に生態系のツートップの位置を確保した。新しいモンスターが送り込まれるまでは。


 ダンジョンが解放されたことでいくつかの機能が解放されていた。中には一体何ができるのかも分からない機能もあったが、モンスター図鑑と新モンスターに関してはわかりやすくすぐさま理解できた。しかし、今のところ上手く回っている生態系を動かすことに抵抗を覚えた結果1週間ほど慎重にダンジョンの様子を見ることにした。

 

 結局新モンスターの追加を決定した理由の一番大きい物は、既存のモンスターが余りにも生命力に溢れており、バランスなどを考える必要は無いんじゃないかと思えたからだった。

 今回新しく召喚可能になったのは蟹と亀だった。やはり水生生物しか出てこないモンスター達にやっぱりかという諦めと、逆にここに来てゴブリンなどが出てこなくて良かったという安堵で複雑な心境だった。

 新しくリストに追加されていた蟹をひとまず雄雌10匹ずつ、亀は雄雌1匹ずつを召喚したが、この二種類とも初期モンスターと比べると高価で予想外の出費になった。達磨草が5P、メダカが10P、ザリガニが20Pの中、蟹が一匹20P、亀は1匹50Pだ。この二種類はしっかりとこの出費に答えるだけの性能を有していた。


 まずは蟹、正式には岩蟹という名前らしい。合計で20匹も購入したからこそ分かるが、かなり個体差のあるモンスターだ。体のほとんどが岩と見間違うような甲殻を持っており、甲殻の形や色合いも個体によってかなり違う。おそらくという推測になるが甲殻の堅さも違うのではないだろうか。

 大きさは小さい物で5センチほど、大きい物だと15センチ程までいる。かなり臆病なのか、慎重なのかすぐに地面に潜ってしまい、苔や藻を食している様子が確認できたことから草食であることがうかがえる。実際の戦闘能力の方は疑問が残るが、あの甲殻を見てもかなり厄介な相手である……と期待をしようと思える……


 そして大本命、亀だ。日本にいたときから知っていたことだが、実は亀というのは凶暴で種類によっては人間だろうと襲ってくる。そんな亀のモンスターは一体どんな化け物が来るのか?

 最初の印象はとにかくデカイ。正確なデカさは分からないが、全長1メートル以上あるんじゃないだろうか、虎亀と表記されているこのモンスターは正真正銘の化け物だった。今までこのダンジョンで一番の実力を誇っていた鋏海老は一瞬でかみ砕かれ、目玉メダカは丸呑みにされ、一瞬で生態系のトップに君臨したこの亀様はダンジョンのボスになった。


モンスター解説

達磨草

水流に流されながら、凄まじい勢いで増えていく水草。水流のたまり場に群生し、多くの生物にとってのすみかになる。特筆するべきはその生命力。根っこや茎がほんの僅かでもあればそこから完璧に再生する。

その名前に含まれる達磨はそのフォルムから来ている。大きく膨らんでいる丸い茎の部分が一際目を引き、上と下に葉と根を申し訳程度に持つその見た目は達磨と言えないこともない。その茎内部は空洞となっており、もろく簡単に割れてしまうがその破片からまたしても再生していく。流れ着いた先でダンジョンの生態系を構築してしまう厄介者。


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