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冒険者に不向きな男2

 クモは赤髭に向けて声を張り上げる。

「待って!? あたし、まだやれるよ!? 呪文は使えるし、体だって普通に動くんだよ!?」

「だが、片目は見えないしその障害は残るんだろう、ナナツメ?」

「……ええ、そうですね……」

「悪いことは言わん。お前ももうダンジョンに関わらない方がいい。そんな体でダンジョンに挑んだら死ぬだけだ」

「そんな……!」

「じゃあ、俺は行く。古強者カトラスのチームが戦士クラスを集めてるって話でな。そこに入れて貰おうと思ってる。ナナツメ、お前はどうする?」

「……わたしは……しばらくダンジョン攻略から身を引きます。わざわざ潜らなくても働くことはできますから」

「治療の奇跡を扱える僧侶は食いっぱぐれがなくて羨ましいよ。それじゃあな。サトシもクモも達者で暮らせよ」

 赤髭はそそくさと席を立ち、ナナツメもそれに続いた。

「クモ、傷は塞がりました。あとは……私にできるのはここまでです。……さようなら」

「ねえ、みんな!? これで終わりなの!? ウソでしょ? あたし達、まだ始まったばかりじゃない! こんなのって……」

 二人去り、二人残る。

「クモ、その、なんと言っていいか……」

「……ねえ、あんたさあ。あたしがどうしてここまで来たか知ってる? なんでダンジョンに挑んでるか、わかる?」

「え? 確か王都の魔術学校を出て腕試しに来たんだろう?」

「……そうだけど、それだけじゃない。あたしにはこれしかなかった。だからここに来た」

クモは傷に手を当てた。

「他に道なんか無いと全てを投げ捨てて。ここで腕を上げればいつか……いつか認めて貰える。でも、終わっちゃった。片目の魔術師なんかきっと誰も仲間にしようと思わない。赤髭は正しい。片目じゃ正確な魔術の投射ができないから、一瞬のミスが生死を分けるダンジョン探索では誰も組みたがらない。仲間のいない片目の魔術師がこれから先どうやって名を上げられるっていうの? あたしが夢見てきたもの、全部終わっちゃったよ」

「だ、だが、お前はまだ生きている。全てを失ったわけじゃない」

「生きてるから何だって言うの!? 小さい頃からの希望、あたしにあったたった一つの才能、手に入れられたかも知れない栄光、それを無くして、これからどんな顔して生きろって?」

「……諦めなければ……その、何とかなるかもしれない……」

「……あんたはいいわよね。生き別れた妹はまだ生きている、ダンジョンのどこかで助けを待っている、とそう諦めずに信じていればいいんだから。それがどんなに非現実的なことだとわかっていても、生きていると信じてさえいれば明日を夢見て生きられる。でも、あたしはそうじゃない。あんたと違って、もうダメだっていう現実が見えちゃったから。妹はもう助けられないって現実を見てないあんたとは違う」

「サトリは生きている! 俺にはわかるんだ!」

「……あんただけそんな希望を持って生きるなんて許せない。あたしはあんたの所為で夢を失ったのに! あんたも妹なんかもうとっくにダンジョンで死んでいるっていう現実を受け入れなさいよ! そして、絶望しろ!」

「クモ! お前っ!」

 俺は短剣に手をかける。

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