表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

空っぽなポケット

 小さい頃からキラキラ光るものを見つけると、欲しくて堪らなくなる。道に落ちてるガラスのかけら、白く光る石、鉛筆のキャップ、折り紙の切れ端。

 キラキラ輝いて見えるものはなんでも欲しくなる。そして、ポケットに入れてしまう。

 

 やっかいなのは、人のものでも欲しくなったら我慢できない事だ。

 そして、盗ってしまう。

 最初にバレた時は、本気で後悔して二度とやらないと心に誓った。でも、ダメだ。またキラキラを見つけるとウズウズして、自分を止められなくなる。そして、バレないように盗るのが上手くなった。 

 

 最初に見つかったのは、小学1年の時。学校に友達が持ってきたビーズのアクセサリー。うっとりするほどキラキラしていて、気付いたらポケットに入っていた。盗った時の記憶は全くないけれど、ポケットからハンカチを出すときに一緒に落としてしまい、友達が先生に告げ口した。

 先生はそんなに怒らなかったけど、どうして盗ったのか?なぜ人の物を盗ってはいけないのか?を、しつこいぐらい話していた。そしてママへ連絡した。

 

 私のママは素敵な人だった。いつも爪にネイルをしていて、ピアスもネックレスもしていた。自分磨きを怠らず、少し体重が増えただけでご飯も食べなかった。いつも彼氏がいてたけど、私のことが一番大事って言ってくれていた。

 

 そんなママに先生が連絡した。

 ママに嫌われる。怒られる事よりそれが怖かった。

 でも、ママは違った。先生に怒られて怖かったでしょ?って言って、そんなに欲しい物だったらこれで買えばいいわ。って千円くれた。

 ママから千円もらった事が申し訳なくて、後悔した。

 

 次にバレたのは小学6年の時。

 100均のマニュキュアだった。その時500円持っていたけど、マニュキュアのキラキラを見たら早くポケットに入れなくっちゃって思ってそのまま入れてしまった。

 店を出た時、店員さんに呼び止められて、ママに連絡された。

 3時間後、ママが来た。丁寧に謝って、マニュキュアを10本買って帰った。その10本を私に渡して、好きなように使いなさい。とだけ言った。

 

 なんでもそうだが、家でキラキラを見ても何もときめかない。なので、そのマニュキュアも全部友達にあげた。

 

 

 大人になった今、流石にキラキラの物を盗む事は無くなったけど、人の彼氏が欲しくて堪らなくなる。

 

 私はバツ2だ。過去2回の結婚の全てが略奪愛だ。1人は離婚までさせた。けど、いざ結婚式を挙げると、急激に冷めてくる。もう手を握られるのも嫌になってすぐに別れてしまう。  

 だから、今回の人は違ったらいいのにな、と思う。今回の人も婚約者がいたけど略奪してしまった。だって好きになってしまって、相手も私が好きになったら、もうしょうがない。

 

 彼の家で夜ご飯を食べて、明日の仕事のために今日は泊まらずに帰る。車でマンションの前まで送ってくれた。早く一緒に住めたらいいな。名残惜しいけど、手を振って別れる。

 

 彼の車が見えなくなったと思った時、背中に痛みを感じた。 

 

 え?何?って、振り返ると、彼の前の婚約者だ。真っ赤に染まった手にナイフを持っている。

 刺された。と思った瞬間、彼女がキラキラした。

 あ、ママだ。と思った。そうか、キラキラしていたのは、ママだったのか。小さい頃の私は、ずっとママをポケットに入れたかったんだ。

 

 刺してくれた彼女にお礼を言おう。気付かせてくれて、私と向き合ってくれてありがとう。

 だから、あなたでいいから、キラキラが見えなくなる前に早く私のポケットに入って。

 私が死んでも私を1人にしないでね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ