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俺の手を両手で包み込んで上目遣いに好きと言ってくれたユイ、コレは現実か?
俺は自慢じゃないが女子供には泣かれることはしょっちゅう、最悪吐かれたことも一度や二度とじゃない…。
そんな俺に好きでいていいのかって聞いてんのか?ほんとに?
「ユイ、今、俺のこと好きって言ったか?」
「うん、言った。ライルさんが好きです」
「そ、それは動物や花なんかによく言うやつとか?」
「うんん、あーっと、ぉ、お慕いしています!」
今までにないくらい質問に被せるような返答に、より心臓の鼓動が大きくなっていく。
くっ、このまま俺死ぬんじゃないだろうな…
「ユ、ユイ、俺と結婚してくれないだろうか。
ユイとの生活も、姿を見たことはなくてもずっと好ましいと思ってた。
今朝、初めてユイの姿を見た時、目を逸らせなくなった。こうやって顔を合わせていられるのも俺にとったら奇跡な事で、目を合わせて話せる相手がユイでとっても感動している。
今日、大事な戦なのはわかってたけど、ユイと手を繋ぐことができるってすごい浮かれてた。実際戦闘の最中に俺の腕の中でユイが寝ちゃってるってわかった時は俺に委ねてくれてるんだって舞いあがった。」
「あっ、それは……」
「…安心して寝てくれたんじゃないのか?やっぱり…」
「安心してです!ライルさんの詠唱の声とかあったかい感触がたまらなかったの!」
「!!」
真っ赤になったユイが涙目で訴えてくるって…なにこれかわいい。ほんと、ムリ。
「ユイ、結婚しよう。すぐしよう。絶対苦労させないから!」
包まれていた手を逆に包み返し、自分の方へ強く引く。
バランスを崩したユイが俺の胸に飛び込んできてたまらず抱きしめた。
◇◆◇
それからすぐに両親に結婚の報告をし、翌日には両親とユイと聖なる祠で宣誓を捧げた。
街の連中には戦場の後処理を丸投げしてたから後から文句も言われたが、思った以上の人数に祝われた。
どうも、みんなユイの見た目でだいぶ俺の顔立ちにもなれたようで、俺も人間として見たら問題なかったようだ。
…それも複雑な気持ちだ。
今はククルの谷の修繕と、半壊してしまった離れの改修に追われている。
せっかくユイと気持ちを通わせられて結婚できたのに親と一緒に住むとか何の罰ゲームだ。
半壊になった原因の父に恨みが増す。
でも、それを言うとユイは『ゴベ爺さんがいたから私はライルさんに逢えたんだよ?ゴベ爺さんが命の恩人なんだからね!』ってかわいく言ってくる。
日々俺の嫁がかわいくてたまらん。
今までの生きてるんだか死んでるんだかわからない生活が嘘のように毎日感情への刺激が強くて過去を思い出すこともできなくなっている。生きてるって幸せだなぁって本気で言う日が来るとは思ってなかった。
こんな気持ちを教えてくれてありがとうユイ、これからも一緒に幸せになろうな。
◇◆◇
「ねー。ライルさん、結局聞きそびれてたんだけど、スタンピードで溢れた魔物って何だったの?なんか執念深くって狡猾で残忍っていうのはなんか聞いたんだけど、ヘビ?デーモン?て、そういえば、この世界の魔物ってどんなのがいるの?」
「そうだな、そんな話はしたことなかったな。
ほら、これ、魔物図鑑、チビ用のだからざっくりしか書いてないけど毒持ちとか、注意度も書いてあるから結構役に立つよ。
で、コレが今回のスタンピードで大量発生したゴブリン。ただのゴブリンならまだ対処もそんなに難しくないんだけど、今回は次のページのこいつら、キング、ジェネラル、メイジもいたからより難易度が高くなったんだ。」
「ご、ゴブリン?緑色だね?」
「?ああ、ゴブリンはみんな緑だな、唯一キングはちょっとだけ金色味を帯びるくらいかな。」
「ね、ねぇ、つかぬことをお聞きしますが、気分を害したらごめんね。
あ、あのね、ここの人たちって何て言う人種?」
「俺たちはアッシェントエルフだ。エルフって知らない?結構スタンダードだと思ってたんだけどな」
あ、アウトー!どう見ても色白ゴブリンだよ!ゴベ爺さんなんか、まんま服装変えて色味チェンジしたらゴブリンじゃん!
ずっとゴブリンの集落だと思ってたからゴブリンって口悪いけど穏やかな気性なんだなぁなんて思ってたのにぃ!
エルフって、草食じゃないの?
確かにライルさんは見た目まんまザ・エルフぅ!って感じだけど⁉︎
なんかこれからみんなに会うたび二度見、三度見しちゃいそう…。異世界コワイ…。
拝啓 お母さま。
お元気でしょうか。
異世界に迷い込んで数ヶ月、日本では絶対お近づきになれないくらい外見も中身も素敵な旦那様を見つけることができ、毎日とっても幸せです。
おわり