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案内された部屋は、20畳くらいあります。セミダブルサイズのベッドと、タンス、両手を広げたサイズくらいの丸テーブルに椅子が二脚。
廊下とは別にドアがあり、開けてみるとバスルームとトイレでした。
色合いはクリーム色の壁や天井に、家具類は飴色の木製です。優雅な彫刻が可憐です。ふむ。お洒落なホテル並ですね。
とりあえず、スーツの上着だけ脱いでタンスに仕舞いました。テーブルの上にカバンを置いて中身をチェックしましたが、仕事用の書類と、筆記用具、懐中時計、カロリーメイト、ハンカチティッシュ……化粧道具。三つ折財布。自宅のカギ。ミニ懐中電灯。
携帯電話はバンツのボケットにあります。取り出して見ましたが案の定、圏外です。使えません。
部屋には窓がついていました。少し緊張しながら、外を覗いてみます……。
赤い屋根と高い塀と、密集する家々。
さらに街?を囲む石塀と──森です。
木々というか、自然は緑のはず、ですが──赤いのです。
奇妙な、植物らしくない生々しい森が街を囲っていました。葉っぱも枝も赤黒く、空気もどんよりしていました。やばいです。なんでしょうかあれ。
空の色も灰色です。曇っているのではなく青空でなく、灰空なのです。
うわあ、と頬を引き攣らせていたら、ノックの音が。
どうやらメイドさんが、軽食と飲み物を運んできてくれたみたいです。
「ありがとうございます」
お礼を言うと、かすかに微笑まれました。
時間を尋ねると、だいたい午後三時くらいのようです。時間の区切りは、鐘が鳴るので、皆さんそれで生活しているとのこと。
夕食まではまだ時間があると聞いたので、この世界のことがわかる本か何か借りられないか聞いてみました。
メイドさんは探してきますと言って部屋を出ていき……人を連れて戻ってきました。
「初めまして。ユーギアスといいます」
金髪碧眼のキラキラ美少年がひとりと。
「……ジルドヴェリスだ」
銀髪赤眼のクールな強面の美男子がひとりと…。
「ラーツァです。こんにちは、異世界の方」
青髪に耳部分に小さな羽根が……羽根が?生えたふんわり美青年がひとり……。
「帝国第一皇子と、魔王様と、神族天人様です。この御三方でしたら、この世界を統べていらっしゃるので、詳しく御説明できるかと!」
メイドさん……いったいダレを連れてきたのでしょうか。
いや、よく連れてこれましたね?
さすがの私もびっくりです。