出会い(2)
気絶している男達を拘束した僕は、女の子達に声を掛けた。
「大丈夫ですか?怪我は?」
「は、はい!大丈夫です!助けて頂きありがとうございました!」
そう言ったのは赤い髪のポニーテールが特徴的な女の子だ。腰には剣を提げている。剣士なのだろう。
「あ、ありがとうございました………」
緊張しているのか少し小さい声でそう言ったのは、もう一人の女の子だ。こちらは綺麗な金髪を肩の少し下の辺りまで伸ばしている。杖を持っているところを見ると、魔法をつかえるのだろう。
ちなみに僕は杖がなくても魔法を使えるので、やっぱり持ってきていない。
それにしても二人とも美少女だなぁ。
「お礼は結構です。災難でしたね、二人とも」
「本当よ!ちょっと欲を出してトロールの討伐に行こうとしたのが間違いだったわ!」
赤髪の少女がぷりぷりと怒っている。
「だからやめとこうって言ったのに………」
金髪の少女の方は最初から反対だったようだ。
「まあこれに懲りたら気をつけるようにして下さい」
「あ、そうだ。まだ名前言ってなかったわね。私はフィオレよ」
「私はアイリスです」
赤髪美人がフィオレ、金髪美人がアイリスか。
「ミカエルです。よろしくお願いします」
「うん!よろしく!それにしても、ミカエルって美人ね!」
「確かにとてもお綺麗です」
あぁ、この子達にも誤解されてる………。
「そ、そうかな………ありがとう。ちなみに男なんだけどね………」
「「えーっ!」」
二人は揃って驚きの声を上げた。
「肌めっちゃ綺麗だし、髪も長いから女の人だと思ったよ!」
「ずるいです………男性なのにそんなに綺麗なんて………」
まあ確かにずると言えばずるだな。神様補正だし。
「そんなこと言われても………。それよりこの男達はどこに連れて行けばいいんでしょう?やっていたことは盗賊と同じですよね?」
「決まってるじゃない。王都の騎士団の駐在所まで引っ張って行って、騎士団に突き出すのよ」
「でも、ここから王都まで結構距離が………」
うーむ。僕は魔法で高速移動できるけど、彼女達はできないみたいだ。
「僕の転移魔法で行ければいいんですけど………」
「え!ミカエル転移魔法も使えるの⁉︎」
「えぇ、使えますよ」
「すごい………何属性の魔法を使えるんですか?」
この世界の魔法には、大きく分けての八つの種類がある。火、土、水、風、雷、聖、闇、そして無属性。
「一応、全属性使えますよ」
「「えーっ!」」
また二人が声を揃えて驚いた。
「何それ⁉︎反則じゃん!」
「私は火と風と聖の三つが使えるけど………まさか全属性なんて………」
「いや、それでもすごいですよ。普通は一属性か二属性くらいしか使えないんでしょう?」
「そうだけど、全属性持ちのミカエルが言うと嫌味に聞こえるわよ!」
「す、すみません………まあ僕のことは置いておくとして。転移魔法で行くには一つ問題があるんです」
「問題、ですか?」
転移魔法は便利なんだけれど、一つ欠点があるのだ。それは。
「転移魔法では過去に見たことのある場所じゃないと移動できないんです」
これは結構ネックである。だから普段はあんまり転移魔法は使わないのだ。
「ミカエルは王都に行ったことがないの?」
「はい。ずっとこの森の中で暮らしてたので」
「「えーっ!」」
本日三度目のユニゾンが響き渡る。
「嘘でしょ⁉︎この森って、トロールとかの中級モンスターだけじゃなくて、上級モンスターも山ほどいるのよ⁉︎」
「人間が生活するのには全然適していません!本当にこの森に住んでいたんですか?」
まあ信じてもらえないよなぁ。フランさんは人付き合いが面倒になったからこの森に引っ込んだと言っていた。実際フランさんを訪ねに来た人なんて、この十年で一人もいなかったし。
「まあ色々事情がありまして。………それで話を戻すと転移魔法で行くことはできないので、僕が引っ張って行こうかと思うんですが………」
「え⁉︎ミカエルそんなに力あるの?」
「そこは心配いりませんよ。それで代わりと言っては何ですが、王都までの道案内をお願いしたいのですが、いいですか?」
「それならお安い御用ですが………」
「そんなことでいいの?命救ってもらった上に、盗賊の連行までやってもらって。それじゃあ、割に合わないと思うんだけど?」
「いいえ、そんなことはありません。お願いできますか?」
お礼といってらもらうのはお金とかだろうけど、僕はお金の使い道がない。だからわざわざそれでお礼を受け取る必要はないのだ。
「もちろんよ!任せなさい!」
「それじゃあ………とりあえず『ストレージ』」
僕はトロールの死体を仕舞い込んだ。
「トロールの死体も僕が持って行きますよ」
「うわー、『ストレージ』使えるんだ………」
「私は使えないんですよね………使えたら便利なのになぁ………」
『ストレージ』は無属性魔法の一つ。無属性魔法は人によって使える数も種類も全然違うらしい。だからアイリスが使えなくても不思議はないな。
その後僕は盗賊達をまとめてぐるぐる巻きにして縛り上げた。
「これでよし、と………準備はいいですか?フィオレさん、アイリスさん」
「私のことはフィオレでいいわよ」
「私もアイリスで構いません。それから敬語じゃなくて大丈夫ですよ。私は癖で敬語ですけど………」
「そう、ですか。じゃあ遠慮なく。行こう、二人とも!」
「うん!」
「よろしくお願いします!」
こうして僕は旅の第一歩を踏み出した。
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