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転生隠者は賢者になる  作者: 太白
決戦!、そして・・・
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巨大サメとガバリエリ


 蚩尤の分身が海の上にいる。その真下には巨大なサメが鯨を襲っていた。その鋭い歯で鯨の体を食い破りあたりは鯨の血で真っ赤に染まっている。そしてついに鯨は息絶え、深海に沈んでいった。

 一方的なその狩りを見ていた分身は、そのサメの体内へと入っていく。サメはしばしジタバタするが、次第に禍々しいオーラを纏い、徐々にその体を大きくしていく。遂にその体長が500mにはなろうかという巨大なサメの姿へと変異したのであった。


 そのサメの目の遠い先には大きな港町があった。サメは徐々にその町へと泳いでいく・・・・。


 その町の中には慈光教の支部がある。その支部長の名はガバリエリといい、およそ魔法使いらしからぬその体躯はまるで巨大な筋肉の塊のような男である。それもそのはず、この男この港町の漁師300人の頭領もしており、教団の仕事のほとんどをその部下に任せ基本的には海に出て手下どもと漁をすることの方が多かったのだ。


 ここの漁師たちはこのガバリエリの指揮のもと極めて高い戦闘力を持ち、周辺に出没した海賊どもがガバリエリ指揮のもと手にモリを持った漁師たちに襲われほんの数十分で海の藻屑とされるほどであった。


 さてこのガバリエリ、その風体からは想像もできないほど魔力も高く、現大魔導士エイダンとはライバルでどちらがその地位に就くか激烈な競争をしたことで知られる。また、その能力もさることながらこの二人の競争を最も有名にしたのは、互いにある意味病的なほどのヴィクトル信者だったことである。


 何を隠そうこのガバリエリ、かつてヴィクトルが訪れた村娘リーフと魔法使いビエートの子孫である。この夫婦は実に多くの子をなした。その中からはビエートの血を強く受け継いだ者もいて、その子は幼少より魔法が使えた。そして幼い頃より両親からヴィクトルの話を子守唄の代わりに聞かせられて育っていくのであった。


 成長するにつれ、彼の魔法の修行はかつてリーフが見ていたヴィクトルの、海を割る、という修行を行うようになる。この子の子孫もやはり代々魔法使いを輩出する様になり、歴代この海を割る修行をしてきたせいで、代を経るごとにその魔力量が飛躍的に大きくなっていっていく。そして今のガバリエリに至ったのである。


 ガバリエリがいつものように湾岸にいると、遠くから禍々しいオーラがこちらに近づいてくる。急いで港にある釣り鐘を鳴らして漁師仲間に緊急事態を知らせる。その鐘のけたたましい音を聞いた漁師たちはめいめいその手にモリを持ち急いで船を係留している場所に集まるのであった。


 背後に手下300人を従え腕を組んでじっと海を見つめガバリエリ。


「親分どうしなすった?また性懲りもなく海賊が出やしたか?」


 部下の一人が軽口をたたき、それを聞いた漁師どもが大声で笑う。


「バカ野郎! こりゃエイダンの奴が知らせてきた化け物の気配だ!」


 それを聞いた漁師たちが一瞬顔を引きつらる。だがその中の一人が、


「てことは俺たちもヴィクトル様のお役に立てる時が来たってことじゃねーですか!」


 その言葉にピクッと反応するガバリエリ、


「おーよ!エイダンばっかりヴィクトル様の傍にいさせちゃなんねー。あの変態ヴィクトル様に何するかわかりゃーしねー!こいつを始末したら俺も晴れてヴィクトル様にお会いできるってもんよ。」


 そう言うと漁師たちが笑いあう。


「じゃぁてめーら、いっちょやっちまおーか。」


 ガバリエリは漁師たちの方を振り向いて、ドスの効いた声でハッパをかけた。すると、


「おぉーーーー!」


 と盛大に漁師たちが盛り上がり一斉にそれぞれの船へと乗り込んだ。60そうの船が一斉に沖合を目指す。その先頭には腕を組んで微動だにしないガバリエリ。腕利きの漁師たちの漕ぐ船は迫りくる波をもろともせずグングンと沖合へ進んでいく。そして、遠くに巨大な背びれが発見した。


 漁師の一人が、


「あれなんだ? 妙なもんが海から出ていやがる。おぉ~い親分あれは何です?」


 そう言った先へ漁師たちが一斉に向いたその時。ガバリエリは顔を硬直させる。


「てめーら、気ぃ抜くんじゃねーぞ。あれがその化け物だ。あの背びれからしてサメだろうが、ありゃ500mはあるかもしれん!」


 その緊張した声に漁師たちの手が止まる。彼らはいわば巨大な戦艦にモリで挑もうとしているのであった。だが、彼らの士気は高い。今までにも海賊相手に十分に戦ってきた。ある意味では海の守り人だというプライドもあった。


 ガバリエリは各船に指示し、陣形を整えて巨大なサメに一斉に近づき、漁師たちはサメに向けてモリを打ち込む。百本近いモリはほぼその全てがサメの肌に届く。だが、禍々しいオーラがそれらすべてを遮りその巨大な魚体に傷一つつけることができなかった。


 巨大サメはヒレを一気に振り、海水を弾いて波を発生させ船を沈めようとする。漁師たちは船にしがみついて振り落とされまいと必死に船にしがみついた。


 ガバリエリはその様子を見ている。そしてもう一度モリの攻撃を与えるべくすべての船にキビキビ指示を与える。漁師たちはその指示に見事に従い陣形を整える。そしてまた再び一斉にモリを放ったのであった。


 だが、やはりモリは全くサメの皮に届かなかった。そこでガバリエリは自らモリを握り自分の船の船頭にサメに近づく様に指示をだした。船頭は待っていました、とばかりに荒波の中まっすぐサメに向かい進んでいく。ガバリエリは間合いをはかりながらモリを構える。そしてモリに魔力を込め、一気にサメの目を狙ってモリを放った。


 魔力を帯びたモリはその速さも尋常ではなかった。そして込められた魔力量そのものも尋常でなかったがため、サメが自分を守るために張ってあったオーラすら貫通してしまい、ついにはその目に深く刺さるのであった。ガバリエリが笑う。そして、


「おいてめーら、お前らのモリすべて俺に渡せ!」


 その声を聞いた漁師たち、船同士でモリを集め始め、そのうち何艘かがガバリエリの船に大量のモリを積んで近づいてきた。モリを握りしめるガバリエリ、そして大量の魔力をそれに宿して次から次へとサメに向かいモリを放つ。それはさもモリが雨のように降っている様に見えた。


 漁師たちは親分の人間離れしたその力に驚いてもいたが、むしろその雄姿を勇ましく思っていた。


 突き刺さるモリにサメもその場にいるわけもなく、ガバリエリの船をめがけて凄まじいスピードで迫ってくる。その波で周辺にいた漁師の船はその大多数が転覆し、その船体に漁師たちはしがみついていた。


 ガバリエリはサメが近づいてくるその直線上に船を留めさせ全身の魔力を最大限高める。そして、その間合いにサメを捉えたときガバリエリの最終奥義を放つ。


「海割り!!!!」


 ガバリエリから大量に放出される魔力が眼前の海水を動かしていく。そしてガバリエリとサメを結ぶ直線上を境にして徐々に海が分かれて行った。サメはそのまま進んでくるが、海水面が低下するのに伴ってその巨体が海底の方へと下がっていくのであった。そしてついにはその巨体は海底に着き、サメの両側には海水がまるで渓谷を見るようにそびえ立っているのであった。


 ガバリエリも下がる海面とともに海底にたどり着いた。海水の無い海底を悠然と歩き、その自重で身動きが全く取れない巨大サメの目の前に行く。サメはこうなればただの魚。しかも強大な体重を支えることができずに次第に弱まっていく。その様子を余裕で見ているガバリエリだった・・・・。


 だがその瞬間。最後の力を振り絞りサメがその鋭い歯で噛み切るようにガバリエリをその巨大な口に入れる。ガバリエリはあっという間に巨大なサメの口の中に入ってしまった。


 次第に海の割れ目が狭まっていく。一気に海水が流れていき巨大サメもようやくその体を再び海水の中へと戻すのであった。それを遠くから漁師たちがそれを絶句し見ていた。ある者は叫び、ある者は泣き。掴んでいる船を叩いては、悔しがっている。


 それに追い打ちをかけるように巨大なサメが海面上を飛んだ。再び全身をその空中に出した巨大サメの姿に恐怖する漁師たち。


 だが、その刹那。あたり一面を生臭いサメの血しぶきと肉片が飛び散るのであった。


 ガバリエリはサメの歯に噛み切られる前にその胃袋へ行き、内側から魔力を一斉に放出させ爆発させたのであった。もはや受肉したただの巨大な魚であるこの化け物は案外あっけない最後を迎えたのであった。

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