神器の威力
いよいよ最終章です!
さすがにヴィクトルがこの槍を、ヴィクトルの槍、という名前にするのは嫌だと言い出したので、学者のヨウメイがそれなら、九星槍でいかがか?、と提案してくれた。一同その名前にウンウンと頷いたので正式に九星槍という名前で落ち着いた。
だが、この槍はその後ヴィクトルの槍という名前に戻ってしまうのであるがこれはまた後の話となる。
セイキョウらに別れを告げ仁らは一旦慈光教の総本部へと戻っていった。帰りを見送るシン国の人々は仁らが飛行した跡をずっと見続けていたのだった。
久しぶりに帰ってきた総本部では、仁らの帰りを教団の人々が待ちわびていた。アイリスもようやく自分の古巣に戻ってこれたことで今までの疲れが一気に来たらしくすぐに自宅帰っていった。
仁とヴィクトルはエイダンとその他教団の幹部に招集をかけシン国での出来事を詳細に報告したのだった。一つ一つの報告を食い入るように聞く一同は最後に蚩尤との決戦のためシュバルツの森に行く必要があると聞いたとき、そこにいた全員が絶句したのだ。
それは蚩尤の恐ろしさよりも、シュバルツの森に行く、という事の方が彼らにとってはより実体験を伴った恐怖であったからだ。そして仁が落日弓を取り出して、
「これがシン国に伝わる伝説の弓、その名を落日弓といいます。そしてヴィクトルが持っている槍こそ、その名をヴィクトルの・・・。」
ヴィクトルの槍と言いかけたときヴィクトルが槍の柄で仁をコツき、
「九星槍というものだ!」
そういって凛々しく槍を構える。その姿に目を輝かせていたのはエイダンであった。
仁は頭を撫でながら、
「この弓には矢が必要ないんだ。魔力自体を矢に変えて打つスグレモノでね。後でみんなに見てもらおうか。」
と、その性能を説明した。
仁は皆を共だってヴィクトルが自らを封印していた公園に行き巨大な石柱を的にすべく、200mはあろうかという長距離に陣取って仁が弓を携える。すると矢をつがえていなかったのにも関わらず弓に矢がはっきりと目に見えるようになる。仁は目をつむり心の中で目標を念じ矢を放った。
矢は一直線に的へ飛んでいく。音もなく飛んでいく矢は一瞬で的の石柱を粉々にし、そのまま彼方まで飛んで行った。その後、バン!っという音が聞こえたかと思った刹那、猛烈な暴風が的に向けて吹き過ぎたのだった。矢の速さは音速を超え、その衝撃風が矢の放たれた音の後から届いたのである。
激しくなびく髪の毛を手で押さえてようやく立つことができた一同は、的が粉々になっていることもさることながら矢の軌跡の通りに地面がえぐれているのを見て固まっている。
「これが神器のすさまじさか!」
皆がその理解にようやくたどり着いた瞬間だった。
仁はエイダンに、各国に蚩尤との決戦が近く起きること、それの対応を各国で行うこと、などを知らせるように要請した。エイダンは速やかに使者を各国に派遣し併せて教団内でも幹部らに指示して臨戦態勢を敷くのであった。
各国から準備が整ったという連絡が来るまで3か月を要し、その間教団ではヴィクトルを中心に魔法師団の魔法力の底上げを行った。もちろんその中にエイダンの姿もあった。エイダンはヴィクトルからの指導によりさらにその才能を開花させ、以前のエイダンとは比べ物にならなくなったその魔法力はもはやヴィクトルに匹敵するほどにまで成長したのだ。
ヴィクトルはここまで成長した弟子の実力を照れながらではあったが素直に褒めたのだ。エイダンの喜びようはご想像の通りであった・・・・。
そしていよいよ出発の時。仁とヴィクトルの二人は総本部にいる人々に見送られシュバルツの森へと飛んで行ったのであった。
シュバルツの森へ行く途中、アーノルドの墓に立ちよった二人。ヴィクトルはようやく兄とも慕うアーノルドの魂と再会できるのであった。子孫のベンジャミンは二人を喜んで迎えてくれたが、先を急ぐ二人はゆっくりすることもなくそのまま出発し、次の目的地ラメールへと向かう。
ラメールではまずバイドの墓に向かった。ここではさすがのヴィクトルも懐かしのバイドの墓を前に冷静ではいられなかった。涙に揺れる肩を優しくさする仁。しばしの間、200年前の郷愁に浸る二人であった。そして最後にアルフレッドとダミアンの墓へと飛んでいく。
そこには毎日のように墓に詣でていたイザベルが今日も花を供えていた。ちょうどその時に二人が上空から降りてきたのを間近に見たイザベルはかなり驚いていた。仁は以前に言えなかったこと、つまり自分こそかつて慈光の大賢者といわれた当の本人であることをイザベルに自白する。
イザベルはそれを聞き涙を流して、
「ようやく賢者様がおいでになられましたよ、アルフレッド様、ダミアン様・・・。」
と報告するのであった。仁はイザベルに頭を下げ別れを告げた。その際にイザベルは以前仁に渡したハンカチを取り出して、どうかご無事で、と仁の手の中にハンカチを渡しそしてその手を強く握りしめたのであった。
こうしてこの世の中で寿命を超越した二人がこの世での別れを済ませ、いよいよ決戦に赴こうとしているのであった。




