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転生隠者は賢者になる  作者: 太白
本来の面目
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弓と鼎


 ガツガツと箸をすすめる仁にパコーンと掌で仁の頭に一発突っ込みを入れるヴィクトル。


「師匠、いい加減にしろ!」


 えっ、という顔で仁がヴィクトルを見る。


「師匠!一体何日寝てたと思う?に2週間だぞ、2週間!!」


「なるほど、それでこれだけ腹がすくのか!」


 そして再びひたすら食い続けるのであった。ヴィクトルは、あぁ~あこれだ、という顔をして後、このままでは仁にすべて食い荒らされるとばかり自分も料理に手を出し始めた。アイリスはそろそろ悟りの境地に達しようかと思わせるような無表情でそんな二人をただ見つめている。


 チョウケンは、ホッホ、と笑い自慢の白髭に手を当ててその凄まじい食いっぷりに感心していた。あまりにその勢いが凄まじいのでチョウケンは追加の料理も頼み自分も一緒に食べ始めるのであった。そしてアイリスも箸を手に取り3人に遅れまいと箸を差し込む隙を狙っている。


 食事を終え4人はお茶を飲みながらホッと一息ついている。


「で、何の話だっけ?」


 仁が呆けた様にいうのをヴィクトルが真面目に、


「蚩尤を退治に行くんだろ?場所は分かっているのか?」


 そう聞き返す。口にお茶を含みクチュクチュうがいをしてそれを飲み込んだ仁が、


「それならもう分かっているよ。」


 と軽く言う。アイリスはその行儀の悪さと汚らしさに絶句し食べたものが上がってくるような感覚があった。そして改めてこいつは賢者ではないと自信を持って確信するのであった。


 ヴィクトルは、


「で、それはどこなんだ?」


 と真剣な顔をして仁の方を向く。チョウケンも同じく仁の方を向く。


「さて、ここで質問。よくわからんがメチャメチャ魔獣が出てくるところってどーこだ?」


 おっさんが目をパチパチさせてかわいい子ぶってヴィクトルに尋ねる。しかもこのおっさん人差し指をおったててである。ヴィクトルはそこらには耐性があったので全く気にすることなく考えている。アイリスはウエェー、という顔をしている。しばらくして、


「なるほど、シュバルツの森・・・・か?」


「正解!」


 仁は2週間混濁とした意識の中で、黄帝と会っていた。そして、かつて激戦を繰り広げた場所が今のシュバルツの森のあたりで、蚩尤を封じた場所がその奥にある一番高い山であると教えてくれたのだという。

 また、シュバルツの森が異様に危険度の高い魔獣がウヨウヨしていた理由こそ、蚩尤の邪悪なオーラがあふれ出したせいで魔物が魔獣へと変化した結果なのだと、仁にとって長年謎であったことの理由がようやく理解できたのだった。


 ヴィクトルが、


「じゃぁこれからシュバルツの森へ行くんだな。」


 と仁に聞くと、


「そのつもりだが、その前にすることがある。」


「それはなんだ?」


「新しい武器を作らなければいけないんだ。さすがに普通の鉄の刀では蚩尤には歯が立たないらしい。」


 そう言って仁はチョウケンの方を向く。


「チョウケン殿、シン国には落日弓という武器があると聞きましたが、まだございますか?」


 チョウケンが居住まいを正して、


「宮廷の宝物庫に該当する承乾宮に厳重に保管されております。ですが・・・。」


「ですが?」


「もはやただの木の棒でしたありません。弓としてはまず使い物にはなりますまい・・・。」


 そう顔を背ける。


「一応拝見できるように陛下にお願いしていただけますか?それと、九鼎もありますか?」


「それはございます。同じく承乾宮に保管してあります。」


「チョウケン殿、この国宝ともいえる2つの宝物を私にいただけますでしょうか?蚩尤を倒す武器にどうしても必要なのです。」


 そう真剣な顔でチョウケンに申し出る。チョウケンは、


「今から陛下に謁見し、賢者殿の申し出をお伝えしてまいります。なに陛下の事、蚩尤を倒すためだとお聞きになれば是非もなく許可なされるであろうと思う。」


 そう言うとスッと立って屋敷を後にした。


 次に仁はヴィクトルの方を向きなおし、


「さて、ヴィクトルお前には今回の蚩尤の討伐を手伝ってもらいたい。かなり危険だがお前しか頼るものがいない。命が失う危険もあるが引き受けてもらいたい。」


 そういって頭を下げる。ヴィクトルは、また何を言い出すのやらという顔をして、


「当たり前だろ?師匠がんなこと言わなくたってついていくつもりだったよ。何をいまさら水臭い!」


 そう言って師匠譲りのニヤ笑いをするのだった。


 アイリスは自分は?、と指で自分自身を指している。仁は気がついてはいたもののお茶を飲んで無視した。


 そんな子弟の時間をゆっくりしているとチョウケンが帰ってきた。


「賢者殿、陛下よりご裁可が得られました。必要とあれば承乾宮の全てを差し出してもよいと仰せでありました。」


 そう満面の笑みで仁に報告する。仁は頭を掻きながら、いやそこまでは・・・、という顔をするのであった。


 翌日、仁ら一行は承乾宮に向かい、そこでヨウメイに再会する。ヨウメイは仁を見ると駆け寄りそして土下座をして神を崇めるかのように礼を述べるのであった。仁は慌ててヨウメイを立ち上がらせて、もういいから、とうろたえている。


 承乾宮ではすでにセイキョウとコウテツが待っており、そこでも皇帝と丞相からあたらめて厚く礼を述べられるのであった。こんな今まで経験したことのないようなVIP待遇を受けてようやく厳重に保管された落日弓の前に立つ仁。


 落日弓は古代のあるとき太陽が10個出てきた。時の弓の名手イゲイがこの弓を使い9個の太陽を撃ち落としたという伝説の弓である。


 目の前にある木は既に弓の形ではなく所々木が腐食している。仁はその木の棒を手に持ち、自らが黄金色に輝きながら魔力を注入する。すると、弓が黄金色に輝きだし宙に浮いた。


 そこにいたセイキョウら一同は口を開けて驚いている。ヨウメイはその奇蹟に拝礼していた。


 輝く弓が仁の手元にゆっくりと落ち、その手に握りしめた瞬間。眩い光が止み、そこにあるのは朱色の古代文様が浮き出た威風堂々たる弓になっていた。


 次に対面にある九鼎に向けて歩く仁。九鼎は古代の地域の9つに分け、各地域から産出された金属を集めて作られた祭器である。


 仁は九鼎に向け魔力を集中する。九鼎は仁の魔力に反応し共鳴し始めた。9つの音が承乾宮の中でこだまし、その音は音楽に匹敵するほど心地よく美しい調べになっていた。共鳴する九鼎が宙に浮き黄金色に輝く、そして円形に並んで回転し始め、ついには中心に一気に集まり眩い光を放った。


 一同は手で目の前を遮るが、仁だけは微動だにせずひたすら魔力を流し続けていた。光が止み、その目の前には黄金色に輝く槍が一条浮かんでいた。その姿は穂先に向けまるで水か流れるような流線形をしており、穂先には9つの色に輝く星が浮き出ている。


 仁はこの槍をヴィクトルに渡して、


「ヴィクトルの武器はこれだ。命名ヴィクトルの槍!」


 おっさんのセンスのなさに一同が落胆した瞬間だった。

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