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転生隠者は賢者になる  作者: 太白
本来の面目
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黄帝と蚩尤


 広場にいた者すべての視線がその女性に向けられていた。仁は、


「あのぉ~、どちら様ですか?」


 と何食わぬ顔で聞く、台にいるシン国の一同はその仁を呆けて見ている。


「ん? 私のことを存じよらぬといいやるか!まぁそれもせん無き事。人の寿命では私を知らぬのもやむを得まい。私は九天玄女きゅうてんげんにょかつてそなた等の始祖たる黄帝に仙術を教えたる者じゃ。」


 と答えた。それを聞いたチョウケンは、


「では、あの黄帝様が蚩尤しゆうと戦った際、様々な術をお教えになったといわれるあのお方であらせられるか!」


 それを聞いた九天玄女が嬉しそうに、


「おぉ、伝承は残っていたようじゃな。左様、その通りじゃ。」


 と、胸を張って答えた。そして、九天玄女が仁の方を向きなおして、


「さて、黄帝の気を引き継ぐものよ、心して聞くがよい。蚩尤が再び暴れる兆候が出ておる。」


 そう言い放つと場が一斉に騒然となる。シン国の伝承では、かつて蚩尤というよこしまな化け物が国中を荒らしまわっていた。それを黄帝は大軍を率いて討伐しようとするが激戦の末敗れた。そこでこの九天玄女が仙術を黄帝に教え、その術を用いてようやく蚩尤を倒したと残っている。


チョウケンが、


「しかし、蚩尤は黄帝様によって討伐されたと聞いておりますが?」


「いや、殺してはおらん。蚩尤めなかなか手強いでの。黄帝は蚩尤を封ずるのが精いっぱいであった。そして長い年月を経てあやつめ力を取り戻しよった。」


「黄帝の気を引き継ぐ者よ。そなたこれより流破山りゅうはざんへ赴き、あ奴を倒してまいれ!」


 そう言って仁へ手をかざし、九天玄女の体が黄金色に輝き始める。すると仁の体も同じように輝き始め、仁の体が宙に浮き始めるではないか。それを見た百官らは口々に声を出す。


「(うわぁぁぁぁ、頭の中にいろんな情報が入ってくる・・・・・。)」


 宙に浮いた仁は足をバタバタさせ、頭を抱えてジタバタしている。しばらくその光は続き、ようやくその輝きが終わったとき仁は台に落ちて動かなくなった。九天玄女は、仁を見届けた後徐々にその姿を消していった。


 ショウケンは仁の傍に走り寄り、仁を抱きかかえ、目覚めさせるようと何度も体を揺さぶるが仁は目を覚まさなかった。


 こうして、シン国の封神の儀は前代未聞の騒動を起こして幕を閉じる。


 ショウケンは自分の屋敷に仁を運び、仙術による回復を試みるが仁は一向に起きる気配がなかった。セイキョウは至急慈光教に使いを出し、儀式の最中に起きたことと仁が意識不明になっていると知らせた。


 仁が意識不明になって1週間ほど経って、最初の使者として派遣したコウテツがボロボロの恰好でシン国に帰還してきた。この時初めてシンカイの死を知った彼は誰はばかることなくその場で泣き崩れるのであった。


 コウテツとシンカイは同期官吏として互いを意識するライバルであったが、同時に無二の親友でもあった。計画を打ち明けられたコウテツもまた最終的にはシンカイの心意気に打たれてその計画に参画するのであるが、シンカイは自分が亡き後の朝政をコウテツに託すべく、騒動が起きるシン国から遠く離れた地へ使者として派遣することで彼の身の安全を確保しようとしたのである。


 セイキョウは帰還したコウテツを直ちに丞相に任命し、混乱した朝政の綱紀を改めさせた。こうして幼年の皇帝の親政がいよいよ始まったのである。今回の陰謀は幼年の皇帝が皇位を継いだことに起因したのではあるが、封神の儀で九天玄女が現れたおかげで、神から皇帝が認められたというある種の威信を手に入れることとなり、セイキョウに歯向かう者はなくなった。


 さらに一週間が経っても仁は目を覚まさなかった。ちょうどその頃、シン国の上空に一人の男が到着したヴィクトルである。ヴィクトルはセイキョウから事情を聞きてそのままショウケンの屋敷に急いだ。そして今、部屋にはヴィクトル、ショウケン、アイリスそして寝ている仁がいる。


「師匠、またどうしてこんなことに・・・。」


「申し訳ないヴィクトル殿。儂が付いていながらこのようなことになり。」


 それを聞いたアイシスはまたしてもヴィクトルに土下座をしている。


「アイシスそんな真似はやめろ。お前のせいじゃねーから。このアホ師匠が自分でやっちまったことだからさ。それにしても行く先々で何か起こすんだからな、この人は!」


 そう呆れながら寝ている仁の額を触っている。ショウケンは、


「実は九天玄女様がおっしゃるには、かの化け物蚩尤が復活するとのこと。それを伝えられた賢者殿がその後意識をなくされたのです。」


「それは皇帝から聞いたよ。だが、分からないんだが、その流破山ってのはどこだ?」


 ヴィクトルがチョウケンに聞く、


「某も賢者殿が倒れられた後、ヨウメイなどに調べさせたのですが一向に分からず・・・・。」


「そうか・・・・、なら仕方ねーな。」


 そいって再び仁の方へと視線を向けた。そして、チョウケンが、


「長旅でお疲れであろう、まずは食事を持ってこさせよう。」


 そういって家人に食事を持ってこさせた。ヴィクトルはかつてシン国にも来たことがあったのだがそれはもう二百年以上も前の事。この土地の料理を味わったはずだがもう記憶にはない。


「おっ、うまそうだな・・・ではさっそく。」


 そういって料理を口に入れた瞬間、


「ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅっぅ!!!!!!!!!」


 盛大に鳴り響く仁の腹の虫。そして、


「いやぁ~よく寝た。というかまた夢の中で修行するとはね・・・もうホント嫌!」


 そう言って今まで寝倒していたおっさんが目覚めるのであった。そして目の前にある料理がその視野に入り、いそいそと箸を握り食べようとする。ヴィクトルは口が開いたままになりせっかく口の中に入れた豚肉を無意識に落とす。ショウケンは笑顔で仁の顔を見ている。アイリスは何故か涙目であった。

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