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転生隠者は賢者になる  作者: 太白
異世界転生チュートリアル
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魔力と生命力の等価性


「やっぱり効率が悪いか。まず確認すべきは純粋に魔力量の問題かな。」


 そう思って一旦ユニを連れて家に帰ることにした。仁は一人で持てるだけの鉄鉱石をとりあえず持って帰ることにする。仁は帰りは倒された木々を避けながら体力向上のためにも走って帰ることにした。

 ここ数年ランニングなんてしたことがなかった仁は、どれくらい走れるか不安ではあったが案外三時間ぐらいぶっ続けで走ることができた。ただし、揺れるお腹は問題で走ると揺れる腹の肉が邪魔して走るのが大変だったのは仁だけの秘密である。


「ちょっと走りこんで痩せないとダメか・・・。」


 仁は今でこそ中年太りしているが、かつてはほんの一瞬だが、がっちり体形で太っていない時期もあった。正確には元来太っていたがあることをきっかけに半年で二十五キロほど痩せた経験をしたのだ。

 一応やればできる人間である仁。仁自身も痩せようと思えばいつでも痩せることができると思っていたので、それがかえって肥満を加速させたという側面もあった。だが、仁は転生してからある意味では野性味あふれる生活をすることで、再び体力作りに目覚め始めていたのである。


 そんなこんなの帰り道、仁は食べれそうな魔物や岩塩拾って再び家に着く。ちょうどお腹が空いていたのでコメをいったん家の中で保管しておいて、さっそく魔物をいつものように解体し、肉を焼いて食べた。

 そして食後に落ち着いて白湯を飲みながら考えていたのだった。それは魔力量を上昇させる効率的な方法はどうするか、であった。

 今までの経験上、空になるまで魔力を使うと自分の魔力量は上昇していた。おのずと魔力の過剰使用で魔力量を上げることができると考えたのだ。

 しかしこれには問題があった。それは通常の魔法を使うだけでは魔力が空にならなくなってしまったのである。かといって巨大な魔法を発動すれば周囲の環境を変えてしまいかねない。そこで、仁は環境に影響を与えずに魔力を使用する方法を考える必要があったのだ。


「う~ん、さてどうしたものか・・・。」


 そう思ってユニの方を見たとき、仁はかつてユニが言っていた事を思い出した。それは魔力と生命力の等価性というものであった。

 ふつうの感覚なら、生命力→魔力、つまり生命力があるから魔力が生まれるとイメージする。しかし、これが等式ならば・・・、可逆も可能になる。つまり魔力を生命力に変換することが可能かもしれない、そう仁は考えるに至ったのだ。


 するとユニが微笑みながら


「正解です。賢い人は好きですよ私、ウフ。」


 ユニの人を舐めた様な笑顔にイラっと来るが、神の使徒のお墨付きが得られた。この方法を試すのがよさそうであると考えた仁は、さっそく試そうと庭先にある大きな切り株の上に座禅をする。そして、意識を集中し全身に流れる魔力を感じる。

 次に生命力を感じるようにする。しかし、生命力を感じることがなかなかできない。何度も、意識をしながら生命力の流れというものを感じようとする。しかし、何度やっても感じることができなかった。それを続けること、なんと十時間、もはや夜中であった。

 今日はおとなしくあきらめた方がよさそうである。ユニは飽きたのかすでに家の中でスースー寝息を立てているようだ。


 小姑猫が占領したベットで、猫を強引に移動させ仁も就寝することになった。


 翌朝も、同じように切り株の上座り続ける。気分転換に畑に行き、狩りをし、食事をし再び座る。そんな生活を数か月。いまだに生命力を感じることができない。さすがに方法がまずいのかと考え始めたころ。ある夜中いつものようにベットの中でいびきをかきながら寝ていた。するとその夜に転生してめったに見ない夢をみた。


 薄暗い夕方に仁は歩いている。街並みは生前のころと同じ。街を行く人は無表情に歩いている。仁も家に帰るべく駅に向けて歩いていた。駅に着いたらたくさんの人が改札を出ている。その人の中に一人の少女がこちらを向いている。ただじっと見つめられている。


「やばい目が合った。視線をそらした方がいいな。」


 身の危険を感じて視線を逸らす。その瞬間仁の周りが一瞬真っ暗になった。何も見えない、何も感じない。視覚、聴覚、触覚、すべての感覚がなくなった。まるで真っ暗な空間で宙に浮いている、そんな感覚になっている。


「なんだこりゃ、どうしたらここから出られるんだろうか。」


 そんなことを考えながら焦っていた。心拍数が上昇しているのが分かった。どんどん心拍数が上がる、これ以上心拍数が上がれば心臓が限界きそうだ。


「あぁ~こうやって死ぬんだ。」


 そんな覚悟をしたとき、頭の中でスパンっと頭をたたかれるような強い衝撃と同時に自分の死について頭の中を駆け巡った。そして、目を覚ました。


 ゼェハァゼェハァと息を荒くして汗もかきながらベットから起き上がる。夢を夢だとようやく認識した仁は安堵感と同時に言い表せない感覚になった。自身の死の感覚を反芻していたのだった。それからは寝ることができず、仁は暖炉の火を見ながらボーっと時間を過ごし、朝を迎えるのであった。


 いつものように身支度をして切り株の上に座る。朝日を全身に浴びて、意識をしようとした瞬間パァーンと、昨夜の目覚めたときの頭を打つ衝撃とともに一つの考えが浮かび上がった。


「あると思っていたけど、それは実体がない。実体がないものが実現する。」


 生命力などというものは、実体がないもの。実体がないものを感じることはできないのではないか。だが魔力と生命力の等価性はあるとユニは言う。その瞬間仁は悟った。


「あぁなんて俺は馬鹿なんだ。そりゃそうか・・・。やっと理解できた。」


 そうして体内の魔力を感知し、それを体内に循環させる。毛先の1本1本。皮膚の隅々、体内の細胞の一つ一に魔力がみなぎる。仁は自分自身のが周りの自然と完全に同一になった感覚になった。そして、これが答えだった。もはや感覚でしかないこの理解。話すことも、文字として表現することのできないこの体感。この数か月の間真剣に向かい合ってきた一つの謎にようやく答えを見いだせた瞬間であった。この悟りでようやく仁の体形が全く変わらなことの謎が同時に解決したのである。



 一通りこの体感を感じ終え、ふっと目を開けるとそこにはユニがいる。いつの間にか目の前にちょこんと座っている。


「さっ自分を鑑定してご覧なさいな。」


名前:前崎 仁

HP:3000/3000

MP:*****


スキル:魔法特性(強)

     鑑定(中)

     神の加護(寿命なし)


「あら、MPが測定不可になってるよ・・・。」


 ユニがにやついて仁を見ている。


「生命力と魔力の互換性を理解できたら次はようやく魔力制御ですね。もうどうすればいいか理解できたでしょ?」


「あぁ。時間はかかるだろうけどやってみるよ。まずはその前に鉄の作成っと。」


 仁はかつて山で掘削した鉄鉱石をこの数か月でほとんど家に持って帰ってきた。そして魔力量は万全いよいよ鉄の錬成を試みるのである。


 集中して、鉄鉱石に熱を加える。このまま熱を加えても輻射熱で熱が逃げてしまう。そこで反射炉の原理を用いて、鉄鉱石から出る輻射熱を魔法による干渉壁を作って再び鉄鉱石に反射させる。

 実はこの干渉壁の制御が想像するより難しいのだ。相手は赤外線、その波長を感覚でとらえなければうまく反射させることができない。かなりの微調整を必要とした。

 少しずつ効率的に反射を当てるため干渉壁を調節すると、ようやく鉄鉱石は融解し始めた。

 鉄鉱石の中の不純物を流し、残った部分に炭素を含む鉄ができる。これに空気を吹き込み炭素を鉄から抜き出す。そんな作業を数時間行いようやく鉄のインゴットを生成することができた。


 魔力が無尽蔵にあるとはいえ、集中して作業をしたのもありもうヘトヘトになる仁。精神的に疲れ果てて仁はそのまま庭先に倒れこんだ。そしていびきをかきながら寝てしまった。


 ユニはそれを見てにゃぁ~と一声かけ額についた汗を舐めるのであった。

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