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転生隠者は賢者になる  作者: 太白
始動
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大賢者ト大魔導士再臨ス


 顔にかかったお茶をハンカチで拭う仁に、ただひたすら土下座するアイリス。


 それに構わずエイダンは片膝をついたまま話始める。


「かつて、始祖ヴィクトル様がいずれ再臨されるであろう大賢者様を見誤らぬよう、代々の大魔導士だけがこの御姿を映した物を引き継いでまいりました。」


 そういいながら先ほど取り出した巻物を皆に見せる。


 爺は、おぉ~!と感動し、アクセルとアテナは、あっそっくり!、と感心している。一方アイリスは土下座のままの状態である。仁だけがその絵を見て一人だけホッとするのであった。


「そして私が下町に出かけました折、偶然この絵の姿そっくりのあなた様を見て、もしや、と思いお連れいたしました。」


 先ほどまでの軽い感じの青年とは違い、ある種の威厳を放ちながら深々と頭を下げエイダンは言う。


「エイダンさん立ってください。確かに私はかつてそう言われた時期もありましたが、今はただの魔法使いです。それよりも、アイリスさん。」


 仁はアイリスに、キールの事件の顛末をエイダンに話すように促した。淡々と事件の事実と犯人の正体について話すアイリス、その時、若干エイダンのこめかみがピクッと動いたのを仁はしっかり見ていた。


「分かった。その裏切り者とこれに関わった者を今すぐ調べ上げよ。始祖ヴィクトル様の理念を汚すものは誰であろうと許さん!」


 エイダンがそう語気を強める。傍に控えていた爺が、ハッ、と返事をしてその部屋から急いで退出していった。エイダンは、


「かかる不届きものを当代で出しました不覚を、深くお詫びいたします。」


 エイダンは再び深く頭を下げた。仁は、


「キールは二百年前からすでに在った。だが、当時でもなかなか撲滅には至っていなかった。ここらで教団の力で撲滅に追い込んでもらえるとありがたい。」


 そうエイダンに頭を下げるのであった。


 退出していた爺が、再び現れた。ところが今度はお供を十名ばかり引き連れている。爺が、


「エイダン様、近くにおりました幹部らをとりあえず集めてまいりました。皆の者、賢者様へ拝礼を!」


 そう言ってエイダン筆頭のもと全員が再び跪き、仁に対して深々と頭を下げる。いつの間にかアイリスはその最後尾で土下座をしている。


 仁は引き気味にその前に立ち、


「イヤイヤイヤ、もうそんなこと止めてください!!!!!」


 そう絶叫する。とりあえず教団関係者を説得し、普通に接するようにと心からお願いする。すると空気を呼んだエイダンが、


「じゃぁ、ふつーに接しますね、ジンさん! いやぁ~あの手のしゃべり方は苦手なんですよね、ヘヘ。」


 と軽い青年に戻る。爺はそれを見て、アチャー、と手で顔を隠すのであった。とりあえず、普通に話ができる環境になり仁は、


「それと、今回ここに来たのはそこにいる兄妹をここに連れて来たかったからなんです。彼らは私の息子アーノルド、隻腕の小賢者、の子孫でアクセルとアテナといいます。」


 そう言うと、幹部の中の一人が声を出し、


「あの小賢者のご子孫がおられたのですか!!!」


 と驚く。エイダンが補足し、


「彼はここでの科学の分野の責任者です。ヴィクトル様も科学についての知識は残してくださっているのですけど、小賢者には敵わないと言って詳しくは残してくれていないんですよねー。」


「ですので!かの小賢者が所持していた賢者の十冊の知識をどうしても私は知りたいのであります!!」


 そうエイダンのしゃべりを遮るようにその幹部が話に入ってくる。なんだか興奮していて顔が少し赤くなって息も荒いご様子。


 仁は、アクセルとアテナの目的が暦の作成であることを説明し、教団の知識と力を貸してほしいと頼んだ。するとその幹部が、息も荒々しくアクセルのところに行き手を握って激しく振っている。まぁこれは喜んでくれているんだよね、たぶん、と仁はアクセルらをそのままにしておいた。


「ところでジンさん。ついてきてほしいんだけどぉ~、いいかなぁ?」


 ゆる~くエイダンにお願いされる仁。いいよ、と同意すると一同が皆エイダンとともに移動し始める。


 総本部の正面左側にはさらに山の上部へと上る階段がある。エイダンはそこを歩き始める。大きな螺旋階段になっているそれを上っていくと、いずれちょっとした公園にたどり着き、その中心にはまるで何かの結晶のように尖ってそびえ立つ石柱があった。


「ここへ注ぎ込め!ってだけ伝わっているんだけど、ジンさん知ってる?」


 エイダンは仁に聞いてくる。もちろん知らない。そこで、その石柱に手を当て魔力を注ぎ込んでみる。徐々に魔力を高めていく。すると仁の体から慈光が溢れていく。仁は、


「あれ?どんどん魔力が吸われていく不思議な感覚があるな、なら!」


 と全力の魔力をその石柱に注入していく。教団の幹部らはその輝きを見て、伝説にある慈光の再来とばかり仁の方へ祈り始める。エイダンはそんな仁を冷静に見ていた。

 次第に光がまぶしくなりその周辺は真っ白になる。そこにいた者すべてがその光の中で何が起きているのかを見ることができなかった。ただ一人仁を除いては。


 次の瞬間、その石柱が割れその破片が一気に飛び散る。さすが大魔導士たるエイダンはその瞬時に防壁を創りそれらの破片からそこにいた人を守る。徐々に光がおさまると、そこには半透明の球体の中で守られた白髪の老人が浮かんでいる。


 エイダンは、ハッとする。実は大魔導士だけに聞かされる伝承では〝注ぎ込め、されば現れん〟とあった。あえて後半の部分を仁には伝えていなかったのだ。エイダンはこれが始祖ヴィクトルであるという確信をその時に持ったのであった。


 白髪の老人を囲う球体が消え、老人が地上に降り立つ。老人がゆっくりと目を開け、しばし周りの風景を見たとき・・・、この老人吐き出した!それを見た仁は、


「あっ、ヴィクトルだ!」


そう叫んだ。

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