慈光教の総本部
そんな決めポーズを見せられた女は顔を引きつらせる。
次に、仁は目を覚ました男の魔法使いに話かける。
「お前たちはもはや俺の手の内にある。素直に知っていることを吐けば良し、さもなくば・・・。」
そうして掌にちょっとした炎を見せつける。すると、
「俺たちの事が教団にバレたんだ・・・どうする兄貴。」
「クッ・・・さすが魔法師団、この女は囮だったか。」
大体つかめて来た仁は男二人を気絶させる。そして女の縄を解き、すまないね、と謝る。次に馬車まで行き中にいる覆面男を引きずりだして目を覚まさせる。
びっくりする男の覆面を剥ぎ取ると、女の魔法使いが、
「この裏切り者!」
そう言って殴りかかっていく。数発を顔面に受けた男はまた白目をむき意識を失った。
「こいつは教団にいる魔法士の一人だ。これを捕縛するために今まで何人もの仲間が死んだ・・・。」
そう悔しがる女。改めて仁の方を向きなおし礼を述べる。女は自らの名前を名乗れないという。
「まぁそれはいいとして、教団の上層部もこれに絡んでいるのか?」
「いや、それはない。我々は独自に内偵をしていたが、この男とその他数人が関わっているだけだと判明している。」
そう女は答えた。教団にはさっそく報告する必要があるというので仁は、
「急いだ方がいいな。」
と言い、縛り上げた男3人と女を伴いアルガンの街へと飛び立った。女はあまりの出来事に引きつった表情のまま硬直している。
アルガンの宿に着き、大きな声で兄妹を呼ぶ。そして今から一気に教団本部まで行くことにしたと説明し、荷物をまとめさせる。急いで荷物をまとめた兄妹も伴い一気に飛び立つ仁であった。
長らく飛び続けるとさすがにアクセルも飛行からの風景に慣れてきたようで今では上空から見た風景を楽しんでいる。教団の女は相も変わらす硬直したままであった。縛られた男三人は一旦目を覚ますが、猛スピードで過ぎ去る上空からの眺めに怯えまた気を失う。その際一人だけが失禁をしてしまうのをアテナが顔を赤らめて見ていたのであった。
教団の女に案内をさせながら通常の陸路なら1か月はかかろうと思われる距離を飛行で十時間ほどで到着する仁ら一同。
「ここが総本山の入り口よ。」
そう女が説明し、一同は長く続く階段を上りだす。三人の男らは綱につながれ歩いている。階段を上り切るとそこには町があって全員魔導士の服装をしている。その中に女の顔を見て屈強な男らが数名近づいてくる。
「こっこれは、アイリス様。戻られましたか!」
「あんたアイリスって言うんだ!」
仁はそう彼女に話しかけると、屈強な男どもに睨みをきかす、それを受けてビビる魔導士たち、それを見て笑う仁。
アイリスは彼らに命じ3人の逮捕者を連行させた。そして、
「貴殿は一体何者なのか?そしてあの飛行魔法。それほどの使い手なら教団内でも知らない者はいないはずだが?」
そう訝しがる。アクセルとアテナは互いに見合って苦笑いをしている。そんな時向こうの方から若い男がすごいスピードで走ってくる。そして、すれ違いに仁の顔をちらりと見ると、通り過ぎたところで急に止まる。そして、その男は振り返り仁の方に戻ってきた。
アイリスはあっという顔をするが、男はアイリスにウインクし、仁の方を向いた。
「おじさん見ない顔だね?ここに何か用事で来たの? あぁヴィクトル様の神殿への参拝客だね!いいよー、案内してあげる。」
なぜか全てを強引に決められ、あれよあれよと連れていかれる。この若い男の名はエイダンといい、エイダンに連れられ通りを突き進むとまた階段。そうするとエイダンが魔法を使い半径が1mはある円盤状の板を足元に出した。
「みんなこの上に乗って。」
仁らはこの円盤の上に乗ると、円盤が上昇し、階段を上る必要が無いまま階段を進むことができた。
「階段を上るの大変でしょ?こうすれば楽なんだよねー。でもね、始祖ヴィクトル様の修行を辿るのを怠けているって年寄りたちには不人気なんだよ。」
そうヘラヘラしながら答えるエイダンであった。その時のアイリスがやや硬直しているのを不思議に感じる仁であった。
長い階段を上りきると、下にあった街とはうって変わり荘厳な教団の総本部がそこにあった。そうするとエイダンの姿を見た年配の魔導士が遠くから走り寄ってくる。
「エイダン様、どこに行っておられた!さっお戻り下さいませ?」
「「「エイダン様?」」」
仁と兄妹が声を出して驚く。アイリスが、コホンと咳ばらいをし、
「こちらにいらっしゃるのが現大魔導士のエイダン様である。すなわち慈光の賢者の会の総帥であられる。」
えへへ、と苦笑いするエイダン。そうするとエイダンが近寄ってきた老魔導士に、
「爺、すまないが御影を私のところに持ってきてくれないか?」
というと、その爺は、
「しかしあれは大魔導士様のみがご覧になれるものですぞ!」
「いいから爺、言う通りに。」
そう爺を言い聞かせる。エイダンは
「オジサンたちはこちらでお茶でもしましょう。」
そう笑顔で手招きをするのであった。エイダンの後に歩く仁一行。本部の中にある大魔導士の部屋に案内される。
お茶を飲んでいると、先ほどの爺が恭しく豪勢な布に巻かれた長い箱を持ってくる。エイダンはその布を取り、箱にしまわれている巻物のようなものを取り出してその中身を見る。
「やっぱり・・・・。」
そう言ってすっと立ち、仁の座っているほうへ歩き目の前で膝をついた。
「慈光の大賢者様、よくぞおいで下さいました。現大魔導士でありますエイダンでございます。」
同じ場所で一緒にお茶を飲んでいたアイリスが口に含んだお茶を、ブッーっと吐きだし、仁の顔面がお茶まみれになる。
爺は口を開けて呆けている。アクセルとアテナは、あぁ~ぁ、という顔をする。仁は、
「きたねーな、オイ!」
とアイリスの方を睨むのだった。




