目覚めたら驚いた!
ひっそりとしたシュバルツの森の中、その中に1軒の小屋がある。それは長い年月誰からも発見されることなくそこにあり続けた。
人の世は幾千夜、幾星霜、幾年月、長く長い年月の中変わりゆく、だがこの小屋だけは変わらなかった。
その小屋の中には・・・・、
「ガァァァァァァァァァーーーー、ゴォォォォォォォォォーーーー、ガッガッ、ゴォォォォォーーー。」
でたらめにデカイいびきをかきながら寝ている仁。この二百年もの歳月をこの男は眠り続けた。事の発端はちょうど二百年前王国に愛想をつかし、中年の引きこもりになった仁は、酒に酩酊しいよいよ眠ろうとしたとき冬眠をその頭にイメージしてしまった。このバカはなんと自分で自分に魔法をかけるという失態を起こしてしまったのだ。
尋常でない魔力量のせいでその効果は絶大で、通常の冬眠であれば数か月であろうが、この酔っぱらいはこともあろうに200年の冬眠に入ってしまった。
そしてその間、この男は夢を見続けた・・・・。
バイド、アルフレッド、ダミアン、アーノルド、ヴィクトル・・・いろんな人が次から次へと仁を置いて向こうに行く。仁は彼らを追いかけるが一向に前に進むことができない。声を出そうとするが、声も出ない・・・・。
仁は気が付いた、これが夢であると。仁はその場に座り込み目をつむる。そして深く深く瞑想をし体内にある魔力を感じ取ろうとする。最初はいつものように感じることができなかった。だが、長い時間この夢の中で瞑想し続けるとようやく自分の魔力を感じることができるようになった。
仁はチュートリアルでの修行を思い出していた。そしてあの頃の思い出に懐かしさを感じていた。そうすると目の前が急に眩く明るくなる。
「ご無沙汰してまーす!」
な、なんと目の前にはあのユニがいる。まだ夢の続きか、そう思った仁だが、
「おや、失礼しちゃいますね、ちゃんと本人です。あなたの最愛のユニさんですよん。」
確かにあの頃の性格のねじ曲がった白猫そのものであった。そしてユニが、
「仁さん貴方っておバカですね。自分で自分に魔法をかけたせいで長い間寝続けてますよ!さぁそろそろ起きなさいって。運命の日が近づいているんだから!」
「運命の日?なんだそれ?」
慌ててその口を手で隠す猫。アッチャーという顔をしている。
「しゃべり過ぎました。さっ起きてください!」
そういった瞬間目の前の白猫が光る。そして・・・・ガバッと飛び起きる仁。
「ハァーハァー・・・・。起きたのか・・・・、一体何時間寝てたんだろうか?変な夢見た・・・・。」
自分では数時間寝た感覚でいるこのおっさんは、何気に小屋から出る。そうすると目の前の庭に違和感を感じた。手入れをしていなかったのでもともと木々が茂っていたが、以前そこらにあった木の幹は細かったが今目の前にある木の幹が随分太くなっていたのであった。
「あれ?こんなんだったっけか?」
まだ寝ぼけているのだろうと考えた仁。寝るのも飽きたので、とりあえずセレナの町に向かうことにした。
セレナの町に近づいていくと、やはり以前と風景が違う。仁はユニの言った言葉を思い出した。
「(長い年月・・・・か。)」
ちょっとした不安を感じた仁は、飛行を止めて道を歩いていくことにした。しばらく歩いてセレナの町があったところには・・・なんと城壁に囲まれた大きな都市があった。
「なんだこれ?」
城壁の入り口には兵士がいて、都市に入る人を監視している。とりあえずその兵士に話しかけることにした仁。
「あのぅすみません、ここってセレナって名前で合ってますか?」
えっていう顔をする若い兵士
「おっちゃん、それはまた古い名前を持ち出すね。あぁおっちゃん冒険者か何かい? 調べ物で来たんだね。俺は歴史詳しくないから、都市の図書館で調べたらいいんじゃないかな。」
そう言って説明してくれた。
「(古い名前ねぇ・・・)」
嫌な予感しかしてこない仁。兵士に図書館の場所を詳しく教えてもらい。都市の中に入る。
「こっこれは・・・・・。」
門を入るとそこに広がる町並みは完全に以前のセレナではなく、全くの別物であった。石で作られた家が立ち並び、この街の古さを感じさせる。ソワソワする仁はまず図書館へと向かった。
図書館の受付で利用方法を聞くと、基本的には無料で閲覧できるというので歴史の本を置いてある棚を教えてもらった。かつて帝国の史書館で見たように館内にはいたるところ本棚が並んである。
歴史の本はそんな本棚の一番奥にあるらしい。館内をツカツカと歩く仁。そして目的の棚に着いたとき、
〝慈光の大賢者の物語〟〝ザールサス王国史(上・下)〟〝慈光の賢者の会の歴史〟・・・
という本が目に入った。そしてザールサス王国史を手に取りパラパラとめくる仁。
「(!!!!!!、王国が滅んだ!だぁ?)」
絶句する仁。周りをきょろきょろして再び視線を本へと落とす。どんどん読み進めていき、自分が寝てからなんと200年も経っていることに呆れるのであった。
さらに、アルフレッドやダミアン、そしてアーノルドのその後についても知ることになった。
呆然と立ちすくむ仁。かなりの間その内容を頭の中で整理することに時間を要した。だが頭の中で知識の整理はできても心の整理は早々つかない。
アルフレッドの悲痛な死、その決断をした彼の心中を思うと心が掻きむしられた。ダミアンは彼らしく最後まで幼い頃から兄弟同然に過ごし育った輩との最後だと思った。最後に、アーノルドの行方。
様々な思いが本の情報から沸き立ってくる。次第に仁は目を真っ赤にして泣いているのであった。そんな様子を遠くから見ていた老婆がいた。優しそうなその老婆の顔には長い年月を生きてきた証のようなシワがあり白い髪の毛を頭の上で束ベている。その老婆が仁の傍に来てそっとハンカチを手渡す。
目の前に突然現れたハンカチに我に戻る仁、そして老婆は、
「歴史がお好きですか?随分思い入れがおありの様ですので・・・。」
そう微笑んだ。仁は渡されたハンカチを受け取り、目にたまった涙を拭う。そして、
「はい、ここにある人たちの生涯に思いを寄せるとつい涙が。」
そう答えるのであった。
仁はこのイザベラという名の老婆と今の名前をラメールというこの街について会話を交わすのであった。




