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転生隠者は賢者になる  作者: 太白
異世界賢者はひきこもりになる?!
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ヴィクトル漫遊記(二)


 ヴィクトルはガイに案内され彼らの村へと向かった。村の入り口ではガイらの帰りを待ちわびるリーフの姿がある。ガイらが帰って来たのを見たリーフは大きく手を振ってガイらを出迎えた。だが、その後ろにはどこかで見た青年、そう海岸にいた魔法使いが一緒にいる。


 ガイは村の入り口まで走り、リーフに説明しているようだ。どうやらその説明を聞き終え、ヴィクトルの方を向いてじっと見ている。ヴィクトルらがリーフの近くまで歩いていくと彼女は


「ヴィクトルさん、私の早とちりでご迷惑をおかけしました!」


 そう言って腰を直角に曲げ頭を下げる。


「まぁ事情は聞いたよ。そっちもいろいろと大変そうだな。ま、不届き者は俺が何とかするから安心しな。」


 そう話しかけるヴィクトル。リーフは思わず顔が赤くなったことを気付かれてはいないか気にしたが、日に焼けた肌がヴィクトルにはそれを余り感じさせなかった。リーフの傍らにいる父親のガイだけが娘の変化を敏感に感じていた。


 村の中の納屋を貸し与えられたヴィクトルはしばらくの間の生活の拠点としてここに住むことになった。一週間ほどは何事もなくヴィクトルは海に出て繰り返し魔法を放つ。リーフはその姿を遠くから眺めているのであった。


 こうした一週間が過ぎ、海岸でいつものように修行をしていると村の若い男がヴィクトルに向けて大声を出しながら走ってくる。


「(いよいよ来なすったか!)」


 海岸に突き刺していた刀を抜き、腰に帯びる。そして、村の方へと走りゆくのであった。


 ヴィクトルが村に着いたときには、既に3人の魔法使いがその手にリーフを捕まえて大盛り上がりになっている。


「おぉ、いい女じゃねーか!こんな辺鄙へんぴなところでいたって面白くないだろ?俺たちがもっと楽しいところに連れて行ってやるよ!」


 嫌らしい顔をしながら強引にリーフを引き寄せる男。その瞬間、走り去るリーフを目で追う男。


 リーフを捕まえていた手に力が入らない。違和感を覚え自分の腕を見ると上腕の中ほどから下、あるはずの腕が無くなっている。噴き出る血しぶきに何が起きたか理解が追い付いていない男。


 そして、激しい痛みがこの男を襲う。残された手で傷を必死に傷口を覆うが、おびただしい量の血液が指の隙間から流れ出るのを見てとうとう意識を失う。


 残された二人の男もあまりの出血にぎょっとしている。そして、その視線を海岸の方に向けると見たこともない青年がこちらを見て笑っている。


「おう、待たせたなおめーら。ちょいとイタズラが過ぎちゃいねーか?」


 かつての悪童から想像もできないほどの言葉が出る。仁が聞いていたら、お前が言うな!、そう言ったに違いないとヴィクトルはそう心の中で苦笑する。


 残りの二人の男は身構える。明らかにこの若い男は魔法を放ったからだ。


 そして、一人が掌に炎をまとわす。ヴィクトルからすればこの程度の炎は種火ぐらいにしか感じない代物であった。だが、これがこの世界での標準的な魔法使いなのだ。仁と関わることでヴィクトルの普通は、この世界の異常であることにまだ気が付いていないのであった。


「はぁ~おまえなぁ、それはなんだ?炎のつもりか?笑わせんじゃねー。炎ってのはこういうもんだ!」


 ヴィクトルが右の掌に意識を集中し、本人 いわく少し大き目の炎、を創る。それはまるで炎の柱のように燃え上がり、周りにいた暴漢二人にもその熱が伝わってくるほどのモノであった。


 明かな力の差を見せつけられる二人、男の掌の炎はその意識を保つことができずに消え失せる。そして、


「なんでぇ、もう諦めんのかよ。じゃぁこれで終わりだな。」


 そう言ってまたニヤリと笑う。邪悪な笑みを浮かべながら、掌の炎をさらに大きくする。暴漢二人はもはやその気迫に押されてしまい、腰砕けになりその場にへたり込む。


 それを見たヴィクトルは、ようやく燃え上がらせた炎を収束させ消した。このとき、村人の数人もその気迫に飲み込まれて失神してしまったのに気が付いていないヴィクトルであった。


 ヴィクトルは腕を失った男の傷口を手で覆い、魔力を集中する。仁から修業時代に教わった回復魔法をかける。次第にヴィクトルの体が乳白色に輝きだし、男の出血が止まり傷口がみるみる塞がっていくのを見る暴漢2人。驚きのあまり口が開きっぱなしになっている。


 ある程度傷口が塞がり回復魔法をやめたとき、この男の意識が回復する。そしてうっすらと目が開いたとき傍にいるこの青年を見た瞬間、また気絶するのであった。


 ヴィクトルは、なんでだよ!、と心の中で突っ込むのであった。


 気絶した村人を回復させ、暴漢3人を縛り上げたヴィクトルはいよいよ三人の魔法使いを尋問する。


 最初ヴィクトルは穏やかに尋問していたが顔をプイッと横に向きチンケな悪党よろしく素直に話さない男らに、さして頑丈に結ばれていない堪忍袋の緒がいよいよブチッと切れた。


「そうか、ならもういいや。」


 そう言って、彼らの足元の土を魔法で深く掘り下げる。三人は首から上だけ出した状態でそれ以外は全て土の中に埋められた状態になる。


 そもそも若き青年の正義感はこの魔法使いの所業を許すことができなかった。彼らによってその命を絶った者までいたのである。その償いは彼らの命を持ってすべきだと考えていた。


「お前らもうしゃべらなくていいぜ。だがな、お前らのしたことで死人が出てる。せめてお前らがこの世で役に立つのはてめーらがしたことに対する恨みを一身に受け、死ぬことだろうよ。おめーらは死ぬまでそうしてな!」


 そう言ってまた海岸の方へ歩いて行った。


 数日間彼らはそのまま放置された。その間に彼らによって苦しめられた村人から物を投げられたり顔を蹴られたりした事もあった。そしていよいよ意識が遠のき始め、その命が尽きようとするとき3人は等しく涙を流し自らの行いを深く振り返るのであった。


 リーフは村人の反対を押し切りこの3人を掘り起こす。そしてリーフは涙ながらに反対する村人を説得するのであった。もしこの3人を見殺しにするようなら、彼らの罪と私らの罪は同じものになってしまう、と。


 こうしてこの3人はかろうじてその命を取り留めることになったのであった。

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