人外認定と次なる目標
手に取った大根を鑑定してみる。すると、
【大根:異世界の野菜。この畑だけで生産ができる。食用でうまい。生食可】
ちゃんとした説明文がでてきた。とりあえず大根をもう一本追加し、他にキャベツや人参を少し生産し、思い出したようにコメを想像したとたんドッと疲れが来た。
コメの生産の前に自分を鑑定したらMPの残量は500あったので、十分と思ったのだがこれがダメだった。どうやらコメは一粒ごとに魔力を持っていかれるようで、稲一本で魔力が無茶苦茶必要になるようだ。
「あぁ~こりゃダメだ。魔力の回復を待たないと・・・。」
ユニが慌てて説明し始めた。
「魔力の回復は随時します。だって体力だって休んでいたら回復するでしょ?魔力も同じなんです。基本的には生命そのものの力と考えてください。ですからしばらく休んだら回復はします。ですがその回復量は個人の特性によります。仁さんの場合は、一般的な回復速度よりはるかに早く回復できるようになっているはずです。」
そこで仁は鑑定すると、MPは0だった。だが、収穫した野菜を持って家まで帰り再び鑑定するとMPは1100になっていた。
「なっ、MPが+100になってる。これが成長か?」
するとユニが、
「おぉさっそく成長してますね。MPを使うとその分経験が得られたんでしょう。ですからMPが増加したんです。それにしても三十分程度で全回復ですか、もう普通の人間じゃないですね~ワライ。」
と、補足説明が入る。使徒から人外認定いただきました。
「一般的には回復にはどれ位の時間がかかる?」
「概ね一日ですね、それも人によりますけど。」
「なるほど、こりゃ確かに人外だな。ますます世間に出れなくなってきた。こんな人生に何の意味があるのやら・・・。」
「そーですねー、それを探す貴方の人生でもあります!」
ユニはフォローのつもりだろうが、この人生を受け入れる仁にとっては効果がなさそうである。
こうして、これからしばらくの間、このチュートリアル環境でユニに導かれながらこの世界で自立できるように仁の新生活が始まったのである。
ある日は森に出て、魔物を狩り肉を手に入れ、ある日には畑に出て野菜を確保。さすがにこの生活を一か月もすると近場でとれる岩塩だけでは味が単調になる。食べ物の自体にこだわらない仁にとっても、同じ味がここまで続くとさすがに飽きてくるのであった。
そこで、ユニを伴い森の中へ行きハーブを探すことにした。目に入る草を見ては鑑定をし、調味料として使えそうな草を選別していく。
そんな努力の結果、数種類の前世でもあったような風味に近いハーブを手に入れることができた。一番うれしかったのはショウガに似た風味のハーブがあったことだった。
さらに畑でサトウキビを生産し、黒砂糖を作った。仁がこのショウガと黒砂糖で生姜湯を作って飲んだとき、少し涙が出るほどおいしかった。
ユニの勧めで久々に自分を鑑定する。
名前:前崎 仁
HP:990/1000
MP:3500/4000
スキル:魔法特性(強)
鑑定(小)
神の加護(寿命なし)
「あら、一か月ほどでここまで成長してやがる・・・。」
あまりの成長にめまいがしてきた。それを見てユニの奴が転げ笑っている。
「あははははは、こりゃ人外だーーーー。」
「・・・・・」
仁の持つ鑑定スキルが小に変化していた。ここ最近ハーブの鑑定に結構使ったため成長したようだ。そこでユニをもう一度見てみた。
名前:ユニ(神の眷属)
HP:*******/+++++++
MP:*******/+++++++
スキル:ひ・み・つ
相変わらず馬鹿にしてることは明白な内容。ユニはニヤッと笑って
「またぁ~、す・け・べ!」
仁は魔法で掌にこっそり小石を作り思いっきりユニに投げたが、さらっとユニに避けられてまた馬鹿にされた。ただ、以前とは少し違う見え方になっていることが成長の証であった。
魔力がかなり上昇したことで一つやろうと思ったことがある。それはコメの生産であった。
さっそく畑に行きコメをイメージする。すると七束ほどの稲が実った。それは間違いなく黄金色の稲穂であった。
一回の生産量は少ないが人外の仁の回復量もまた大きい。ここは回数の勝負とばかり、1時間休んでは七束生産し、また1時間休んでまた生産するを繰り返すこと四回。量にして二合ほどのコメがようやく生産できたのだった。
さっそく家に帰り魔法で稲穂から米の分離をイメージする。すると稲穂からきれいな米粒が宙に浮く。 次に、もみを剥ぎ、玄米にする。そして玄米を精米するイメージを行うとそこには真っ白に精米されたコメが出来上がるのであった。
「よし!コメが食える。」
と、思ったとたんある事実に気が付く。
炊飯器がない! 転生して今までの調理はもっぱら道具がないので肉の串焼きと、野菜の丸かじりで生活していた。そうせざるを得ない理由は鍋がなかったからである。多少は味付けが可能になった今、喫緊の課題は調理道具の生産である。
仁は調理器具の生産を新たに志向するのであった。