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転生隠者は賢者になる  作者: 太白
生者必滅・会者定離
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弟子の旅立ち


 ヴィクトルはダウヂンの討伐証明になりそうもない死骸を焼却して、そこらにいる適当な魔獣を二日匹ほど狩り冷凍保存して小屋まで持って帰った。


 その日はそのまま森の小屋で泊まり、翌朝仁とヴィクトルはセレナの町に魔獣の死骸とともに帰ることにした。セレナの町ではセレーナとアレンが久しぶりに帰ってきた仁と息子を喜んで迎えてくれ、そしていつぞや同様持って帰ってきた魔獣の氷漬けを見て呆れるのであった。


し ばらくの間仁とヴィクトルはセレナの町でゆっくりした。仁はバイドの墓に行ったり、ヴィクトルは弟と妹の面倒を見たり町の幼馴染と会ったりと年齢相応に振舞うことができた様子であった。


 王都へ帰る前夜。アレンとセリーナの家で卒業を祝う宴が行われた。精神的にも成長を見せたヴィクトルだが、こと両親の前ではやはり気恥ずかしかったようで、素直になっていなかったところもあったが、そんなヴィクトルを見て笑い合うアレンとセリーナであった。


 さて、その夜みんなが寝静まったころ。ヴィクトルはそっと目を覚ます。そして、二年ほど前と同じように二階の通気窓からそぉ~っと出ようと手前に窓を開ける、そうすると・・・・窓の外から金だらいが前回と同様に飛んできた。

 ヴィクトルは同じ手は食わないとばかりに華麗にそれを受け止める。そして一息つくと次に、ピュッと風を切る音がする。ハッと金たらいを自分の前に構える。すると、パパンッと三本ほどの矢が突き刺さっているではないか。


「(師匠め、こんな手の込んだことしやがって!)」


 そう思っていると、一階の方から、チッ!、っという声がする。矢の刺さった金だらいを置き、王都への帰りにこの仕返しをどうしてやろうかと考えるヴィクトルであった。


 そして夜が明け王都に帰るその日、荷馬車に魔獣を乗せセリーナとアレンに見送られ家から出ようとしたとき、アレンが息子に新しく鍛錬した刀を一振り渡した。仁はアレンが少し涙目だったのが印象的であった。

 恭しく刀を受け取るヴィクトルは、朝日に照らされて神々しくもあった。そんな息子を見てセリーナは仁に礼を言うのであった。


 仁は、


「バイドに頼まれたからだよ。」


 と照れながら言い、朝日に照らされた我が弟子を優しく見つめたのであった。


 王都への道中、隙あれば仁に一矢報いようと頑張ったヴィクトルだが敵もさる者その手のイタズラはことごとく失敗し、その都度あのいやらしい顔で、まだまだだなぁ~、などと言われ続けるのであった。


 王都に到着し、まずは両名とも学校へと行きそこで教師たちにヴィクトルの実績を披露する。ヴィクトルは自分が狩ってきた魔獣がどういうものか全く知らなかったが、その二匹の魔獣ともかなり貴重な魔獣らしく一人で討伐するなど前代未聞らしい。


 ヴィクトルは教師からあまり信頼されていなかったので最初は仁が狩ったものをヴィクトルに渡したのだろうと邪推する教師も少なからずいたが、校庭で仁の攻撃魔法を防壁で受ける実演をしてヴィクトルの魔法が本物であることを証明した。また、仁もアルフレッドやノルド宰相など主だった者や学校の教師たちに詳しく二年間の修行の内容を伝えることでようやく納得されたのだ。


 しばらく時が経ち、学校の第1回卒業式。メルケ宰相など国家の重鎮が来賓としている中、記念すべき第一回卒業生の代表として挨拶をすることになったのは、かつての悪童ヴィクトルであった。


 絢爛と飾り立てられた壇上に上がるヴィクトル。それを明らかに嫌そうな顔をする教師たち。そして挨拶が始まる。


「ここにご臨席いただきました皆様にまずは感謝いたします。ここに入学した当初、私は精神的に幼かったことで周りの大人、そして学校の先生にご迷惑をおかけしたことを深くお詫びいたします。・・・・」


 その言葉を聞いた瞬間目を見開くように驚く教師たち。かつてのヴィクトルからは想像もしないような言葉が出てきたからだ。


 ヴィクトルは、自分の幼さや無力さに気づかせてくれた学校に感謝し、自分を今の様に成長させてくれる存在であったと述べる。そして、


「最後に、両親や今は亡き祖父。そして、ここまで育ててくれた大賢者たる仁先生に心からお礼を申し上げます。」


 そう言い終わる。しばらくの静寂の後、メルケ宰相がパチパチと拍手をし始める。それにつられ室内にいた者らが徐々にヴィクトルに向け拍手を送るのであった。その中には最初は嫌そうな顔をしてた教師たちもいた。だんだんそれは万雷の拍手へと変わり、まるでヴィクトルの成長を祝福するようであった。


 拍手が鳴りやみヴィクトルは、


「あっそうだ!すみません言うの忘れていました。俺、今日から十年間国を出て修行してきます。今のままでは師匠に一矢報いることできなさそうなんで!師匠覚えていやがれ!!」


 そう言ったらすぐに壇上から飛び降り、一気に窓から飛んでいってしまった。会場にいる誰もが唖然としている。その中で一人だけ大声で笑う声の主は・・・仁であった。

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