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転生隠者は賢者になる  作者: 太白
生者必滅・会者定離
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初等教育終了


 学校関係者から見ればヴィクトルただ一人に振り回された怒涛の初等教育期間が終わり、晴れて学校関係者の手を離れたこの悪童に、大人の世界の厳しさを教えてやろうと悪だくみをするどうしようもない大人の仁。


 そんな二年間にアーノルドは仁からの知識を活かし様々な分野で結果を残すことになる。こうして隻腕の小賢者と世間から呼ばれるようになった。

 アルフレッドはそんなアーノルドを準男爵にしたいと考え本人にそうするように求めたのだが、アーノルドは首を縦には振らなかった。それは自分の父が無位無官を貫いていたのが最大の理由であった。


 そんなアーノルドをヴィクトルは尊敬の眼差しで見るようになり、いつ間にかアーノルドのことをアルにいと呼ぶようになった。

 アーノルドも周りの人が概ね自分より年上だったこともあり、自分より年下の子になつかれたのがうれしかったらしく弟の様にこの悪童を可愛がった。


 さて、学校では新しく新入生が入りにぎやかな雰囲気で学校生活が始まろうとしている。第二期生、第三期生と合わせて40人ほど入学してきた生徒たちが校舎内で賑わいでいる姿を見て仁もうれしそうであった。


 第一期生、つまりヴィクトルの同級生たちは後半の教育課程に入り、ここからはある生徒は行政官に、ある生徒は法律官にと各自の専門分野に分かれて教育を受ける。そしてこのヴィクトルには魔法使いとして直接仁が指導する。


 仁は学校側に校舎以外で魔法教育を行うことを提案した。その理由は、初心者が魔法を使って建物や人に危害を加える可能性があり王都で魔法の練習ができない、というもっともそうなものであるが、実際はこの悪童には普通のやり方ではダメだと思っていたからだ。


 そういう理由から、全責任を仁がとるということで教育場所は仁に一任された。仁が考えた場所は全ての始まりの場所、そう魔物あふれるシュバルツの森でのサバイバル生活であった。


 そして、シュバルツの森に行く当日となる。早朝ヴィクトルの住む宿舎へ向かいまだ寝ているヴィクトルを叩き起こす仁。


「こら!さっさと用意する!」


 まだ眠いヴィクトルは指で瞼をこすりながら、


「まだ早いじゃん、おっさん!」


 と言う。それを仁は、


「ならば、このまま連れていくことにする!」


 そう言って首根っこをつかまえ、そのまま飛行で窓から一路セレナの町へ向かう。何が起きたのか分からない悪童は、一気に目が覚める。下を見れば王都、街を上から見た状態で足や手をバタバタさせながら仁に抗議する悪童。


 だが我関せずと、いよいよスピードを上げていく。ヴィクトルは朝食を摂っていないため胃の中が空の状態であったが、今まで経験したことの無い感覚から気持ち悪くなり、吐く物もなくただ胃液のみを口から吹き出す。それでも仁は猛スピードで一気に飛んでいく。


 丸一日飛び続け、遠くには随分と大きくなったセレナの町が見えてきた。町の入り口で地上に降り、手に持っているヴィクトルを放り投げると、ヴィクトルが地面に顔を付けたままの状態で気を失っている。


 仁は魔法で直径1mほどの水球を創り、ヴィクトルの頭上で破裂させその水流でヴィクトルはようやく正気に戻ることになる。


 なんとか歩けるようになったヴィクトルは久しぶりの我が家を目指して歩き始める。仁はその後ろをついて行った。


 町並みは以前の村の頃とは比べようもなく変わってしまった。道路は綺麗に整備され、その道路の両側には木製ながらも大きな家が立ち並ぶ。街はずれには煙突がある工場のようなものが多く建っていた。町の人に聞くと、どれも酒を造る蔵だと言う。


「本当に大きくなったんだなぁ~。村の頃が懐かしい。」


 そう感想を漏らす仁であった。


30分ほど歩くと、懐かしい家があった。アレンとセリーナの家だ。仁が、


「おぉ~い、帰ったぞぉ~。誰かいるかぁ?」


 そう大きな声を出すと、アレンが家から出て来た。そして、そこに仁とヴィクトルがいることを確認すると一目散に家の中へ入り、そして小さな子2人を引き連れたセリーナを伴って家から出て来た。


 駆けよる三人と子供三人。懐かしさのあまりアレンとセリーナは少し涙ぐむ。そしてアレンは少し大きくなった息子の姿にうれしさを覚えるのであった。


 その後すぐにバイドの眠る墓地へとみんなで向かった。広い墓地の中に出来て間もない墓が一つ、バイドのものだった。


「遅れてすまんなバイド。詫びだ。」


 そう言って大吟醸を墓にかけてやる。黙とうをしてしばし在りし日のバイドを偲んだ。


 家族が多くなったせいでやや手狭な感は否めないが、どうしてもと二人が言うので、仁は遠慮なく二人の家に泊まらせてもらうことなった。


 明日にはシュバルツの森へ向かうことにしていたので早々に休むことにし、子供たちを2階に上げて寝かしつける。そんなとき、仁はアレンに耳打ちをする。そして、アレンはいそいそと頼まれた物を準備するのであった。


 夜中、皆が寝静まったころ。ヴィクトルは密かに目を覚まし、そぉーっと寝床から起きる。このままでは死ぬことになる、そう思った悪童は、こっそり家から抜け出そうと試みるのであった。


「(あのおっさんのことだ、玄関から出るのはマズいな)」


 そう考えた悪童は、2階にある通気用の窓から外に飛び出ようと考えた。


手慣れた手つきでそぉ~っと窓を手前に開ける悪童。そして窓が開けきったところで・・・・


「ガチャーーーーーーーン!」


 外から金だらいが飛んでくるではないか!その音にとび起きるアレン夫婦。頭を押さえながら、これはマズいと急いで階段を降り、玄関から外に出ようとドアを開けたその瞬間!


「バコォーーーーーーーン!」


 今度は、玄関から金だらい振り子の要領でヴィクトルの顔面めがけてくる。周りは真っ暗で気が付くはずもなく敢え無く悪童の顔面に被弾する。


「くっそーーーーー!」


 そう悔しがったが最後、顔面を両手で抑え振り向いたらそこにはニヤッと笑う仁が立っている。


「馬鹿弟子がぁ、お前の魂胆なんか読んでんだよ!」


 そう言って仁の手と悪童の手を縄でしっかり結んで、朝まで一緒のベッドで寝るという残酷なお仕置きが行われたのであった。


 悪童はおっさんのイビキと歯ぎしり、親父臭が見事に合わさり得も言われぬ苦痛を数時間味わったのである。ヴィクトルはこの体験を終生忘れることが無いだろう、と後日アーノルドに語るのであった。

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