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転生隠者は賢者になる  作者: 太白
王国と帝国
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終戦の石碑


 ヒルベルトとの戦後処理の方針を相談して後、戦死者の扱いについて議論になった。遺体は本国に持って帰れないため、この地に埋葬することになる。

そこで仁の作った人口湖の窪地を利用して、両軍の戦死者を埋葬することとなった。


 仁は人口湖の水を抜き、王国兵が遺体を整然と並べていく。そして、仁は魔法により土を被せていった。ヒルベルトはその光景を見てまたもやその魔法量に唖然としたらしいが、本人は顔色を変えず平静を装っていたようだ。


 埋葬が終わり、仁は巨大な石を魔法で生成し碑とした。表には“ザールサスおよびカルダノの英霊ら、ここに眠る”と石に彫り込んだ。裏には、


“王国軍、帝国軍ここに干戈を交える。両軍合わせて1万余り死す。・・・・・これを以て永劫の平和を願うものなり。”


 と、この戦に関する記載を王国側にも帝国側にも偏ることなく戦争の悲哀を文章にし、これ以上両国で戦が起きないように、と願いを込めた。


 石碑に彫り込まれていく文章を見ていたロピタル、ダランベールは感極まり涙が溢れだす。そしてヒルベルトもまた目を瞑り、死者への哀悼を示すのであった。


 こうして、この地における戦後処理は終わりそれぞれの本国同士の戦後交渉に移行することになる。


 数日後、仁らは王都に凱旋した。街道を進んでいくと、その都度民が兵士たちを祝福する。王都の中に入れば、大通りの両側には凱旋する兵たちを見ようと多くの人々であふれていた。

 威風堂々と馬上からまっすぐ前を見るロピタルとダランベール。そして、こっそり他の兵士たちに交じって目立とうとしない仁。それを後ろから見るアーノルド。こうして、ザールサス王国に平和が戻ってきた。


 王城の玄関では、リミット、アルフレッドが待ち構えていた。そして、仁らに感謝とその勝利を祝福する。王国軍の主要な者たちはそのまま謁見の間に連れていかれ、アーベルより言葉をかけられた。


 これ以降しばらくの間は戦勝フィーバーが続き、それらが落ち着くのに一週間ほどかかった。


 一方帝国では、ヒルベルトらが率いた兵たちが帝都に帰還した。ヒルベルトは皇帝に謁見するべく城に向かうが、衛兵に止められ入場できなかった。後日その理由が判明した。ロイド宰相が手を回してヒルベルトと皇帝を会わせないようにしていたのだ。ロイドからすると自分の失政だと非難されるのは必至、保身のために様々な手を打っていた。


 だが、それもある事件が発生しロイドは全てを失うことになる。


 この敗戦でロイドが今まで帝国内で築き上げてきた虚像は多くの者に見破られ始めていた。それと同時にヒルベルト待望論が持ち上がっていった。帝国の敗戦は奸臣ロイドのせいだ、そう考える若い兵士たちは義憤に満ちていた。そしてある計画が実行されるのであった。


 ある日、城内でロイドが皇帝に会うため謁見の間に向かっていた。廊下には衛兵がところどころ立っており哨戒している。もちろんその手には武器を持っていた。ロイドはいつもの様子にさして疑問も持たず廊下を歩いていると、後ろから衛兵の動く鎧の音がする。ふと振り返ったそのとき、衛兵の剣がロイドの胸の奥深くまで突き刺さった。ロイドは何が起きたのか分からないまま仰向けに、倒れ大量の血が廊下を染める。そして、ロイド急死の報が皇帝に伝わる。


 廊下にいる衛兵はロイドを殺した衛兵1人ではない、目視できるところには多くの衛兵がいた。だが誰一人それを制止するものはいなかった。


 後日、近衛兵による取り調べが開始されたがここにも反ロイド派がおり最終的に犯人は不明という決着がつくことになる。

 一方ロイドは今まで行ってきた悪事がこの取り調べですべて明らかになり、ロイドが所有していたすべてのモノが没収され、ロイドに関与した者はその多くが逮捕された。


 皇帝はすぐにヒルベルトに登城を命じ、一時間後ヒルベルトは皇帝ウォーリスに謁見する。


「皇帝陛下、登城せよとの命を受けただいま参りました。」


 ヒルベルトは皇帝に形式的な会話をする。


「ロイドの件は聞いたか?」


「はい。」


「そなたはどう思う?」


「どう思うとは?まさか私が差し向けたなどと考えておられますまいな?」


「・・・いや、そうではないが・・・。」


 ヒルベルトは皇帝が自らの暗殺を恐れているのだと感じた。ロイドごときを重用する程度の男であるその器量など程度は知れている。


「いまだ、先の敗戦の処理が終わっておりません。ロイド宰相がなき今誰にご命じになられますか?」


「ん、んん。そなたに任せる。」


「承知しました。」


 そう言って、このアホな皇帝の目の前から消えようとした瞬間。


「まて、ヒルベルト。どうすればよいとお前は思うのだ?」


「はて、どうすると言われますと?」


「余じゃ、余のことじゃ。このままでは余の命まで奪われるではないか!」


「ご安心ください。儂がお守りします。暗殺者など近づけません。」


 そう言って王国との約束を履行するべく、帝国側での敗戦処理をようやく進めるヒルベルトであった。

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