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転生隠者は賢者になる  作者: 太白
王国と帝国
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会敵と初戦


 仁が王城を出て数日後、いったん王都に戻り国境近くの状況を会議において説明した。と、同時にそれぞれの担当の進捗状況を確認する一同。

 その会議のが終わり、仁はアルフレッドの屋敷に帰った。


 伯爵邸では、アーノルドが首を長くして待っていた。仁が自分の部屋で思索をしているとドアをノックする音がし、入室を進めるとそこには真剣な顔つきのアーノルドが入ってくる。彼は仁の机の前に歩いてきて、仁と机を挟んで言葉数少なく言うのであった。


「・・・ジン様・・・俺もこの戦に参加します・・・。」


 その言葉を聞いた仁は、はぁ?、とでかい声をだす。もちろん、この戦の準備をしている最中何度もアーノルドとは会ったがこんなことをいう素振りすらなかった。


「急にどうしたんだアーノルド。何を考えているんだ?」


 仁はもちろんアーノルドに戦には行ってほしくない。当然のことながら猛反対する。


「・・・俺、少しでもジン様の役に立ちたい。だから・・・。」


「気持ちはありがたいよ。でもね、君が戦に参加しなくても既に十分役に立っているよ。事実、伯爵邸での仕事の一部は君がいないと回らないほどになっているじゃないか。どうして急にそんなことを言いだしたんだい?」


「・・・この戦、厳しい。だからジン様の命は俺が守る・・・。」


 この言葉に仁はグッと堪える。怒りではない、油断すると泣いてしまいそうになるからだ。だが、ここは仮とはいえ父である。理屈で従えさせるのではなく、頭ごなしに抑えることもまた大事なのだ、と仁は考えた。


「だめだ、絶対に許さない。いいかい、アーノルド。戦などは善良なものが関わるべきではないのだよ。兵は詭道、つまりだまし合いだよ。そんな真似を、アーノルド、君にさせたくないんだよ。分かってほしい。」


 そう言って仁はアーノルドに退出するように言った。アーノルドは顔を俯いたまま部屋を出た。だがしかしこのときこの青年の心の中にはある決意を秘めていた。



 ザールサスのあちこちでは戦の準備が進んでいる。リミットが国民の意識を高めた効果もあり混乱は起きていない、むしろ募兵にも積極的に参加者がいるほどである。武器の生産に関しても、王国中の鍛冶が積極的に参加してくれており改革で生産力が高まっていた効果以上に準備が早く整った。


 さらにもとより穀倉地帯である王国にとっては、兵糧に関しては十分充足してある。王国の準備は整った。


 そうした期間が2週間ほどたったとき、カルダノ動く、の急報が王城内に響いたのである。

 

 王城ではアーベルを筆頭に諸将が謁見の間に集まっている。ノルド宰相が、


「密偵の知らせによれば、いよいよカルダノが動いたようだ。派兵はおよそ1週間後と思われる。」


 アーベルが重々しく


「皆、この戦は諸将の働きにかかっている。余はここでそなた等の生還と、兵士たちの無事の帰還。そして、民の平安を祈っている。よろしく頼む。」


 そう言って、王座より降り諸将に対して頭を下げる。皆、これに膝を屈し頭を下げる。代表してロピタルが


「ザールサス王国に栄光あれ!」


 全員一斉に立ち、ときの声を上げるのである。


 王国では当初の予定通り、ダランベール率いる軽騎兵3000騎が先行して出発する。その手には仁が開発したクロスボウを持っている。そして、ロピタル率いる主力20000の歩兵、4000の弓兵、3000の槍兵が2日後に帝国と王国の国境へ向け出発した。


 一方、帝国側では重騎兵8000騎、主力55000の歩兵、4000の弓兵を動員した。ここで帝国は数の上では王国を凌駕していたもののその中身には精彩を欠いた。

 というのも、ロイドの派閥が帝国内で幅を利かせたのも相まって、軍の規律も著しく低下しその志気は王国のそれに比べ大きく劣っていた。このような帝国軍内では、当然のように自軍を過大評価し、王国を過小評価していたのだ。


 そして帝国もいよいよ出兵のとき。皇帝ウォーリスが盛大なセレモニーを行い兵と帝都にいる市民の志気を高めようとする。ウォーリスの演説の後、帝国軍は重騎兵を先頭にして弓兵、歩兵が順番に帝国の門を出て王国へと進軍し始めたのであった。


 この出兵に際し、帝国は国内にいる三人の魔法使いのうち2人を出陣させた。一人は魔導士長ヒルベルト、そしてクンマーという青年である。

 クンマーは魔法使いとしての才能があり若くして帝国軍の魔導士軍に所属していた。だが、この青年は自分の才能におぼれていた。ヒルベルトはこの若者になんとか謙虚さを教えようとしたものの若さゆえ己の力を過信するクンマーは聞く耳を持たない。それどころか往年の大魔導士のヒルベルトを耄碌もうろくしていると思っていたのである。


 クンマーは馬上に揺られながら、この戦で制限のなく自分の魔法を使用できるとを心から喜んでいた。


 そして、初戦の日が来た。王国と帝国の国境付近。ダランベールが遠くにいる帝国軍を見て言う。


「ようやくおいでになった。こう7万の兵を見ると壮観だな。さて、諸君まずは我々の働きを示そうではないか。準備はいいか!」


 そう言って旗下の騎兵に発破をかける。


 ダランベールは一定の速度で帝国軍の弓兵の射程に届かないように近づく。帝国軍総司令官バスカラは目の前にいる少数のしかも軽騎兵を甘く見て、重騎兵の司令官パップスに全力で撃破せよ、と命令する。


 パップスはその命令を受け、重騎兵に突撃のラッパを鳴らす。ダランベールは敵が突撃してきたのを見計らい、自軍にクロスボウの射撃準備をさせる。敵の重騎兵が十分その射程に入ってきたころを見計らい、一斉に発射。


 パップスは、


「騎兵が矢を放っただと?だが王国の弓兵ごときでは我が重騎兵に当たったところで大したことないわ!弱小騎兵をけちらせてくれる。このまま全軍で突撃せよ!」


 そう言って後ろを振り向くことも降り注ぐ矢をもろともせず、重騎兵を駆りたて敵に向けて一直線に突撃させ続けた。だが、パップスのこの判断が間違っていた。


 王国の旧来の弓では確かに帝国の重騎兵にさほどの被害が出なかったかもしれない。だがこれは帝国が初めて知ることになる仁特性のクロスボウである。旧来の弓をはるかに凌駕している威力は、帝国の重騎兵の鎧を貫通してしまうのであった。さらに、重騎兵は重い装備のため軽騎兵に比べ機動力が著しく低下する。そのため馬のスタミナも持続しない。


 そこで、王国軍は重騎兵に軽騎兵からクロスボウで射撃を加えてから馬を駆け敵との距離をとり再びクロスボウで射撃を加えるといういわゆるヒットアンドアウェイの戦術をとった。


 パップスは次第に自軍の被害が増大していることに気が付いたが時すでに遅し、馬のスタミナはもう限界に達していた。


「閣下、自軍の被害が増大しております。これ以上の追撃は不可能です。」


「くっやむを得ない。本隊に撤退する。」


 そう言って騎兵のきびすを返し、パップスは本陣へ戻ろうとした。このときを待っていたダランベール。


「今だ!敵の馬はもう限界だ。のろまな馬など何千といても物の数ではない。いざ追撃を加える!」


 そう言って自軍の軽騎兵に敵の突撃を加える。


 帝国騎兵は馬が走ることができる限り王国兵を追撃したせいで主力部隊からかなり切り離されている。それゆえ、帝国の弓兵も歩兵も王国の軽騎兵に攻撃を加えることができない。


 さらに疲れた馬は逃げることができないため群れを形成する。そうすると、密集した騎馬隊で兵は兵としての動くことができない。こうして、実際にいる兵力より実働できる兵力は大幅に減ることになる。これが、仁が考案した騎兵対策であった。


 帝国騎兵に押し寄せる王国騎兵、再びクロスボウの餌食になる。動かない騎兵など的でしかない。バタバタと騎乗する兵が次から次へと倒れていく。矢が尽きかけたころ、今度は槍を携えた王国騎兵の突撃が開始される。帝国兵はもはや虎を前にした羊のように、なすすべをなくし敗走するしかない。


 だが、王国兵も被害がないわけではない。自軍の疲労もたまってきた頃ダランベールは追撃中止の指示を出す。


「自軍の被害はおよそ200騎。敵軍の被害は少なくとも3000騎。大勝利です!」


そう報告を受けたダランベールは、疲労した顔をしながらも満足し主力部隊へと帰還したのであった。

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