魔法の威力
家を出たらユニが体をなめている。神の眷属といえども毛づくろいは大事な様である。
「じゃぁ行きますか。まずは簡単な狩りからしましょう。」
そういって森の方へ歩き始めた。仁もその後をついていく。しばらく寝たとはいえやはり年齢、あちこちの筋肉がまだ悲鳴をあげている。
「この調子じゃあまり遠くには行けないや、ユニ、近場で狩りできるところはあるかい?」
そう言うと振り向きざまにチッという音がしたような気がしたが・・・、
「仕方がないですね、仁おじさん体力つけないと生きていけませんよ!」
などと、小姑の様に意見を言ってくる。
「(あまり生きたいと思っていないんだけど、餓死は御免こうむりたい。ここは我慢か、でもなんか腹立つな・・・。)」
仁は無言で小姑ユニに視線をぶつけた。そんな視線を感じる気配もなくユニは歩いている。
十分ほどして森の中に木洩れ日が差し込む広場のような場所が見えた仁と一匹。突然ユニはその広場の手前で狩りの態勢になる。そして仁の方を振り向いて、
「シッ!、います。あまり大きな音を立てないように!」
そぉっとユニの近くに行き、その広場の方を見るとかなりデカい鳥がいる。大きさにして1mはあろうかという鳥がその広場の真ん中に立っているではないか!それは長い首を器用に曲げながら何食わぬ顔でくちばしで地面をついばんでいる。
「あの鳥を狩ります。仁さんやっちゃってください!おいしいですよあれ!」
ユニは舌なめずりをしながら狩りの態勢のまま獲物の方に視線を合わせる。仁は、さてどうしてくれようかと思案していた。
そこで首が長いので首を落とした方がいいと思った仁は、かまいたちをイメージしてその手に意識を集中する。仁は家に向かう途中ユニとの会話で魔法のイメージは物質的なイメージだけでなく、感覚的なイメージでも発動可能であることを聞いていた。それを今ここで試そうとしたのだ。
大きい鳥に気づかれないように発動したかまいたちは、掌の上で小さな渦巻き状の風が出現しそして、鳥がその首を上げた瞬間、
「行け!」
仁が右手を鳥にめがけて振りかぶると、渦巻いていた風の塊が一瞬で半月上の風の塊に変形し、鳥の伸び切った首をめがけて飛んでいく。
その一瞬後、鳥の奥にあった木がカーァンっという音をだし、ガサガサっと揺れる。揺れがおさまったと同時に鳥の首がストンと地面に落ち、勢いよく首から血しぶきを出した。
鳥は首を失いながら羽をバタバタとさせて後、その体を地面に倒したのだった。
「わおぁ~、いやぁ~いいセンスしてますね仁さん。最初にしてはいい線いっています・・・が。」
「が??」
「うん、やりすぎ!」
「?」
仁はその言葉の意味を理解できずに、狩りに成功したんだからいいじゃないかと考えていた。するとユニが、
「気が付いてないようですね~、いいですか?」
と、言ってパッと鳥の奥にあった木をめがけて走り出し、その木に見事な蹴りを一発お見舞いしたユニ。仁も猫の蹴りを初めて見たが、その後木がゆっくり倒れ始めたのだ。
「あ”」
そう思った瞬間、木が徐々に倒れていく。仁の放ったかまいたちは鳥の奥にあった木まで切断していたのだ。
「・・・」
仁は自分の魔法適正の危険性をこの時はじめて認識したのであった。
「(あまり意識してなかったけど、俺の魔法適正こりゃまずいな。制御する方法を早めに身につけないと自分自身を傷つけることにもなる。最悪他の人に迷惑をかけかねんなぁ。)」
としみじみ自分が理不尽な人間になってしまったことをへこみまくっていた。