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転生隠者は賢者になる  作者: 太白
子爵家当主として
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策謀


 数日後、仁はカーセルの領主邸にいた。領主邸の一室のは、アルフレッド、ダミアン、ゲオルグとそして仁とで勅使下向の対策会議中である。

 なんの事かよく分かっていない仁は三人の会話を黙って聞いていた。あぁでもないこうでもないと話をしているのだが、一つ理解したのがある貴族の通例であった。


 一般的な内容の勅使下向には同格の爵位の者が派遣される。つまり男爵には男爵が、子爵には子爵という風に。だが凶事や吉事の場合は例外もなく高位の爵位の者が派遣される。凶事とは、主な内容としてはお家断絶や何らかの処罰など、吉事で一般的なのが所領が与えられたり、爵位の陞爵などである。


 今回の下向に関しては子爵位のリミット卿で、少なくとも凶事ではないことを意味する。だがこのリミットいう人物は王国宰相の右腕ともいわれる人物として名を馳せていて、性格も実直と評判の男であった。アルフレッドは王家の得体のしれない意図を敏感に感じていたのであった。


 三人があれこれと考えていたのにはまだ理由がある。それはそんな男をこのような辺境の土地に派遣する意図がどこにあるのか、ということであった。

 なにせ勅使下向が子爵家当主でもないアルフレッドのところに来るのであるから、気が気でないのだ。


「まぁ、あまり事前にいろいろ考えていても仕方のないこともあると思いますので、まずはリミット子爵様に下向の趣旨をお聞きになってからでもいいのではないでしょうか?」


 という仁の一声で、三人は少しは冷静を取り戻したようである。


 数日後、リミット子爵の馬車が領主邸に到着する。待ち構えていたダミアンが、門前で待機し領主邸の一番大きい部屋にリミット子爵を案内する。アルフレッドはこの部屋で一人待機し、リミット子爵が部屋に入ると同時に片膝をつき勅使に対する礼をとった。


「アルフレッド殿に王家の勅命をお伝えする。」


「ハイ。」


「貴殿が入手したという酒を王家に収めよ。費用は王家が持つ。以上である。」


「承りました。」


 勅命に拒否などあり得ない。答えは了承のみである。リミット卿がアルフレッドに、


「さっお立ちなさい。勅命は以上になるが、実は別に内々のことで貴殿と話がしたいのだが。別室にて落ち着いて話をしたいのだが・・・。」


 来た!とアルフレッドが思う。


「受け賜りました。」


 とリミットに答え、二回拍手をする。外で待機するダミアンが入室し、アルフレッドの指示を聞き退出していった。しばらくして部屋が用意できたとダミアンが入室してきたので、二人は場所を移すのであった。


 内々の話という事で、少し小さな部屋に案内されたリミットは室内が質素であることを見ていた。


「(噂通り、父親とは似ていないようだな。)」


 そういう感想を思いながら椅子に座り、アルフレッドにも着席を勧め用意されたお茶を飲んで口を潤してからリミットが言葉を発する。


 勅使が派遣された理由は、王家の勅命は最初にノルドに下したが、ノルドがいろいろと申し立てアルフレッドに話を振ったということであった。これを聞いたとき、アルフレッドはさすがにうつむいてあぁーあという顔をする。


「そこで、この酒の入手先とその量を確認するために私が派遣されたのである。」


 これを聞いて素直に答えなさいという仁からのアドバイスに従い。実は領内で新たに生産しているものであり、父親を通じて王都に流したこと。まだ流通させるには十分な量ではないことと、王都での市場調査もかねて父親を通じてまずは社交界に酒を紹介した、ことなどをリミットに説明した。


 うんうんと腕を組んで説明を聞くリミット。


「では、商人から入手したというのは嘘であったか。なぜそのような嘘をつく理由があるのだ?」


「はい、お恥ずかしながら父には社交界で当家の威信を示したいという願望がいささか強うございますようで・・・。」


 と、直接的な表現は避けながら理由を言うと。


「なるほど、はっきり言えばシュミット卿が悪乗りしていろいろとばらまき後々面倒になるのを避けるため、ということか。」


 さすが実直、ズバリとストレートな物言いをする。


「そ、その通りです。」


 たじたじとアルフレッドは答える。


「ふむぅ・・・、実は酒のことは今回の下向の真意ではない。陛下の真意をお伝えするので心して拝聴するように。実は・・・。」


 その話の内容を聞いて冷や汗を流すアルフレッド。


 実は、今回の勅命を実現できなければ、それを理由にノルドを当主から引退させアルフレッドを当主に挿げ替える。また、仮に勅命を実現できれば、アルフレッドに功ありということで、これまたアルフレッドに当主を任せるという事であった。

 いずれにせよ王家の意志はアルフレッドにシュミット家の当主になれ、というものであった。


 想像していなかったことで、何が何だかよくわからないアルフレッドだった。


「驚くのは無理はない。しかし、申し上げにくいがシュミット卿の行状には以前から宰相閣下も気にされておいでであった。このままでは遠くない将来、ご当家にとって大きな災厄が起こらないとも限らない。シュミット子爵家のことを考えるのであれば穏便に済む今の裡に決した方がよいと考えるが、いかが?」


 しばらく目をつむり、リミットに顔を上げ目を開く。


「当家のことを考えていただいた陛下と宰相閣下、さらにリミット卿に感謝いたします。申し出をありがたくお受けする所存でございます。ただし、父にはその後どのような処置がなされますでしょうか?」


「そこは安心されるがよい、長年の務めに報いるということで、王都の郊外に屋敷を賜る予定である。」


「分かりました。ご配慮感謝します。」


 こうして王家の手練によるシュミット子爵家のクーデターが進行するのである。

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