猫の名は!
自分の置かれた状況に何とも言えない絶望感に浸っているとき、白猫が近くに寄ってきて仁の足に頭を擦り付けてきた。
「こう見る普通の猫なんだけどなぁ~。なんか腹が立ってきた。」
と、考えていると白猫が、
「どうです?、少しは癒されましたか?生前に猫が好きだったのは調査済みですので、それに合わせて私の姿を調整しています。」
計られている感が半端なく襲ってくる仁は、ますますイライラしてきた。しかし、ここで怒っても仕方がない。しかも年齢的にも怒りを持続させるほど元気もない。なんだかシワシワに朽ちていきそうな気持になっていくのだった。
「さっでは移動しましょうか。しばらくの間の住まいに行きましょう。」
と白猫は尻尾をこっちに向けて歩き始めた。仁もとりあえずここに居続けるわけにもいかないので素直に白猫の後ろをついていくことにした。
随分と歩いた。感覚的には二時間ぐらいだろうか。この世界の事を白猫から聞きながら歩いてはいたものの、普段運動なんてするはずのない生活をしていたためもうヘトヘトになった仁は、もうそろそろ限界だと感じていた。そしてようやく白猫がピタリと歩くのを止め、
「つきましたよ。あの家がしばらくの住処になります。こちらの方で用意をしておきました。」
仁は寄りかかった木に体を預けながら下に向いていた視線をなんとか上に向け、木の間から見える風景を見ると、木こりの家のような煙突のある家が建ってある。見た目は完全にログハウスだ。
「はぁ~ようやくついた、もう歩けない。久々にこれだけ歩いた気がする。」
と、なんとかこの家の中に入っていく仁。中には暖炉、テーブル、いす、そしてベットと一通り生活ができそうな備品や設備があった。
「とりあえず今日は疲れました。ちょっと休ませてください。」
とベットの中にダイブした仁はしばらくその意識を手放すのであった。
何時間ほど寝たのだろうか、室内の暖炉には火がついていて室内は心地よい温度になっている。足元には例の白猫が丸まって寝ていたようだが仁が目覚めると同時に起きたようで、
「目覚めましたか。よく寝てましたよ、ガーガーいびきもかいてました。あまりにうるさかったので防音の魔法を使用したぐらいです!」
「・・・、そりゃご迷惑をおかけしましたね!でもほぼ不死身の人間にさせられた迷惑よりかははるかにマシだとは思いますけどね!」
と、糸目にして白猫の方を向き抗議をすると、
「それを私に言われましても、私がそうしたんじゃないんだから。まぁ前向きに考えてこれから生きていきましょうね!」
などと、この猫が仁もよく知っている風な公務員お得意の事務答弁を行い、ますます仁を苛立たせたのはここだけの話。
そんなこんなの目覚めのあとはお約束お腹がすいてきた仁。お腹をこすりながら、なにか食べ物はないかと室内を探す。しかしそれらしきものは見当たらない。そうすると白猫が、
「食べ物はこの周りの森で狩りをしたり、この家の外に畑でも作って育てないと何もないですよ。働かざる者食うべからず、て生前の世界でも言うでしょ?」
と、さも当然のように言ってのける。仁は深いため息で天を仰ぐが、こんなヒドイ目にした神様を仰ぐことになりそうなのですぐに頭を抱えて唸った。いずれにしても食は大事。ただでさえこのでっぷりとした体を維持するにはそれなりの食料も必要となる。背に腹は代えられないので白猫を共として狩りに出かけることにした。
しばらくは白猫と一緒にいる羽目になりそうなので、白猫と相談しこの白猫に名前を付けることを思いたった仁は、
「実は猫の名前は考えていたんです。ずっと飼いたいと思っていたので。」
「おや、どんな名前でしょう?」
「ユニー、という名前です。」
「で、なぜユニーなんです?」
「秘密です。黙秘します。どうぜ私たちだけなんですから、それでいいでしょ。文句言わない!」
「まぁ、そりゃいいですけど、言いにくいのでユニにしてください。」
「それくらいなら妥協しましょう。ではあなたの名前はユニで。」
仁はユニを鑑定してみた。
名前:ユニ(神の眷属)
HP:不明
MP:不明
スキル:不明
・・・・なんも見えませんね。ユニは神の眷属とだけ認識できているようだ。
「あっいま覗きましたね!ス・ケ・ベ!」
「なんてこというんです!そりゃ普通見るでしょう。状況確認は大事です。」
「まぁいいですけど、見たところで今の仁さんの力では何も見えないでしょうしね。」
ユニはそう言ってそそくさと家から出て行った。
「早くしてくださいよ、食べ物取りき行くんでしょ!」
ユニにせかされて仁も家から出た。