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転生隠者は賢者になる  作者: 太白
子爵家当主として
29/94

ヴィクトルの誕生


 時はさかのぼり、カーセルにできた酒を送ったしばらく後。村長にあることを提案し了承を得た仁。次の日には村の広場に看板が出ていた。


【第1回 セレナ村収穫祭の開催】


 仁が考案したのは、新しく来た屯田兵と村民の親睦と収穫できたコメの豊作の感謝を兼ねた宴会の開催である。村長を落とすのは訳なかった、酒の飲み放題、という一言でイチコロだったのである。費用の一部村は公金から出してもらい、あとは有志、と言っても仁の手元にはまだ余裕があるのでその金を当たる事にした。


 一週間後村の広場にはテーブルが置かれ、屯田兵が集まっている。村人たちも興味津々で広場に集まった。もともとそれほど広くない村なので、広場は50人も集まればいっぱいになる。

 今や広場以外にも人が集まってきた。広場の中央には演台があり、頃合いを見て村長が開催の宣言を言うのであった。


 テーブルには新酒、そして仁が大量に作っておいたから揚げが置いてある。屯田兵も普段食べていないもの食べる事ができて喜んでいた。

 村人らは代わる代わる駐屯する兵士にも随分慣れてきたが、セレナ村にいる今の兵たちは初めてである。

 これからしばらくは農閑期に入り、兵たちと農民たちが一緒にいる時間も多くなる。そうなれば何かしらのトラブルが発生する可能性が高い。この収穫祭で、お互い親しくなるきっかけを作る、というのが仁の真の目的であった。


 収穫祭は大成功の裡に終わり、喧騒から静寂へと村は落ち着きを取り戻した。


 その後、バイドの家では大わらわ。セリーナの出産である。一か月に一度、仁もセリーナの体調を見るため魔法で母体の様子を調整していた。最近では随分と大きなお腹になりいつ生まれてもおかしくなかった。


 お産にはさすがの仁も立ち会えない。バイドの家の外で男三人がソワソワしながら右往左往している。仁にとってももはやセリーナは実の娘のような気がしていた。


 二時間ほどたったか、バイドの家の中から産声が聞こえる。そして、産婆が家から出てきて、


「おめでとうアレン、バイド。元気な男の子だよ。」


 そう聞いた瞬間アレンは一目散にセレーナの元に向かう。バイドは・・・いつもの通り泣きじゃくる。それを仁が笑うのであった。


 落ち着きを取り戻し、セリーナを見舞う仁。母の慈愛に満ちた顔で息子を見つめている。仁はこの子の鑑定をしてみる。すると、


「あっ!、あぁ・・・・ぁあ??」


「オイオイだんだよ。何が見えるんだよ。早く言えこんにゃろう!」


 バイドが手加減なく仁の首を絞めている。一瞬だけ川の向こうにユニが手をたたいて笑っている姿が見てたが無性に腹が立ったので意識が現世に戻ってきた仁。バイドの腕をなんとか振り払いゼーハーゼーハー言いながらなんとか声を出す。


「この子魔法使いになっちゃうかも・・・。」


 仁以外の三人が口を開いている。お産直後だみんな落ち着けって、と仁は思うのだがこれは一大事。バイドもアレンも頭を抱えている。


 この子、魔法適正(中)とある。この世界で仁のように強が付いているのはほぼ皆無である。中で上級者なのだ。しかも、このランクに至るまでには普通は長い期間の修行を要する。だが、生まれたばかりの子がこれである。そりゃおじいちゃんらは腰ぬかします!、という状態だ。


 仁には思い当たる節があった。母体の中にこの子がまだいるときに、セリーナの体に魔法を循環させていたのがこの子の魔法適正を上げた原因だろうと想像したのである。


 この日はセリーナのためアレンだけを家に残し、ジンとバイドは仁の家に向かった。バイドを心から祝ってやる仁。親友のいかつい、熊のような顔がいつになく柔らかい顔になっているのが印象的であった。


 あれからバイドは毎日のようにセリーナに会いに行ったが、仁は屯田兵の事もありしばらくはセリーナのところに行けなかった。


 そして、数日後母子の確認を兼ねてバイドの家に行くとアレンとセリーナが仁を迎えた。セリーナの腕の中にはすやすやと寝ている子供。セリーナはおもむろに、


「ジンさん、この子ができたのは全てジンさんのおかげよ。だから、この子の名づけ親になってもらえないかしら?」


 正直仁は戸惑った。前世も含めその手のことには無縁の人生である。だが、親友バイドの子供の願い、もはや自分の孫のような気もしてきた。


「喜んで引き受けさせてもらうよ。」


 そしてこの子の名前が決まる。ヴィクトル、バイド達には古の言葉で『勝利』を意味すると伝える仁。そして、自分自身の人生を勝ち取ってほしいそう願いを込めて、と最もらしいことを言っておいた。だが、本当はベクトルをもじっただけだった。さすが元数学教師おっさん流のお茶目である。


 だがこの子ヴィクトルが成長し、いずれ仁の弟子としてこの世に大いなるインパクトを与えることを仁をはじめ誰も知る者はいない。


 そんな出来事があった数週間後、急に村長から呼び出しを食らう仁。どうやらカーセルからの連絡である。早急にカーセルに来られたし。何かが起きた様だ。身支度を整え、馬に乗ってカーセルの街へと急ぐのであった。

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