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転生隠者は賢者になる  作者: 太白
領都カーセル
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王家の思惑と勅使派遣


「さて、これで大丈夫だ。」


 カーセル領の兵士たちが、倉庫から酒壺50個を馬車に運び込んでいる。そして、ダミアンの確認が終わり、そそくさと王都に向け出発した。


 ダミアンが館の中に入り、アルフレッドのいる部屋に報告に行く。


「先ほど出発いたしました。ご指示通り酒壺50個です。しかし、ご説明いただけますでしょうか?」


「ん?、なぜ50個なのかということ?」


「はい、50個ほどはカーセルの街に卸しましたので、まだ100個ほど残っておりますが。」


「その事ね、それはね、焦らしているんだよ。」


「おそらく父上のことだ。上級貴族たちに懇願されているはず。そして、これ以上は無理だと聞かされていてもどうせ聞く耳を持たず、追加を注文してくるはず。」


「でしょうね。」


「それを素直に差し出してごらんよ、今度はどんな無茶を押し通してくるか。それとね、最初の50個で様子見という意味もあったんだ。もし、評判を呼ばなかったらまた別の方法を考えないといけなかったからね。」


「なるほど、でまた追加の注文が来るでしょうか?」


「それはきっと来るね。」


 と言い、困った風に笑っている。



 一方王都では、ノルドが今か今かと待ち構えていた。


「ようやく到着したか、アルフレッドの奴めもったいつけよって。これ以上はもう無理でございますじゃとぉ、まぁ良い。少なくともこれで上級貴族どもにメンツを潰されずにすむ。」


 そう言って、手元にあるメモをロイに渡し、各貴族に依頼された酒を送付する。酒が届いた貴族はノルドに感謝の手紙を送付し、これがまたノルドの鼻を高くさせた。


 ノルドもこれ以上は無理だということをアルフレッドに念押しされているので、しばらく大人しくしていた。

 だが、そんなある日あろうことか王家からの勅使が子爵の邸宅に訪れた。勅使が言うには、王が貴族の間で盛んに噂になっている酒を所望されている、聞くところによるとシュミット家にしか手に入れることができないとのこと、費用は王家が持つので献上せよとのこと。


 ノルドは内心冷や汗ものであった。体面を何よりも重んじるノルドにしてみれば、王家からの依頼を果たせないなどという不名誉を自分が受けるのは断じてあってはならない。しかし、手元にはもう酒など全くない。どうしたものかと・・・。


 そこで、ノルドが一計を講じた。それは全てをアルフレッドに押し付けるというものであった。依頼をうまく処理できれば当主としての面目は立つ。失敗すれば、日頃から優秀さで引け目を感じている自分の劣等感が晴れ、社交界での息子の評判が著しく落ちる。王家には、全ては息子が悪いことと、この際平謝りし、代わりにバーサーカスを献上してお茶を濁そうと考えたのであった。


 どこまでも卑屈で、しかも自分の息子を愛せない父であった。


 そこで、勅使に対しおおそれながら所領にいる息子アルフレッドにご命じください、となんだかんだと理由をつけて言い含めるのであった。

 勅使も王にお伝えするといい子爵邸を去った。そして数日後、王家から勅使が直接カーセル領へと派遣されることが決定したのだった。


 王城の奥深く、二人の男が相談している。一人はこのザールサス王国第35代国王 ルイス=ザールサス、もう一人はザールサス王国宰相メルケ=ガルシアス。

 国王は長く続く王の中でも比較的名君に分類される人物で、政治も穏やかに進める人物であるが何事にも穏便にということから貴族たちの抑えとしてはいささか力量がない。


 それを支える宰相は屈指の名臣で、このある意味では優柔不断な王を輔弼し、王国の調整役として存分にその力を発揮していたのだった。そしてメルケが名臣といわれる理由は、その有能さもさることながら王家に対する忠誠心に疑いようもない点であった。


「最近貴族の間ではやっております新しい酒でございますが、少々過熱気味でございます。そろそろ手綱を締める頃かと考えます。」


「そうか、そちがそう申すのだそうすべきなのであろうが、すべての貴族どもを処分するわけにもいかないであろう。主要な者のみを処罰して他の貴族の戒めにしてはどうか。」


「陛下の言われる通り、その様にいたします。既に主要なものとしてこの酒を広めた人物を特定しております。ノルド=シュミット子爵でございます。」


「ノルドか、確かにあ奴はさしたる才も持たずただ社交界でにぎやかにするだけが生きがいのような者であったが。だが、あそこには有能で名の知れた息子がおったはずじゃが。」


「おっしゃる通りでございます。私としましては、王都に優秀な人材が集まることが肝要かと存じます。」


「つまり、ノルドを王都から遠ざけ、息子を王都に呼ぶ、そういうのか?」


「おうせの通り。」


「して、その方法は?」


「はい、・・・・・。」


 こうして、仁の作った酒が王家の思惑と交じり合い、新たな騒動をシュミット家にもたらそうとしている。


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