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転生隠者は賢者になる  作者: 太白
領都カーセル
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カーセルの街と練兵


 ダミアンと話をしながら来た道を戻る仁。宿に戻り馬車を宿に預けて、刀を携えてダミアンと街の中を散策する。木造の建築物が路を挟んでいるが、日本みたいに窮屈な感じでないのでむしろ広々とした感じであった。


 街の外れの方へ歩いていくと、大きな広場のようなところに男たちが集まって何やら動いている。


「あれは兵士たちの練兵場です。」


 ダミアンがそう説明する。そこに連れていかれた仁は、集団を少し高いところから見下ろしている鎧を身にまとった男へと案内された。

 この男はシュミット家騎士団長ゲオルグと紹介された。仁は頭を下げ、自分の名前を言うと、


「おぉ、お前さんが噂の男か。俺には敬語はいらんよ、普通に接してくれて結構。どうも田舎の育ちで騎士の堅苦しいのはどうも苦手でな、ハハハ。」


 仁と違い、年齢相応な重厚感のある大人で人当たりもよさそうな男である。


「うん?。お前さんが腰からぶっらさげてるのはお前さんの武器か?」


「あぁ、これですか?そうです。刀といいます。」


「ほー、初めて見るもんだな。見てもいいか?」


「ええ、いいですよ。どうぞ。」


 以前見た光景と同じものがそこにはあった。アレンが刀をずっとなめるように見ているのと同じように、ゲオルグも刀を見入っていた。

 気がありそうなので、それはセレナ村の腕のいい鍛冶師が作ったもので、作り方は仁が教えたもの。そして刀というものは基本的には切ることを目的とした武器だという説明を付け加える仁。


 すると、ゲオルグが試し切りをしていいかというので、仁が扱い方を実演することになった。

 細い木に巻きつけた麻の袋を立て、その手前1mほどに仁が構える。その姿をゲオルグ筆頭に兵士たちが見ている。


 気合とともに、刀を振りかぶり綺麗に麻袋を木の棒ごと切り、切りとばした麻布がその直下にポトリと落ちた。その瞬間兵士たちがおぉ~という声を漏らすのであった。


 次に仁は刀をゲオルグに渡し、ゲオルグが同じような動作で麻袋を切る。さすが武器の扱いが慣れている。一度見た仁の動きをきれいに再現できていると仁は感心していた。


「素晴らしいものだ。それに、ジンお前の動きもなかなかのもんだ。ひょっとして兵士としても働けるんじゃねーか?、オイ誰か!」


 そう言って兵士の一人を手招きしてこちらに呼び、仁と一勝負させようという。仁はもちろん嫌がっていたが、ダミアンも是非にと言って聞かない。仕方がなく一回だけということで話を受けた。


 兵士は木剣を、仁は木の棒を持ち対峙する。まず兵士が動き剣を仁に振ろうとするその瞬間、仁は剣道の小手を繰り出す。利き腕の感覚を失った兵士は握力を奪われ木剣を落としてしまった。


「勝負あり!」


 ゲオルグが腕を上げ、決着がついたことを宣言する。それは一瞬の勝負であった。

 周囲からも感嘆の声が漏れる。一般の兵士ではあまりに早く何が起こったのかさえよくわからないものがいたが、ゲオルグの目にははっきりと映った。しかも、ゲオルグらが知っている剣の扱い方がまるで違うことまで見抜いてしまうのだった。


 ところが、これで納得していないのが対戦した兵士。毎日それなりに厳しい練兵を繰り返し、兵士としての矜持は持っていた。だが、それを小太りな中年のしかも頼りなさそうなおっさんに軽く負けてしまったのだ。


「まだまだ!」


 そう言って、今度は素手で仁に襲い掛かる。仁は木の棒を捨て、向かってくる兵士の方に進み、繰り出してくる兵士の右こぶしを仁の右手で軽く払いながら握りしめ、自分の体の回転を加えながら円を描くような起動で兵士の体を崩そうとする。


 兵士は襲い掛かる体の動きを制動できずに体を前に屈ませる、その瞬間兵士は地面へとたたきつけられる。


 兵士は自分の体に衝撃が走ったのを気が付いたときには、既に空を見上げ地面に倒れていた。


「それまでだ!」


 強い口調でゲオルグが叱責を加える。兵士は茫然自失、そのまま仲間に抱え込まれて運ばれていった。


「すまない、後でしっかりしめておく。にしてもだ、お前さんそれをどこで習った?」


 やっちまった、と仁は焦った。ダミアンも仁の過去には興味がある、というより街に連れ出したのはそこらを調査するためでもあった。


「えーと、それはですね・・・。黙秘します・・・すみません。なかなか込み入った事情がありまして。」


「ふーん、そうか。嫌がるのを尋問するわけにもいかんか、なら聞かない代わりに条件がある、お前さんがこの街にいつまでいる?」


「あと6日ほどはいる予定にしています。」


「よし、残り6日毎日ここへ来い。そうしたら詮索はしない。拒否したら尋問してでも吐いてもらうぜ。」


 ウッシッシ、と手の指を胸の前でポキポキと鳴らすゲオルグ。ダミアンも兵士たちのためにお願いしますと懇願されてしぶしぶ仁はその提案を受け入れたのだった。



 この日、領主邸の一室ではアルフレッド、ダミアン、ゲオルグがテーブルに向かい合って座っている。


 開口一番ゲオルグが、


「あらぁーただ者じゃねーな、坊ちゃん。」


「ゲオルグ、坊ちゃんとはなんですか、若様と言いましょうと何度も言ったでしょう。」


 と、ダミアンがあきれる。


「あぁ、すまん。いや、そんなことよりもだ。あのジンって野郎の見た目に騙されそうだったが、戦闘の身のこなし、判断力。あれは相当な修練をしてきているはずだ。あれが魔法使いだとは普通思わんな。熟練の兵士の動きだった。しかもだ、あいつの使う剣の動きは俺たちが知っている剣の動きじゃない。まるで別物だと俺は感じた。」



「それほどでしたか・・・。で、ゲオルグはジンさんを善人と見る、それとも悪人と見る?」


「兵士と対峙したときには、相手を痛めつけようとする動きではなかった。剣、体術どちらも相手の戦闘意欲を失わせるような動きだった。無駄に人を痛めつけないように配慮するあたり善人の方に近いのだろうと俺は思う。ただ、まだ分からん。」


「私もあのときのジンさんを見ていましたけど、悪意を持っているようではありませんでした。それに、全力で練兵に参加するのを拒否していましたので、フフ。」


 と、笑うダミアン。


「しかし、うまい具合に練兵に参加させましたねゲオルグ、上出来です。ゲオルグは練兵中ジンさんのことをそれとなく見ててください。ジンさんが何を考え、どのような思惑を持っているのか詳細を知っておきたいので。」


「了解した。」


 ゲオルグとダミアンは頷いた。

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