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転生隠者は賢者になる  作者: 太白
領都カーセル
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次期当主との初対面


 三日間馬車の手綱を引きながら、街道らしき道をひたすらに進む。三体の魔獣の冷凍保存は人に見られないように箱の中に保存している。道中、何度か魔法で再冷却しながら進んでいるので保存状態は万全である。地方領だからか、道中危険なこともなく治安は良好であった。


 三日が過ぎ、道路の周りにきれいな畑が見られるようになり、行き交う人も出始めた。街道の側面には木々が植えられ、進む方向の左側には川も流れている。ほのぼのとした田舎の風景に穏やかな気持ちになった。


 緩やかな丘を登りきると眼下にはセレナ村よりはるかに大きな街がある。中心には石でできた領主の館のようなもの、街は館を中心に円状に街が広がっている。街には四本の道路が通っていて、どれも最後は領主の館へと通じているようであった。


 丘を下り、町の入り口で検問のようなものがあるかと思いきや、そのまま通り抜けることができた。

 門番らしい兵士がいたがとりわけ街に入るのに止められることもなく、街に入ったらすぐそこに屋台があった。少々小腹も空いたことだし、そこで焼いた川魚を銅貨10枚で購入し口へと運ぶ仁。


 仁は屋台の親父さんに聞き、宿の場所を聞き出してとりあえず宿へと向かう。

 そのまま大通りをまっすぐ進むと右側にその宿屋があった。幌馬車の看板に止まり木亭というその宿の名前が書いてある。馬車を玄関先で留めて玄関を入ると恰幅のいい女が受付でこちらを見て、


「泊りかい?」


「そうです。」


「1泊銀貨3枚、飯は別途で代替銀貨1枚からだよ。」


「とりあえず1週間厄介になります。宿代はここに。」


「部屋は階段上った一番奥だよ、馬車はこの前の道を少し行くと裏側に置くところがあるから。荷物は自分で保管してくださいな。」


 先に荷物を渡してきたかったので、仁は部屋の確保を済ませたらそのまま大通りを進み領主の館に行った。


 領主の館は城塞としての役割までは期待できそうにないが、中世を思わせる石を積み上げた外観の建築物であった。

 さすがにここには門番がいて、検問をしていた。

 以前ダミアンから貰っておいた領主の印章のある紙を門番に見せると、慌てて兵士が館内に入っていった。しばらくすると若い男が走ってくる、ダミアンだった。


「ようこそ、領都カーセルへお待ちしていました。どうぞ中へ。」


 馬車のまま館の中庭に入り、三つの木箱を兵士らに持ってもらい、仁はそのまま館の中に通された。

 二階に上がり、ドアを開けると大きな広間があり、そこに三つの箱を置いてもらった。するとダミアンが部屋を少し外す、と言って部屋から出ていったのだった。


 仁は部屋の中をグルグル見て回る。内装は派手さはないが上質で落ち着いている。仁がいかにも貴族という感じのゴテゴテした趣味の悪い部屋を想像していたのは内緒である。


 しばらくして、金髪の爽やかを絵にかいたような長身イケメンの後ろをダミアンが歩いてくる。空気を読んだ仁は、片膝を地面につけ貴族に向けての挨拶をする。


「あなたがジンさんですね、遠方からわざわざありがとうございます。私はこの家の主、アルフレッド=シュミットです。あなたが言うシュミット家を没落させる張本人です。」


 と、笑いながらこのイケメンなかなか突っ込んでくる。仁はちらりとダミアンの方を見ると、ダミアンはばつが悪そうに引き付き笑いをしている。


「ごほん、恐れながら申し上げます。ご依頼のバーサーカス一体をお持ちしました。残り二体は村からの献上品です、お納めください。」


 アルフレッドの合図で木箱の蓋が開けられると、そこには三体の魔獣が・・・・凍っている。驚く兵士たち。それを見て、アルフレッドも箱の傍までいき、その目で確認する。


「こっこれは・・・バーカーサスはともかく。これはゴルテミス、そしてこっちの鳥はアケロンじゃないか!、仁さんひょっとしてこれを狩ってきたのですか?」


「はい、瞬間冷凍でちょちょいのちょいと。」


「瞬間冷凍?つまり凍らせたと?」


「はい、御覧のとおりでございます。」


 そう言って、仁は氷をコンコンとコツいて見せる。しかも腹立たしいほどの笑顔で。


 あまりに驚いている主人を見てクスクスと笑っているダミアンが、


「でも仁さんこのままではさすがにちょっと・・・。」


「あぁ大丈夫、ここで魔法を使ってもよろしいですか?」


 と、仁が聞くと、アルフレッドはコクコクと無言でうなずく。


「(フフ、この小憎たらしいイケメンめ、驚いてやがるな。だがまだこれからだ。イケメンめ恐れおののけ!)」


 イケメン嫌いの仁がここぞとばかりにアルフレッドに追い打ちをかける。傍から見ればただのやっかみであるが本人は気が付くわけもない。


「ではいきます。」


 と、両掌に魔力を集中し、解凍作業に移る。ジワリジワリと氷はとけ今狩ったばかりの様な魔獣が三体転がっている。


「いやはや驚いた。ダミアンから聞いてはいたけどここまですごい人とは。やはり聞くと見るのとでは違うね。」


 どういう風にダミアンから聞いていたのか、後でダミアンを締め上げてやろうと思うおっさんであった。


 この三体の魔獣について後で聞くところによると、ゴルテミスは見ての通り高級鎧の材料で骨も使える優れものらしい。しかも、捕獲するには相当な準備が必要でありこれを一人で狩るなど聞いたことがないとのこと。しかもこのゴルテミスは興奮状態で近くの敵を稲妻魔法で雷撃し、人など一瞬で感電死するほど危険な生物らしい。


 また、アケロンはその毛の美しさから王家が戴冠の儀式にのみ使用するマントに使われているらしい。しかもこの鳥は森の奥深くに住んでいてめったに人のいるところに来ないため、記録として残っているのは王国内で前回出現したのが約50年前。捕獲されたのはおそらく150年前らしい。


 常識が何なのか知らない非常識おっさんはまたまたやらかしたようである。


「ジンさんには、これに報いるのに褒賞をもってしたいんですが、査定がどの程度になるか。あとモノがモノだけにそう安々と世間に出せないものなんですよ。しばらく預からせていだたいても構いませんか?」


 申し訳けなさそうに言うアルフレッド、


「(確かに人はよさそうか・・・。まぁ見た目がイケメンで俺は許さんがな)褒賞なんて無用でございます。ダミアン様にはセレナ村で助けていただきましたので、そのお礼と思ったのですが、かえってご迷惑をおかけしているようで申し訳ございませんでした。」


 と、仁は深々と頭を下げた。


「いえいえとんでもない。ダミアンからあなたの事を伺って私も是非お会いしたかったのです。しばらくこの街で逗留していただけませんか?」


「はい、宿を一週間ほどとっております。しばらく領都を見物する予定でございます。」


「そうですか、とりあえず本日はここまでで。後日またダミアンをお迎えにあがらせます。ダミアン、君はジンさんを宿までお送りして。」


「かしこまりました、若様。」


 こうして、子爵家次期当主との初顔合わせが終わるのであった。

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