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転生隠者は賢者になる  作者: 太白
領都カーセル
21/94

初孫と旅立ち


 仁はシュバルツの森の奥深くに入りバーサーカスを見つると、今までと違い長期間の移動を考え魔獣の冷凍保存することにした。


 バーサーカスに気づかれないように、心臓から全身を瞬間冷凍する仁。本来この様な芸当を実現するするには大量の魔力と緻密な制御を必要とするが、そこは人外仁、難なく一体のバーサーカスをカチコチにしてしまう。

 更に、別の魔獣を二体ほど同様の方法で冷凍する。一体は、かなり固い鱗で覆われたまるで恐竜のような大トカゲ。もう一つは、翼を広げると2mほどにもなろうかという七色の美しい毛におおわれた鳥であつた。


 仁はこれをセレナ村から持ってきた馬車に乗せ、再び村へと帰る。帰ってくるなり同じ馬車に食料とバイドが収穫したコメの籾を数袋、そして日本酒の壺を20個ほどを荷台に乗せ領都への旅の準備が整った。


 しばらく帰ってこれないだろうから、とセレーナの体調を見るため鑑定すると、ある兆候が出ていた。それは妊娠の初期であった。いよいよバイドもじーさんになるのかとふと仁は笑みがこぼれた。


 子爵領都はここから馬車で3日ほど先にある。案内がなくとも道の通りに進めば着くということなので仁一人で行くことにした。なにせ爺になる奴を長期間は家族から離しておくには不憫である。

 出発を明日に控え、仁とバイドの一家が久々に一同に会し夕食をとる。


 そんな食事の最中に、アレンが奥から何か包んだものを大事そうに持ってきた。そして仁に差し出した。それは、かつて仁が持っていた刀と同じような物をアレンが最初から打ったものであった。

 以前アレンは仁が持っていた刀を見てから仁にその製法を聞き密かに自分で作刀をしていた。ようやく満足のいくものができ、それをどうしても仁に渡したかったのだ。


 仁はありがたくもらうことにした。鞘から抜いた刀身は驚くほど美しく、さすがは本職が作ったもので仁が作ったものよりしっかりできていた。それは、鑑定からも明らかであった。


そしていよいよ仁からバイド一家へと重大なお知らせをする。


「えぇ~皆様、本日はご招待いただき誠にありがとうございます。そして、アレンからは心のこもった一振りをもらい、俺も感謝に耐えません。そこで私からも皆さんに幸せのおすそ分けをしたいと思います。」


 みんながそう聞かせれると、椅子に座った面々が背筋を伸ばしてこちらを向く。明らかに何を貰えるのだろうかという期待した顔である。一番印象的なのはそのときのバイド。まるで待てをしている犬のようだ、とはいえ決してかわいいものではなかったが・・・。


「期待させて申し訳ないが、俺からみんなにモノを送るのではないよ。お知らせだ。」


 そう聞くとなんだか残念そうな顔をする一匹の犬らしきおっさん。


「ごほん・・・おめでとうセリーナ、君の親父さんはもうすぐお爺さんに昇格する。」


「・・・・・・・・・・・・・・。」


 みんなが顔を見合わせパチクリしている。それを見た仁は微笑む。その瞬間、家の中が歓喜に満ちた。何とも言えない声でバイドの奴が泣いている、いや啼いているのかお前?もはや涙を流しているのか鼻水を流しているのかよく分からない顔で室内を走りまわっている。


 親父となるアレンは、まだ何が起きたのか分かってなくただぼーっと宙を向いている。それを見てセリーナはくすくすと笑いながら、お腹のあたりを撫でている。


 こんな微笑ましい姿を見せつけられた仁は、明日があるといって早々に我が家に戻り明日に備え寝ることにしたのだった。


 誰もまだ起きていないであろう時刻に仁は家を出た。馬車に乗り村の外れに来たとき、村の方に一度頭をさげ、行ってきます、と言っ振り返ると朝もやの中に一人木に寄りかかりこちらを見ている熊、いやバイドがいた。


「気を付けていってこいや。」


「見送らなくてもよかったんだぜ、バイドお爺ちゃん。」


 と、いうとバイドが照れ臭そうに笑う。


「俺が帰るまで俺の家で住んでくれ、食い物の場所と酒の場所はよく知ってるだろ?酒も飲んでくれて構わないよ。」


「そいつぁありがてーな、じゃぁな。早く帰って来いよ。でないと先にセリーナが産んじまうぞ。」


 二人して笑いあった。そして仁は一路、アルフレッドとダミアンの待つ領都カーセルに向かうのであった。

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