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転生隠者は賢者になる  作者: 太白
セレナ村の騒動
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バイドとの再会


 気が付けば、バイドの小屋で一晩過ごしてしまった仁。目が覚めたら猛烈な二日酔いであった。外に出て、井戸から水を汲み飲みほす。同時に意識をアセトアルデヒド分解に向け、魔法の力で二日酔いの症状を緩和させる。そんな事をしていると後ろからバイドが、


「おう、おはよう。昨日はゆっくり寝れたか?ブランあおって二日酔いになってやしないか?、ハハ。」


 と、様子をうかがいながら近づいてきた。仁は魔法の効果からすぐに二日酔いの症状から立ち直り、


「おぅ、どったことないぜ。気持ちいい朝だなぁ。おかげでよく寝れたよ。」


 明らかなウソである。生前なら昼過ぎまでウンウン唸りながら、もう二度と酒など飲むかと後悔している場面であった。


「そいつぁよかった。ところでさぁ、昨日の晩お前んちに案内してくれるって言ったの覚えてるか?いい酒があるって言ってたぜ。」


「(そんなこと言ったのかぁ~、俺のバカ・・・)おぉ覚えてるぜ、家に来るのか?ちょっと遠いぜ?そっちの生活もあるだろうから、酒は今度俺が持ってくるよ。

(なんとか家に来ることは避けないと・・・)」


「ふぅ~ん、そうか。俺もこのグレイトボアの皮を処理しないといけないから。じゃぁ気が向いたらその酒飲ませてくれや、頼んだぜ!」


「(ふう・・・)おう、任せておいてくれ!」


 そう言って、朝飯は昨日のボア鍋の残りを二人で食べて、仁は自分の家の方に帰ることにした。

 バイドと別れ、周りに人がいないことを確認して、仁は飛行で自宅に戻る。


 一方、バイドは皮の処理をしながら昨夜のことを考えていた。猟師のくせにあまりに無防備であったことが気になっていた。しかし、グレイトボアを狩ったときのあの動き、同一人物とは思えなかった。バイドは頭を振りながら結論を見いだせずにいたのだった。


 バイドが頭をひねっていた頃、仁は自宅に戻ってきた。そして、初めての異世界人との接触を振り返っている。酔って自宅のことを話してしまった失態を反省していたのであった。


「迂闊だったなぁ・・・。警戒心が足りなかった。これから注意しないと。ただ、あのバイド悪い奴ではなさそうだ。」


 というのも、ブランを飲みながら話をしているとき、仁はバイドに対し鑑定スキルを使っていた。そこには仁に対する害意が全くなかった。それで安心をしていたという事もあったのだ。

 だが、口約束でも約束。仁の特製日本酒を飲ませると約束した以上、それをなかったことにはできそうにもない元日本人の仁であった。


 数日後、仁は手に酒を携え、それを包むのに畑を開拓するときに倒した虎の皮で風呂敷にし、森の出口まで飛行する。それから約一時間ほど走ったであろうか、バイドの小屋まで移動した。

小屋に着いたらバイドはちょうど、グレイトボアの皮をなめし台で処理していた。


「おぉ~い、久しぶりだなぁ。約束通りもってきてやったぜ。」


 仁は大きなこ声を出し、腕を振ってバイドに到着を知らせる。


 バイドもその姿に気が付き、皮をなめすナイフを振り、それに応える。


 バイドの作業が終えるまで、その作業を見て過ごす仁。前世でもさすがに皮の処理の仕方までは見たことがなかったため、興味津々で見ていた。


 作業が終わり、二人して小屋に入りさっそく持ってきた酒を見せるべく風呂敷を取り出した。そのときバイドは驚愕する事になる。


「おいおい、その皮って・・・。」


「あぁこれ、家の近くうろついていたのを狩ったんだよ。大変だったわ、ハッハ・・・。」


 乾いた笑い声が小屋の中で響く。仁はこのとき気が付いていなかったが、バイドは脇の下に大量の汗が流れていた。それもそのはず、仁が持ってきた皮は危険種に該当するバーサーカスという魔獣の毛であったからだ。

 その毛並みは超が付くほど高級で、貴族には高値で購入してもらえ、その危険性から一般の猟師ではとても手が出ないものであった。バイドほどの熟練猟師でも生涯で五匹も手に入れれば幸運といわれるものである。


 バイドはそんな事は口に出さず、脇の下の汗がやれるのを我慢しながら平然を装い、仁の持ってきた酒を飲んでいる。


「おぉ、これはこれでうまいな。ブランほど強くはないが繊細で芳醇な香り。こりゃ貴族様でも飲めねーしろもんだぜ!」


 バイドは先ほどの焦りを忘れたかの様に日本酒を飲み干す。その姿に満足した仁は約束を果たした安堵感があった。


「おいジン、その皮おえぇどうすんだよ。」


「あぁこれ、俺じゃ処理できねーからバイドよかったらもらってくれ。ただし、それでっわけじゃないけど俺に皮の処理の仕方教えてくれないかな?」


「いいのか?そんなことで。こいつを売ればグレイトボアなんて目じゃないほどの金が手に入るんだぜ?」


「はは、バイド、普通そんなこと知らない人間に言わないだろうよ。まぁそんなバイドだからこそこんな話を持ち込むんだが、引き受けてくれないか?その皮はその前金みたいなもんだ。」


 バイドは二つ返事で了承した。仁はそれを聞いて家に帰った。


 数日後バイドは手に入れたバーサーカスの皮を処理し始めた。そして気が付いてしまった。バーサーカスの皮の傷が刃物で傷つけたものとは明らかに異なっている事を・・・。


「こいつぁとんでもねぇ奴と知り合ったかもしれねーな・・・。


 バイトは直感的にそう感じた。そして、この事を自分から仁に聞き出すのではなく、いずれ仁が話してくれる日を待とうと心に決めるのであった・・・。

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