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転生隠者は賢者になる  作者: 太白
セレナ村の騒動
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猟師の手並み


 グレイトボアの巨体を持って、森の出口で出会ったバイドと一緒に歩きながら普段どういう生活をしているか、家族がいるのかと根掘り葉掘り田舎のおっさんの会話が続き、適当にごまかしたりはぐらかしたりと、なかなか気が抜けない二時間ほどをおっさん二人で歩いた道程であった。

 さすがにあれこれ聞かれるだけでも困るので、このあたりのこと、国の様子、近くの集落など仁の方も環境の情報収取をした。


 そして、ようやくこじんまりとした煙突から煙が少し出ている小屋にたどり着いた。これがバイドの猟小屋のようだ。


「おつかれさん、こいつをここに掛けてくれ、ナイフを持ってくる。」


 と、バイドは小屋に入り年期の入った大きめのナイフを持ってきた。さすが猟師しっかり手入れがされた切れ味のよさそうなナイフを持っている。そのナイフを使ってテキパキとグレイトボアを解体している。そして30分ほどで皮と肉とを分離し、皮は小屋近くの水たまりにつけて洗浄するという。仁は見事な手さばきを関心ながら見ていた。


「今日はこいつを使った俺自慢の料理を食わせてやるからな。小屋の中で待っててっくれや。」


 そう言って仁を小屋に入れるバイド。中は狩猟に必要な道具がいろいろと並んでいる。どれも使い込まれているが、しっかり手入れがされているものばかで中にはどう使うのかよく分からない物もあった。


 しばらくして、肉と野菜が入ったデカい鍋をひっさげたバイドが小屋に入ってきた。暖炉の中に鍋を置き調理を開始する。


「煮えるまでちょいと時間がかかる。それまでこいつでもやりながら話をしようや!」


 そういって暖炉の横に置いてあった容器を右手にもち、左手には木でできたコップをもって仁近くに寄ってきた。


「お前さんも飲める口だろ?」


 何を基準にそんなことを言ってくるのか、こいつ!と思いながらも、


「あぁ、水代わりだよ。」


 と答える仁。カッカッカと笑いながらバイドはコップになみなみと茶色い液体を注ぐ。その茶色い液体をバイドはグビグビと飲み干す。ほぼイッキであった。


「プハァ~、たまらん。今日命をつないだ後だ。この味をまた楽しめたことを神に感謝しねーとな。」


 と、上機嫌で言う。


「(神様ねぇ・・・俺のこんなところに放り込んだ奴に慈悲があるもんかね。あんたあいつを買いかぶりすぎだと思うぜ)」


 と、仁は心の中で思い茶色い液体を口に入れる。見た目は何だがこの酒なかなか芳醇である。臭みはないがわずかに麦の香りがする。しかも日本酒よりわずかにアルコール度数が高い。


「おっいける口だね、気に入った!おう飲めよ。」


「おぉありがとうな、じゃぁお言葉に甘えて。」


 と、仁は右手に持ったコップを差し出す。バイドもまたなみなみと注ぎ、おっさん二人さしつさされつブランと呼んでいる酒を飲み干す。しばらく、猟に関する話をしていたら仁は酔ってきた。バイドは相変わらずガハハとブランをグビグビあおっている。


 そんな時間を過ごしていたら、待ちかねのボア鍋ができたようで、


「おっそろそろに上がった。こいつをつまみに飲んだら、鬼に金棒だぜ。おめー嫁さんいねえんだから今夜大変だぜ!」


 と、下ネタも気兼ねなくぶっこんでくるバイド。仁は引き付き笑いをしながら、ボア鍋を食べてみると、その肉質はやはり猪に似ている。だが、あまり臭くなかった。これはこれでなかなかうまい。一口二口と食べていくと、


「おぉ食いっぷりもいいなぁ。こりゃ猟師としちゃー上出来だ。で、お前さんどこに住んでんだい?今までわざと聞かなかったが、そろそろ教えてくれよ。」


 酔いとは危険なものである。仁は酒で思考力が弱っているのか素直に、


「あぁあの森のちょど真ん中あたりに家があんだよ、畑もそこに作ったしな。今度、俺んちに来いよ。このブランよりうまい酒があるんだぜ。」


 仁は顔を赤くして笑っている。


「・・・おめぇあの森ん中に住んでんのかよ。・・・おぉおお、そうかそりゃ大変だな。まぁ飲めよ!」


 バイドは次から次へとブランを仁に飲ます。仁も素直に飲むが、さすがに限界に来た。


「さすがにもう無理、飲めない。ふあぁ・・・眠たい・・・。」


 そう言って仁はばたりと倒れたと思ったら、ガーガーいびきをかきながら寝始めたのであった。


 バイドは額に汗をかいている。


「こいつただもんじゃねーな。」


 バイドはその猟師の直感から、ビッグボアを仕留めた仁の動きで既にこいつが只者でないことは感じていた。ただ、話をしてみると悪い奴には見えなかった。だが猟師の勘がビリビリと訴えかけてくる、こいつはただもんじゃぁねぇ、と。

 そこで、酒でも飲ませてみりゃなんかわかるかと、ボア鍋を餌に仁を誘い、仁という人間を見定めようとしたのだった。


 そうとも知らず、仁はガーガーイビキをかいてすっかり寝てしまっている。


 それをバイドはブランを口に含みながら眺めているのであった。

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