カサンダカルダ王国(中)
疲れていたのか昨晩は良く眠れた。今は王宮の謁見の間に向かっている。カサンダカルダ側から殿下と側近全員で会いたい、と要請があった。
部屋に入ると対面に2列に並ぶ机があった。3脚の椅子が空いていてこの国の代表、大臣達だろう人達が座っていた。
私達は殿下、ユリウス様、コントラン様、タイロン様、バル兄様、私と座る。タイロン様が護衛として殿下の後ろに行こうとしたら座るように言われた。
私達が座るとすぐに国王、王妃、王弟が入ってきた。
立ち上がり挨拶をするけど、
「えっ」
「はっ」
私とバル兄様は前を見てお互い見合ってしまう。
『あれって』
声が聞こえそうだ。
入ってきた王弟レオンハルト様を凝視する。
穴が開くほど見てしまった。
何でも屋のレオンだよね。なんでそんな所にいるのよ。どういうことよ。
両国の話し合いは順調に進んだ。サフィー様は春にレオンハルト様へ輿入れだ。少し早いと思ったけれどカサンダカルダは早めに慶事をしたいと希望したので春に決まった。
昼食の時間になった。
殿下は国王夫妻と昼食会。護衛のタイロン様とコントラン様が付き添う。
私はレオンハルト様からの誘いでユリウス様、バル兄様と昼食。
案内される時、バル兄様はレオンハルト様を見ていた。やっぱりバル兄様もレオンだと思っているよね。
ユリウス様もレオンを知っているはずなのに態度が変わらない。いつも通りの無表情。氷の貴公子は伊達では無いわね。
部屋に入ると食事の用意がされる。準備が終わると護衛とカートを引いた女官が入ってきた。
「「シュウ(さん)、アンナ(さん)」」
バル兄様と声が被る。
「やっぱりレオンなのね」
レオンハルト様へ向けていつものように声を掛けてしまった。
「お久しぶりです。皆様」
シュウさんが騎士の礼をする。
「レオンハルト様の護衛、シュウラカ・ガルダです」
「レオンハルト様付き女官長アンナ・ガルダです」
「ガルダとは、王家親戚のガルダ公爵家の方ですか」
ユリウス様よく知ってますね。
「はい。次男ですので伯爵を拝命してます」
「驚いたよ。シュウさん。いや、ガルダ伯爵」
バル兄様、私も驚きました。
「ここでは今までの様に話してください」
レオンハルト様がこちらを見て言った。
「ユリウスは知っていたのか」
「いいえ、今初めて知りました。あの様子だど殿下はご存知だったようですね」
バル兄様の問いに淡々と答えるユリウス様。驚かなかったのかしら。
「驚いてますよ」
ユリウス様に言われてしまった。口に出てた?
「顔に出てます」
また!
「くすくす」
アンナさんが笑ってる。あれレオンもバル兄様もシュウさんも。
『なに?』バル兄様に頭を撫でられる。
「説明して貰えますか」
ユリウス様、動じませんね。
王位の継承争いが始まった時、レオンは身を隠す為カラナリア王国のガルダ公爵と外務大臣時代に親交のあったお爺様に援助を求めた。
カラナリア王国に来た3人は平民に混じり何でも屋として暮らしていたそうだ。
知っていたのは陛下、宰相スタンジェイル公爵、お爺様の3人のみ。
「レオンは急に平民になって大丈夫だったの」
もう、普通に話してしまおう。
「最初は戸惑ったな。でも、楽しかった。依頼を達成してありがとうって言われるのは嬉しかったな」
わかるわかる。
「スーが来てからは面白い事も増えた。貴族の令嬢とは思えないほど市井に馴染んでたからな」
ムムム
「人の事言えないと思うわ。レオンだって王族とは思思えないほど市井の人に溶け込んでいたわよ。毒舌だったしね」
「確かにあれが素だな。王宮は肩がこる」
「レオンハルト様は昔から腕白小僧でしたよ」
アンナさん、援護の言葉をありがとうございます。
楽しい昼食をとり解散する。
そうそう、レオンに明日の晩餐会のダンスに誘われた。
ダンスは初めに国王夫妻が踊る。続いて上位の地位、今回は王族と他国の王族。そして、参加者が踊る。
国王夫妻のダンスの後、レオンは王妃様と踊る。次に誘う人選に悩んでいたそうだ。
婚約者の話は今回の晩餐会でするがサフィー様はいない。かといって他国の人や自国の貴族も誘いにくい。
私ならサフィー様の代わりという言い訳がつくだろうと決めたらしい。
本当はレオンはダンスが得意ではないのであまり踊りたくないけれど、自分の婚約発表の場では踊らないわけにはいかない。
それで私なら下手でも大丈夫だろうって決まったそうだ。
まあ、いいけどね。
レオンがユリウス様を見て
「いいかな」
と聞いていたけどユリウス様の許可がいるの?
レオンとサフィー様の婚姻。
サフィー様も相手がレオンとは知らないみたいだから、どんな反応をするか楽しみだわ。




