カサンダカルダ王国(上)
次の日、学園昼食の時にアイリスから女官になると決めたと聞いた。私達は驚きながらもアイリスを応援した。来年アイリスは隣国へ行ってしまう。ローズも、リリアも、私も涙ぐんでしまった。
頑張って欲しいけれど寂しい。
私はアイリスほど強い想いがない。こんな気持ちで良いのだろうか。
私も夏に隣国へ行きその後どうするか決める事を話した。何故か皆にはため息を吐かれ、
「また、面倒な事を」
ローズに言われた。
私も思うよ。仕方ないじゃない。陛下だよ。王様だよ。断れないんだよ。
休日にアイリスと王宮へ女官見習いとして行っていたけれど、夏の休暇が近づくとイーサン殿下の仕事を手伝うようになった。カサンダカルダに関係している事案を側近として覚える必要があるためだ。殿下直々ではなくユリウス様から言われるんだけれども、とにかく忙しい。
隣国へ行く為にやるべき事が多い。一月前からは学園の帰りにも王宮へ行っている。ユリウス様は学園を休んで王宮で仕事をしていた。
試験?なんとかギリギリで終わったけどね。
ユリウス様は余裕で終わっていた。信じられない。
夏の休暇に入り隣国カサンダカルダ王国へ向かう。
馬車は、先頭は荷物を積んだもの。次の馬車にイーサン殿下、バル兄様、コントラン様、ユリウス様。3番目の馬車に私と侍女2人。最後尾も荷物を積んだ馬車になっている。タイロン様は騎馬で護衛。護衛には近衛と騎士団2番隊。
途中カサンダカルダに接するモーリッツ領に寄る。モーリッツで3日間滞在して出発する。
王太子の移動にしては人数が少ないと思っていたけれどモーリッツの騎士団から護衛が足される。
隣国はまだ落ち着いてないから慎重に行動しないとね。
モーリッツ領に到着するとウィリアム様、アンネメリー様、そしてジルベール殿下が迎えてくれた。
挨拶をして中に入る。イーサン殿下、側近、私が応接室へ。
隣国の事、サフィー様の事、今後の情勢などを話す。夕食後イーサン殿下とジルベール殿下が2人で話をしていた。
2人とも緊張しているみたい。
バル兄様はウィリアム様に呼ばれていた。当主と次期当主。いろいろ話があるんだろう。
私はアンネメリー様と女子会。女官見習いの話をした時に思わずユリウス様の人使いの荒さを愚痴ってしまった。反省。アンネメリー様が生暖かい目で見ていたのは気にしない。
次の日、バル兄様はモーリッツの騎士団と一緒に鍛錬し、次期当主と認められた。
バル兄様、強いからね。
ウィリアム様には負けたけど他は圧勝だった。サイラス団長に勝った時は「「「おおおお」」」
と野太い歓声があがったそうだ。
3日滞在して私達は隣国カサンダカルダ王国へ向かった。
モーリッツ領を出て4日、カサンダカルダ王国王都カサンダに到着。王宮へと向かう。
道すがら窓から風景を見ていたけれど争いがあったとは思えないほど長閑だった。
途中、街の宿屋に泊まった時に聞いてみても、王位継承争いは民には負担が無かったようだ。
「王宮の事は良く分からないけど、私達の生活は変わらないね」
宿屋の女将さんが言っていた。
王族、貴族の間での争いで済んだのはまだ良かったんだろう。
継承争いに負けた王弟は離宮に隔離されている。僅かな使用人と住み、生涯離宮で暮らすそうだ。
王弟に付いた貴族は当主交代、領地縮小になったがほぼ無血の争いだったと聞いた。
王宮に着いた。王宮も荒れた様子も無く、きちんと整備されている。落ち着いてきているのだろう。
サフィー様のためにいろいろ調べますよ。
王宮には数多くの国から来賓が来ていた。私達も与えられた部屋へ案内される。
今後の予定は、
今日はこのまま休憩、なんだけれど殿下と側近は打合せ。私も参加。
明日は朝食後カサンダカルダ王国マラカイトロ・カサンダカルダ国王と会談。サフィー様の話を詰める。
殿下、側近、私も参加。
婚約に向けて条件や日程を決める。
午後は明日の準備をしたらバル兄様と城下へ行く。
調査です。
遊びに行くのではありません。お土産は買うけどね。
明後日は戴冠式。夜は舞踏会。
とても楽しみ。
この舞踏会の為にダンスの練習をした。体力だけはあるから頑張りました。人前に出ても大丈夫だとサフィー先生から合格を貰いました。
次の日には帰国する。
忙しい。予定が詰まっている。




