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悪役令嬢様、その依頼お受けします  作者: いぶさんた
隣国カサンダカルダ王国編
34/40

陛下の依頼



「どういう事!」

ローズがサフィー様の近くへ行く。


「ローズ座って。カサンダカルダが揉めていたのは知っている?」サフィー様


「確か王弟と王太子の王位継承で争っていたんだったかしら」


「王太子が王位を継いだのよね」

アイリスとリリアの言葉に私達は頷く。


「それで、王太子、今の王ね。王の弟にとカサンダカルダから申し入れがあったの。我が国は受け入れる方向で話をしているのよ」


「決まるのも時間の問題ね」


「ローズの言う通りよ。カサンダカルダに一緒に行ってくれる女官が必要なの」


「それで、アイリスとスージーに話をしたのね」


「無理強いはしたくないの。カサンダカルダへ行けば滅多にカラナリアへは戻ってこれないから」

サフィー様は私達の目を見て話す。


「これは私の我儘なの。一緒に行ってくれる女官や侍女ももちろんいるんだけれど、友人がいて欲しいと思ってしまったの」


アイリスも私も言葉が出ない。


「考えてみてね。家族とも相談して。断ってもいいの」


「「はい」」





アイマリクト伯爵邸に帰ってサフィー様の話をお爺様にする。


「そうか、タイカナル殿に話をしてからと思っていたんだが話を聞いたんだな」

「はい。お父様にも相談しないといけないですね」

お爺様は顎に手を当て考えている。


「先日陛下に呼び出された時にカサンダカルダとサファイア王女の話を聞いた。


それで、カサンダカルダからはもう一件あってな。夏にある王の戴冠式に王族を招待したいと言ってきた。

陛下はイーサン殿下を行かせるつもりでいらっしゃる」


「そうですか」


「同行は側近はもちろん護衛や侍女も行くんだが…」


「もしかして…」


「スージーにも行って欲しいと陛下に言われた」


「私ですか。どうして?」


「サファイア殿下のために女性目線でカサンダカルダを見てきて欲しいそうだ。側近の一人としてだな」


「それはちょっと…私には荷が重いと思います」


「すまん。スージー。これは決定なんだ。儂も断ったんだが陛下が『イーサン殿下の婚約者として同行するか』などとおっしゃるから、もちろん冗談だぞ。譲歩して側近で収まった」


婚約者なんてとんでもない。


「それで、これを依頼にしてくださるそうだ」


「依頼ですか。何でも屋が無くなったのに、それも国の重要な事なのに依頼にしてもよかったのですか」


「陛下も依頼の方が頼みやすいからそうして欲しいとおっしゃっていた。おそらくスタンジェイル公爵が入れ知恵したんだろうな。スージーがやる気になるようにな」


スタンジェイル公爵なら納得できる。

「そうですか。わかりました」


「学園が夏の休暇に入ったら出発するそうだ。

それで、先程のサファイア殿下の件だがカサンダカルダから帰ってから決める事にしたらどうだ。

お前もカサンダカルダを知ってからのがいいだろう」


「はい」


「そうだな。それまでは休日はサファイア殿下の所で女官見習いをさせていただこう」


「女官見習いですか」


「イーサン殿下について行くのにも女官の仕事が出来るといいだろう」





あれから休日は王宮に行き女官見習いをしている。動く事は好きだし、教えてもらう事もとても為になる。

アイリスも一緒に女官見習いをしている。家族と相談して女官になると決めたそうだ。

私も夏の休暇明けにはどうするか決める。





…アイリス・サナタカヤワ…


「どうしよう」

屋敷に帰る馬車の中で一人零す。

カラナリア王国第一王女サファイア殿下から殿下付き女官になり、殿下が隣国カサンダカルダに嫁ぐ時に共に隣国へ行こうとのご提案。


始めに思ったのは『行きたい』だった。それから家族の事。隣国へ行けば家族といつ会えるかわからない。



屋敷に着き家族が揃ったところで話をする。


やはりというか当たり前なんだけれど皆驚いていた。

王族付きの女官はこの国の働く女性の頂点に近い。憧れの仕事だ。

仕事としてはこれ以上はないだろう。

だけど、隣国に行く事は覚悟がいる。


「サファイア殿下は断っても良いとおっしゃったんだな」


「卒業後も家にいて良いのよ。婚約者も、婚姻の申し入れはきているの」


お父様、お母様は反対なんだろうか。


我が家は家格は子爵だけれど裕福だから私の持参金目当ての婚姻の申し入れは昔から多い。両親は私の意思を尊重してくれていたため、婚約者はまだいない。


女官にならなければ結婚しないといけないだろうな。

いくら家族が家にいても良いと言っても成人した娘がふらふら家にいるわけにはいかない。


だからといって家の仕事は手伝わせては貰えない。

大事にしてもらっているのはわかっているのだけれど不満はある。


「アイリスはどうしたい。本当の気持ちを言ってごらん」

お父様が私の目を見て聞く。


「申し訳ありません。私は女官になりたい。家族と離れるのは寂しいけれど、やりたいです」






「私達はお前の意思を尊重するよ」


「ありがとうございます」


夜部屋にいるとお母様が入って来た。2人で遅くまで話をしていた。

2人で泣いてしまったのは内緒ね。



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