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悪役令嬢様、その依頼お受けします  作者: いぶさんた
王子と悪役令嬢編
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王子と悪役令嬢(下)



「確かに、王妃様とのお茶会でそう申しました。ジル様がお疑いになるのもわかります」

王子が驚いている。エリシア様が肯定すると思っていなかったのかな。




「ジル様は王妃様をどのように思っていらっしゃいますか」

「母上は私を王太子にして権力が欲しいのだと思う」

エリシア様の突然の質問に王子は淡々と答えた。


「ジル様は王妃様を誤解していらっしゃいます。あの時の事をお話しするのなら王妃様のお心もお話ししなければいけません」


「どういう事だ」

エリシア様、黙ってしまった。

「エリシア、教えてくれ」

王子が詰め寄る。

「君がモーリッツまで来てくれた。その事だけでも私は自分の考えを疑っている。それなのに母上の事まで私は間違ったのか」


エリシア様が、ふう、と息を吐く。

「あの日王妃様はとても機嫌が良く、私とジル様が結婚して私が王太子妃になった時の話をしていました。


私がまだそのようなお話は時期尚早ですと申し上げてもお聞き頂けず、あの話が出ました」


王子がエリシア様を見つめている。


「王妃様は私がスタンジェイルだからジル様の相手に選んだとおっしゃいました」

王子が目を伏せて聞いている。


…冬・王妃のお茶会…


「ねぇ、エリシア。私は貴方がジルベールと婚約してくれて嬉しいわ。それに二人はお互い想いあっている。それが嬉しいの」

王妃様は機嫌良く話す。


「初めは貴方がスタンジェイルだからこそ選んだけれど真面目だし優しいし、貴方で本当に良かったと思っているのよ」


「はい。ありがとうございます。私もジル様と婚約出来て嬉しいです」


「王太子妃になれるのよ。嬉しいでしょう」


「いえ、私はジル様と婚約出来た事が」


「そうねぇ。スタンジェイルだから王太子妃になれるのよね。そうでなければ、いくら想い合っていても側妃なのだから」

王妃様が寂しそうに言う。



「……私も想い合えるなら側妃でも良かったわ」

「王妃様」

「今更言っても仕方がないわね」

王妃様が私を真っ直ぐに見る。


「エリシア、私の事を皆がなんて言っているか知ってるかしら」

「あ、えぇ」

「くすくす。知ってるから気を使わなくていいのよ。

陛下の愛情が無いからジルベールを王太子にする事に全てを賭けている。愛情よりも権力を欲している。

だったかしら」


「私もそのように聞きました」


「そうね。王太子妃の時には愛情を頂けていたと思っていたのだけれどミリアに会ってからの陛下には想いが届かなかったわ。その分ジルベールに気持ちがいってしまうわね」

王妃様は寂しそうに、諦めたように呟く。


「相手からの想いがなければこちらがいくら想っても欲してもどうにもならないわ」


私は王妃様の御手を取り

「王妃様スタンジェイルが付いているからジル様は王太子になれます。私との婚約はそのためなのです」

言った。




…モーリッツ応接室…


「私は王妃様を元気づけたかった。王妃様はとてもお寂しそうでお苦しそうで、泣いてしまわれるのではないかと思いました」


エリシア様の告白は王子には衝撃だったようで、王子はエリシア様を見つめて動かない。


「母上は…孤独だったのか」

王子が呟いた。


「そうですね。王妃となり最高の地位と名誉があっても、一番欲しい陛下の愛情は無い。

王妃様には失礼かもしれませんが、女性として寂しく、辛く、孤独な日々だと存じます。

まして、弱音を吐く事が出来ないお立場ですからお苦しかったかと拝察致します」


私は続ける。


「私は下級貴族で生活も平民のようですが幸せです。家族が仲が良くお互いを大事に思っております。だから貧乏でも笑っていられます」


「スージーの言う通りです。あの時の王妃様をそのままには出来ませんでした。王妃様をお慰めするため、安心していただくためにあの言葉を使いました」

エリシア様も家族の仲が良いから(公爵なんて溺愛してると思います)王妃様の辛さがわかったんですね。


「ジル様、信じていただけませんか。私はジル様が良いのです。王太子で有ろうが無かろうがジル様なら。

ここモーリッツで暮らすおつもりなら私もこちらに参ります」


エリシア様言い切りました。尊敬します。王子これでも疑うのですか。


王子は右手で顔を覆っている。その顔は真っ赤だ。

「少し考えさせて欲しい」

王子は立ち上がって応接室を出て行った。


部屋に残ったエリシア様も真っ赤になっていた。




王子が出て行って数分後、侍女が応接室に入ってきて、皆がアンネメリー様の部屋で待っていると案内してくれた。

「エリシアちゃん、スージーちゃんお疲れ様」

アンネメリー様が迎えてくれた。ここで夕食をとりながら話をするようだ。


「ここなら準備さえすれば私達だけになれるからね」

ローズが椅子を勧めてくれる。


「夕食の時間なのですね。そんなに時間が経っているとは思いませんでした」

エリシア様の言葉に頷く。


夕食をとりながらエリシア様と私は皆に先程の話をした。私はエリシア様の感動した言葉や態度を話した。

少し興奮してしまって、恥ずかしい。


エリシア様も王子に告白した所で真っ赤になりながら話をしていた。王妃様の話もした。皆王妃様に同情的だった。


特にアンネメリー様とサフィー様は

「あの兄は何をやっているの。政治だけでなく家族を大事にしないなんて最低」

「自分の親ながら信じられない。幻滅」


など国王様相手に散々罵倒していた。私だって自分の兄妹や父親があんなのだったら、失礼、あのような行いをしたら激怒する。


「皆様、ありがとう」

エリシア様が頭を下げて言う。


「後はジルベールがどうするか。貴方達は3日後には王都に帰るのよね」


「帰るまでに何も言って来なければ今度は私がジル兄様に話をするわ」

アンネメリー様の言葉にサフィー様が答える。

「「私も」」

ローズと私も答えた。



皆で顔を見合わせて笑った。エリシア様も笑っている。




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