作戦会議
次の朝私達はモーリッツ家の方達と一緒に朝食を食べた。
伯爵は口数は少ないけれど部屋の不備が無かったか体調はどうだなど気を使ってくださった。
家族の事、学校の事など楽しい朝食だった。
伯爵が仕事のために退出すると、アンネメリー様がローズに今日の予定を聞いた。
「今から作戦会議よ」
ローズは私達を見て返事をした。
伯爵とアンネメリー様にはエリシア様の目的を私達が着く前にローズが話していた。
「わかったわ」
アンネメリー様が立ち上がる。
「準備が出来たら、そうね、1時間あればいいかしら、1時間後に応接室に集まりましょう」
「お母様、お母様も参加するのですか」
「当たり前じゃない。私はエリシアちゃんの味方よ」
アンネメリー様は
「じゃあ、後でね」
と手を軽く振って部屋を出て行った。
「ローズ?」
私はどういう事かと説明をしてもらおうとローズを見ると、
「伯母様らしいわ。何か良い考えがあるのかもね」
サフィー様が頷く。
「エリシア様すみません」
「いいえ、アンネメリー様にも相談出来るならお願いしたいわ」
ローズの言葉にエリシア様は返事はしたが、エリシア様はまた考えこんでしまった。
時間になり応接室へ行くとローズがいた。
「エリシア様はどんな様子?」
「馬車の中でも悪い方、悪い方へ考えてしまって随分悩んでいるわ」
ローズと話をしているとサフィー様とエリシア様が部屋へ入ってきた。エリシア様顔色が悪い。
続いてアンネメリー様も入ってきた。
「さあ、皆、座ってちょうだい」
アンネメリー様がソファを指して言い、御自分も座った。
私達が座ると侍女がお茶を淹れてくれる。アンネメリー様の指示でお茶を淹れ終わった侍女が部屋を出て行き私達5人だけになった。
「貴方達がここにいる日数も少ないからすぐに話をはじめましょうか」
アンネメリー様がエリシア様の方へ向く。
「ローズから聞いているけど、確認するわね。エリシアちゃんはどうしたいの」
「私はジルベール殿下とお話がしたいです」
「そう」
「はい。侍従や侍女も居ない、二人きりでお話がしたいです。
それで、ジルの本当の気持ちを聞きたい」
「エリシアちゃんには辛い事になるかもしれなくても?」
「はい。どんな言葉を聞いても、です」
「お母様、何とかなりませんか?
私はエリシア様が来る前にジルベール殿下に少しでも話を聞こうと騎士団へ殿下に会いに行きました。
ですが、鍛錬場で遠くから見る事は出来ても話す事は出来ませんでした。
『会わない』と殿下が固辞していると言われました」
ローズも頑張ってくれてたんだ。
「そうねぇ。ジルベールは自分に厳しいわ。自分で自分を罰しているみたいね」
アンネメリー様がため息を吐く。
「主人もはじめは王族なのに甘えが無くやる気に満ちてて良い。と言ってたのに今では心配してるのよ。
あれでは心も体も疲弊してしまうってね。
人は時々気を緩めないと潰れてしまうわ。
やる時はやる。やらない時は休む。とね」
「ジル兄様は真面目で頑固だから」
「そうね。サフィーの言う通り真面目だからこそ自分を追い込んでしまっているのね」
「お母様、ジルベール殿下とエリシア様が二人で話をする機会を作れませんか」
「えぇ。エリシアちゃんの覚悟も聞いたし、私も二人は話し合うのが良いと思うわ。
ただねぇ、ジルベールは頑なに断りそうよね」
アンネメリー様は顎に手を当てて悩んでいる。『美人は何をやっても絵になるわ』なんて思っていると
「やっぱり主人に頼むしかないかしら」
「そうですね。ジル兄様が出てきてくれなければ何ともなりません。ジル兄様は私達が来た事を知っているのですか」
「サフィーがきた事は知っていると思うわ。でもエリシアちゃんやスージーちゃんの事は知らないはずよ」
「では、ジル兄様には不意打ちでエリシアに会わせた方がいいですね」
「そうね。エリシアちゃんもそれで良いかしら」
「はい。お願いします」
話が決まりました。そうだ。
「すみません」
私はちょっと気が引けながら話しかけた。
「どうしたの。スージーちゃん」
「ジルベール殿下が来られると一緒にマーカス様が付いてくると思います」
「そうねぇ」
「来るわね」
「私もそう思うわ」
アンネメリー様、ローズ、サフィーも相槌をうつ。
「それも、主人に言って何とかしてもらうわ。何処かにお使いに出すとか。ジルベール一人で来るようにね」
アンネメリー様が立ち上がる。
「とりあえず主人に話をしてくるわ。なるべく早く話し合えるように言ってみるわね」
「エリシア様大丈夫ですか」
「えぇ。大丈夫よ。自分で決めた事だわ」
心配そうに聞いたローズにエリシア様は力強く頷く。
「お母様から連絡があるまで屋敷の中を案内しますね。気晴らしになると思います」
ローズの提案で4人で部屋を出た。
昼食時アンネメリー様からジルベール殿下が鍛錬後の夕方に伯爵邸へ来る事になったと聞いた。




