許可
「また、面倒な事になったな」
お爺様がため息を吐く。
「エリシア様の力になりたかったんです。
それに、ジルベール殿下もエリシア様が好きだと思います。だから、なんとかならないかなぁと思ってしまって。すみません」
お爺様は手を横に振り
「責めてはいない。儂もジルベール殿下とエリシア嬢は一度話をした方がお互いの為に良いと思う」
トマスを呼び便箋を持って来させた。
「タイカナル殿にスロイサーナ男爵へ儂も説明するがスージーも手紙を書きなさい。依頼料の事も報告しないとな」
「お爺様、モーリッツ伯爵領へ行ってもいいんですか」
「あぁ、エリシア嬢の力になってあげなさい。無理をしないように」
お爺様に許可が貰えたのでサフィー様エリシア様ローズに連絡をした。
―王宮・国王執務室―
「お父様、お願いがあります。今回の休暇は出掛けるどころではなかったけれど大分落ち着いたから私は残りの休暇でモーリッツ伯爵領に行きたいですわ。許可をお願いします」
サファイアが執務室に入るなり話す。
「サフィー、モーリッツにはジルベールが行くんだが」
「知ってますわ。だからこそよ。ジル兄様に聞きたい事があるの。こちらだと謹慎中で会えないから話が出来ないわ」
サファイアがジルベールに何の用があるんだ?
「わざわざモーリッツまで行かないと駄目なのか」
「そうよ。エリシアとスージーも一緒に行くの」
「エリシア嬢が行くのか」
「えぇ。エリシアがジル兄様に言いたい事があるのですって。私もね」
エリシア嬢がジルベールに何を言うんだ。エリシア嬢も婚約の破棄を望んでいたんじゃないのか。
だが、この娘は許可を出すまで諦めないだろうな。
仕方がない。
「許可する」
―スタイジェイル公爵邸―
スタイジェイル公爵が眉を寄せて考えこんでいる。
公爵の前にはエリシア様が座っている。
「どうしても行きたいのか」
公爵が重々しく口を開いた。
「私は後悔したくありません。モーリッツ伯爵領へ行かせてください」
公爵がまた考えこんでしまった。
「ジルベール殿下にお会いして、どうするつもりだ」
「私は私の気持ちをお伝えしたいと思います。殿下が会いたくないとお思いでもこのまま会わずにいては私は諦めきれません」
「お前に良い結果になるとは限らないのはわかっているな」
「はい、それでもお話をさせていただきたいと思っています」
「それで、誰と行くのだ。一人ではないのだろう」
「サファイア殿下とスージー・スロイサーナ男爵令嬢です。サファイア殿下が夏の休暇でモーリッツ伯爵領へお越しになるので一緒に参ります。この事はローズ・モーリッツ伯爵令嬢も知っています」
「4人で決めたのか。しかし、なぜスージー嬢も行くんだ」
「私が一緒に行って欲しいと頼みました。スージーのあの明るさが心地いいのです。
スージーは男爵領へ帰るのをやめて私を心配してついて来てくれます。心苦しいので依頼の形にしました。ご相談もせず勝手に決めて申し訳ありません」
「いや、大丈夫だ。あの娘が一緒ならお前も心強いだろう。しっかりしていたからな。依頼料も私が払おう」
「ありがとうございます。スージーは優しくて強いですね。スージーと話をしていると気持ちが前向きになります。くよくよしていられません」
「そうか。後悔の無いようにジルベール殿下ときちんと話をしてきなさい」
ローズがジルベール殿下と領地へ帰る3日前に、ローズ、アイリス、リリアと約束通り皆で集まった。
この時、ローズからはエリシア様の事で質問攻めにあった。お爺様にも許可を貰ったので三人には全て話した。何でも屋の事、依頼の事。
「ローズと殿下の話は私も聞いたわ。そういう事情だったのね。」アイリス。
「私も聞いた。今日その事を教えて貰えると思っていたのよ」リリア
「本当に困っているのよ。いくら殿下と会う機会が無いとはいえモーリッツに殿下がいらっしゃる以上噂は無くならないだろうから。どうにかならないかしら」ローズ
「ローズが婚約者を決めれば良いのよ」アイリス
「そうよ。御両親は何も言わないの」私
「お父様もお母様も私の気持ちを尊重してくれるの。私は両親のようにお互いを想い合える人が良いのよ」ローズ
「気になる人はいないの」リリア
「いないわ。領地で屈強な騎士を見てるから貴族の子息が軟弱に見えちゃうのよね」ローズ
「ローズは辺境伯を継ぐのよね」私
「そうね。一人娘だからそのつもりよ」ローズ
「辺境を守れる人。それに、お転婆なローズでも良いと言ってくれる人でないとね」アイリス
「酷いわ。普通の令嬢より元気なだけじゃない。スージーだって私とそう変わらないわ」ローズ
「そこで私を出さないでよ」私
「「どっちもどっちよね」」
アイリスとリリアの声が揃った。
などなど女の子の大好きな恋愛話で時間が過ぎて行った。
別れ際
「スージー、今度は何でも屋の事を教えてね。とても興味があるわ」
ローズに言われた。ニヤっとした笑顔だった気がする。




