本気ですか
「納得出来たかな」
お爺様が三令嬢の方を向くと皆首を縦に振った。
「儂はこれで失礼致しますが、お聞きになりたい事があればお呼びいただいて構いませぬ。存じておる事はお伝えいたしましょう」
お爺様は部屋を出て行った。
「なんか、いろいろ考えていて馬鹿みたい」
エリシア様が不貞腐れています。
「私は、安心して家に帰れるわね」
ローズはほっとした顔をしている。
「ねぇ、エリシア」
「なあに」
「貴方まだジル兄様が好きなんでしょう?」
サファイア様、それ聞いちゃいますか。
「ローズとの婚約の噂を聞いただけでローズに会わせて欲しいと私に頼むんだもの。気になったんでしょう」
「……そうよ」
エリシア様真っ赤です。
「ずっと好きよ。今でもね」
(きゃー。わかっていたけど本人から聞くと照れるわ)
「あの時、ジル様が離れていってしまわれた時、他の方に心が移ったと思って、ジル様が好きな方と婚約出来るように私は破棄を望んだわ。
でも、ジル様にはそんな方はいらっしゃらなかった。私が勇気を出して、嫌われると思ってもジル様ときちんとお話をしていれば違ったんじゃないかと思っているの」
「今からでも話せば良いのよ」
ローズ、わたしもそう思う。
「きっと、会っていただけないわ。婚約破棄した相手だし、ジル様は謹慎中だもの」
「そうだわ」
サファイア殿下が手を叩いてエリシア様を見る。
「エリシア、私達もモーリッツ伯爵領へ行きましょうよ」
「「はあぁ」」
私とローズはお互い顔を見合わせて首を横に振っている。
「サフィーが遠出するのは準備が大変だから駄目よ」
ローズが言うが
「大丈夫よ。今回の夏の休暇はジル兄様の事があって私の行先がまだ決まってないのよ。丁度良いわ。モーリッツに行きましょう。ローズは先に帰ってて。私とエリシアとスージーは後から行くから」
「えっ、私もですか。私はスロイサーナへ帰る予定なんですが」
王女殿下に、言い返してしまった。私にだって予定があるんです。
「私は…行きたいわ」
エリシア様なんて事を。本気ですか。
「私はジル様にお会いして聞きたいの。婚約破棄の時の二の舞は嫌よ。ジル様が何を思っていらっしゃるのか。本当の事を知りたい。
そして、私の気持ちを伝えたいの。ジル様が私をどう思っておられようと」
エリシア様が決意したのをみてサファイア殿下はうんうん頷いている。
「スージー、お願い、一緒に来て。サフィーもいるけれどスージーがいてくれると心強いわ」
どうしよう。
お父様達は事情を説明すればわかってくれると思う。私もここまで関わるとどんな結果になってもエリシア様に付き添ってあげたい。
「私も行きます」
私を見てエリシア様が笑顔で微笑む。
「それじゃあスージー、貴方もこれからは私の事をサフィーと呼んでね。モーリッツまで一緒に行くんだし友人になりたいわ」
サファイア殿下もフレンドリーなんですね。
「サフィー様よろしくお願いします」
「サフィー、スージーに依頼を出して。スージーを家に戻さないのよ。スロイサーナ男爵家の方達には迷惑をかけるわ。
エリシア様の時も依頼だったからスージーに依頼を出してその、少しでも男爵領の為に……」
ローズの声がだんだん小さくなっていく。
言いたい事はわかるよ。スロイサーナ男爵領は貧乏だから少しでも助けたいってことだよね。
ありがとう。
でも、今回は友人として心配してるから報酬はいらない。
向こうでサフィー様とエリシア様が相談している。
「今回は友人として心配で一緒に行くのだから報酬はいりません」
私がはっきりと断るとエリシア様が首を横に振る。
「ありがとう。友人と言って心配してくれて。でもね、面倒をかけている事はわかっているの。だからこそ受け取って欲しい」
「そうね。前回と同じだけでいい?」
男爵領の税3年分、金貨60枚。
サフィー様が決めてしまった。
「頂きすぎです」
さすがに多すぎだ。
「じゃあ、2年分ね。これ以上は減らさないわ」
「あ、ありがとうございます。では、依頼をお受けします」
申し訳ないと思いつつも依頼とした。お陰で私も男爵領の役に立てる。嬉しい。
まずサフィー様が休暇の許可を陛下にいただき、それに合わせてエリシア様と私が一緒にモーリッツ領へ行く。
エリシア様も公爵様の許可をいただかないといけないし、私もお爺様に相談しないと。お父様にはお手紙ね。
「私は先に行くけど、お母様に話をしておくわ。きっと相談にのってくれるわ」
ローズはモーリッツ領で動いてくれる。
「それぞれ必ず許可をもらいましょう」
サフィー様の言葉に皆で頷いた。




