依頼達成
「お爺様、ジルベール殿下はどうなるのでしょう」
私達は、伯爵家に帰るために迎えの馬車に乗っている。
「エリシア嬢との婚約は保留と言っていたが破棄になるのは時間の問題だな」
「そうですか。殿下はエリシア様と婚約破棄する為に令嬢方と親しくしていたのですね。好きな方がいたのでもなく」
「そうだな。王太子廃嫡も考えていたかもしれん。スージーの言っていた違和感はこれだったか」
「そうですね。殿下の令嬢に対する態度が上辺だけのものだったため違和感があったのですね。
でも、まさか、王太子廃嫡にまでになるとは思いませんでした」
私は想定外に起こってしまった王太子廃嫡に驚いてしまった。
「陛下もよく決断されたのう。上に立つ者としては皆を納得させるには充分だか、親としてはやり切れないだろう」
お爺様は今後の事を考えているのだろう
「この後は数年殿下を王都から出し、その後臣下に降らせるという所だろう」
「そうですか」
私は小さく頷いた。
夏の休暇が始まった。
私は久しぶりに何でも屋シュウに来ている。スタンジェイル公爵家からの依頼達成の報告だ。
簡単に状況説明をしたがシュウさん達も調査を手伝っていたので知っていた。
「終わったけれど、すっきりした気持ちにはなれない」
そう言ったらナタリーさんに頭を撫でられた。まだ子供扱いをやめてくれない。
夏の休暇は2ヶ月ある。私は前半は王都にいて勉強と何でも屋の仕事と、皆との女子会をして、後半は領地に帰る予定にしている。
王宮に行った日から半月が過ぎた頃、お爺様に呼ばれた。今回は執務室ではなく応接室。お爺様、お婆様、私が座り、トマスがお茶を淹れてくれ、そのままその場にいるようにお爺様が言った。
「ジルベール殿下の件だが」
『やっぱり、平民の間でも婚約破棄は噂になっている。とうとう処遇が決まったんだろう』
お爺様が続ける。
「保留になっていたジルベール殿下とエリシア嬢の婚約破棄が決まった。そして、ジルベール殿下の王太子廃嫡に伴いイーサン殿下が王太子になられた」
「お爺様、エリシア様はどうなるのですか」
「スージー、落ち着きなさい。お爺様の話を最後まで聞いてからですよ」
お婆様に注意されてしまった。
「ジルベール殿下はモーリッツ辺境伯へ行く。心身共に鍛え直すそうだ。
半月後、ローズ・モーリッツ伯爵令嬢が帰る時に一緒に向かうらしい。
儂は良い解決策だと思う」
「そうですね」
お婆様が頷いている。
「それで、エリシア嬢なのだが、数人の貴族からイーサン殿下の婚約者にと話が出ている」
今までイーサン殿下に婚約者がいなかったのは王妃様が横ヤリを入れていたからだと言われている。王太子になるのだから婚約者の話が出るのもわかる。
だけど、
エリシア様はジルベール殿下が好きなのに。
「スージー、心配しなくても良い。この話は陛下も知っており、スタンジェイル公爵に任せておる。
イーサン殿下の気持ちもだが、エリシア嬢には少し時間が必要だからな」
心配が顔に出ていたのだろうか。少し安心した。あれからエリシア様には会っていないけれどお元気だろうか。
「お爺様、王妃様はどうなさっていますか」
「あぁ、王妃様はな」
お爺様目が目を伏せる。
「王妃様は受け入れてくださった。我々としてはもっと感情的になられるかと思っていたのだが、少し体調を崩されてはいるが政務をされているようだ。
あまりにもいつも通りなのでスタンジェイル公爵が心配しておる」
王妃様は王子を王太子にしたかったのでは?そんな事を考えていると、
「スージー、よく頑張ったな」
お爺様が頭を撫でた。
「はい」
少し恥ずかしかったので、元気に返事をした。
「トマスもいろいろ世話になった」
お爺様がトマスに言うとトマスは深く頭をさげた。
スージーが依頼達成しました。
悪役令嬢編、完結です。
拙い文章を最後まで読んだ頂きありがとうございました。
ブックマークや評価もとても励みになりました。
悪役令嬢エリシアのその後は王子と悪役令嬢編になります。
読んでもらえると嬉しいです。