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悪役令嬢様、その依頼お受けします  作者: いぶさんた
悪役令嬢編
17/40

父と息子 (下)



「冬の頃、母上とエリシアがお茶会をしておりました。私はエリシアを呼びに行く途中、その席での話を聞いてしまい…

エリシアは王太子妃になりたいのだと。だから、私の側にいるのだと言っていました」


「聞き間違いとか、誤解ではないのか」


「私も信じられなかったので、いけないとは思いつつその後も少し話を聞いておりました。母上に話を合わせているだけだと思いたかった」


「違うのか」


「はい。私にはそうは見えなかった。エリシアの本心を見たと思いました。

王族の結婚とはそういうものだとはわかっています。

ですが、あの時の私はエリシアが唯一だったのです。

エリシアしか信じられなかった」


「ジルベール」


「私はずっと兄上が王太子に相応しいと思っておりました。その話を聞いてエリシアは兄上に嫁いだほうが幸せになれると考えました」


「何を馬鹿なことを」


「そうですね。今なら私事で馬鹿な事、と思えますがあの時はそれが一番良い事と思ってしまったのです。私はエリシアに幸せになって欲しかった」


「それでは婚約破棄をするために令嬢と親しくしたのか」


「婚約破棄だけでなく王太子廃嫡も考えていました。ロザリエンヌ嬢が近づいて来てからはユリウスの婚約も破棄出来ないかと思うようになりました。


結果、全て叶いました」


「ロザリエンヌ嬢が不憫ではないか」


「私も初めからユリウスの婚約破棄を計画した訳ではありません。ユリウスとロザリエンヌ嬢は典型的な政略結婚で、ユリウスはそれで良いと思っていたようです。

しかし、ロザリエンヌ嬢の私に対する態度は酷かった。婚約者のいる令嬢とは思えない、話に聞く娼婦のようでした」


ジルベールはため息をつく。


「想像はつくな。ロザリエンヌ嬢は自業自得でもあるか」


「あれを見てもユリウスは淡々としていたのです。さすがに驚きました」


「氷の貴公子と呼ばれていたな」


「家族や気を許した友人以外には対応が冷たいですね。ですが、そんなユリウスがスージー嬢といると態度が違うのです」


「今日居たアイマリクトの孫娘だな。緊張はしていたが私にも意見が言えるしっかりした娘だった」


「ええ、私もユリウスの紹介だったので興味をもちました。二人とは学園で時々昼食を一緒にしましたが、ユリウスがスージー嬢を気遣っていて、とても微笑ましかったですね」


「ユリウスとスージー嬢は想いあっているのか」


「違うと思います。今は、ですが。


ただ、珍しくユリウスの感情が動いたのはわかりました。ロザリエンヌ嬢相手には無かったことです。


それに、スージー嬢はユリウスがいないと私が誘っても断ります。王太子の誘いなのに。

こういった態度も好ましいですね。ロザリエンヌ嬢とは正反対です。


私はユリウスを弟のように思っていますから、幸せになって欲しい。

ロザリエンヌ嬢と婚約していてはユリウスは氷の貴公子のままだと思いました」


「そうか……お前の気持ちはわかった。

ユリウスとロザリエンヌ嬢の婚約破棄はなされた。

お前とエリシア嬢との婚約も破棄されるだろう」


保留にしたのは王族の婚約破棄は会議にかける必要があるからだ。スタンジェイル公爵も合意しているため破棄に向けて話は進むだろう。

私はジルベールと目を合わせる。ジルベールも私をしっかり見据えた。


「王太子廃嫡とエリシア嬢との婚約破棄は覆らない」


「はい。申し訳ありません」


「いや…。今日のようにお前と深く話せば良かった。私は後悔しておる」


「父上」


「今後だが、お前はどうしたい?なるべくお前の希望を叶えてやりたい。

ただし身分剥奪や王国追放はだめだぞ」


お互いを見あって笑った。


「エリシアの事ですが兄上に話をして欲しいです。出来れば婚約してもらえると」


「ジルベール、本当にそれで良いのか」


「はい」


「わかった。イーサンとスタンジェイルに話はしよう。たが、私の出来るのはそれだけだ。婚約するかは約束はできん。それで良いか」


「はい」


「それでお前はどうする?」


「私は、伯母上の所で勉強し直したいと思います」


「モーリッツ辺境伯爵領か」

ウイリアム・モーリッツ辺境伯爵には私の妹のアンネメリーが嫁いでいる。

伯爵は勇猛果敢な人物だ。


「はい。辺境伯の地は王国にとって重要な場所です。いま隣国カサンダカルダは揉めていると聞いていますので、辺境伯爵領で勉強し、いずれ兄上の手伝いが出来ればと思います」


「落ち着くまで王都を離れるのもいいだろう。ウイリアムに鍛えてもらえ」


「はい。父上」


「確かモーリッツ伯爵令嬢のローズが今年から学園に通っているはすだ。そうだな。ローズが学園を卒業する2年後を期限とする。しっかり勉強してこい」


「はい。父上。あの……母上には?」


「…… あぁ。私が話そう。お前は部屋で謹慎しておれ」

シルビアの事を考えるとため息がでる。絶対に怒る。憤怒するだろう。


「父上、申し訳ありません」


「「はぁ」」

シルビアの事を思って、二人で大きなため息を吐いた。



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