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午後は大人の恋の時間

3、2、1、12時丁度に会社のチャイムが鳴り響く。

製造工場なので大きなチャイムがお昼休憩を知らせてくれる。

おかしな事に私が通っていた高校と同じチャイムがこの工場にも鳴り響く。

このチャイムでしる事ができた。

チャイムといえばこの音らしい。


あの嫌で仕方なかった高校生の時の気持ちが2年たっても少し思い出す事のできる。

工場のチャイムだ。

もういい加減にあの嫌な思い出を忘れたいのにと思っていても、

思い出される。


考えたくない事は嫌でも思い出される、恐ろしい呪いの音。


2年間ずっと聞いて聞いて、少しも思い出さない日はなかった。

もしかするとこの日々の訓練ともいえるチャイムで忘れる事がないように、

そう記憶に定着させているのかと思う。


神様の恐ろしい呪いか、

いや、あんな事にもう巻き込まれる事はないようにしてくれてるのかもしれない。

この答えはもっと後になってわかる事になるようだ。


そんな事を考えながら私は自分の机のパソコンの電源を切り、

机を軽く片付けていた。


みんながいそいそと食堂に向かうのを背中で感じながら、

皆が事務所をでたところで私は部屋の電気をおとすのだ。

事務所を出る人が気分が悪くはならないように。


電気を消す理由は2つある。

一番最後に部屋を出る人間が部屋の電気を消す事が規則なのと、

遅れて食堂に行きたいが為の理由だから。


無駄な電力は使ってはいけないのが会社だがらという理由で

会社の利益に貢献できない無駄なものは排除しないといけない理由で、

私は食堂に行く時間を少しでも遅らせて、居心地の悪い時間を減らしたい。


誰にでも説明できる言い訳をして、自分のいやすい空間をつくる。

それが世の中だから。


貴重なお昼休憩の時間だけれども、

必ず少し遅れて私は食堂に行くことにしている。

工場の規模が大きい事もあって食堂は食券を買い求める人であふれているからだ。

少し遅れていくと待つことなく食券が買えるので、

それが私には合っていた。


食堂に入ると直ぐに食堂仲間の人が声をかけてくれる。

「今日はここよ」

そういわれるのがなんだか、ちょっと恥ずかしくて私は胸のあたりで手をパタパタさせて、

急いで食券を買いにいく。


毎日食べるものはもうすでに決まっている。

『日替わり定食150円』

社員食堂様と呼ばなければいけない(*ノωノ)レベルの安さである。


唯一この会社の好きなところがこの定食なの。

美味しいご飯が150円で食べる事ができる、

しかも最後のほうに日替わりを取りにいくと、

社食を作っているおばちゃんが、

余りものの小鉢をおまけしてくれる事が多い。

私はそれを急いでもらって仲間のところに向かう。


「おはよう」

というと、一番手前の端に座ると、

そのテーブルに座っている女の子たちが次から次へとおしゃべりしだす。

私がいてもいなくても、このテーブルは止まる事無く会話が続いている。


ガチャガチャと話すその会話を聞きながら私は小さく食事しだすのだ。

余り音を立てないように、会話の邪魔にならないように、

遅れてきているので急いで食事をしないといけないオーラをだして、

食事するのだ。


小さく胸の前で手を合わせる。

「今日もいただきます」

そう心の中で唱えてたべはじめたら、

同じテーブルの木本さんが珍しく私に声をかけてきた。


「山口さんは恋人はいないの」

そういわれて私は食べよとしていたサバの味噌煮を箸からボトっと落として、

あわてて木本さんの顔をみた。

「ええ」

と思わず本当に困った顔をして声を出すからみんなが笑って私を見た。

それが何とも恥ずかしくて、やるせない気持ちになって直ぐに声をだした。


「私に恋人なんてできるわけないじゃないですか・・・彼氏いない歴19年の私です。」

そうぼそっと言うと、その声を聞いて、

木島叶さんが話に割り込んできた。

「そんなこと言って、女んは恋人がいなと腐るのよ、私はもう腐りかけてるわよ。」

と威勢よく話し出した。

そんな風に言われてまたちょっと下を向いてしまった私に木本さんが声をかけてくれた。


「まあ、人には恋人ができるタイミングがあるから、焦んなくていいいのよ。」

といってくれたので、何とか私の居場所ができたようなきがして、もう一度話すことができた。

「はい、19年間恋人は一度もいたことがありませんけど、いつかは運命の人を捕まえます。

いいチャンスがあれば恋人をさがしますううう」

と小さな声で答えた。


そんな風にいつも木本さんは声をかけてくれる。

この場面の答え方があっているのかは、いつも迷う所だけれども、

話さないと輪の中でいる事ができないので、色んな事を考えながら声にする。

人と話すのが苦手な私はいつも救われる。

木本さんがいなければ、この席には座っている事はできなかったと思う。


 

木本さんの話しに戻るとこうだ。

会社に新しく入社した西片さんという人がいて、

とっても可愛いらしい性格の人なんだそうだ。

その彼は、仕事も一生懸命だし、しかも若いのにみんなが嫌がる仕事を率先してやろうとする。

あんな仕事を一生懸命にする彼は彼氏にもってこいらしい。

ってのが木本さんの見解で、西片君はまだ20歳なんだけど、

どうも今は恋もしていないし、まして彼女もいないので、

彼女候補になるようなお友達はいないものかと会社で聞いてみてるらしい。




けれどもその場にいるみんなが口を揃えてこう言った。

「彼氏の年下は無理」

私の隣の高木心さん22歳はこうだ。

「1カ月でも年下は無理なのに、2歳も年下はもう異性に見えない、もうただの同僚決定。」

「頼りたいのに頼れない感じがするわ」


そういうと月本茜25歳も同じように言い出した。

「そうよね、年下ってだけで私も異性には見えないし、将来の事を考えるとそんな対象にもみれない。」


そんな風に話す先輩の話を聞いているとなんだか、

恋人を作るのはやっぱり色んな条件がいるものなのかと思っていたら、

木島さんが少し目を細めて私たちにつぶやいた。

「そんな事が言えるのも若いうちだけなのよ、

年々歳をとって30歳に近くなると男の条件なんてひろーーーーーーくなるんだから」


余りの言葉の力にみんなの食事が一瞬止まった。

そしてすぐに木本さんがフォローに入る。

「そうなの、恋人と出会うのは時期があるの、みんなも間違わない相手を早めに選ばないとね」


そういうと木島さんはちょっと涙目になりながら、

「私の彼氏はどこなんだろう、世界にはこんなにも人間がいるのに

私の彼はどこなの、私にはみつからない。確かに西片君かわいいけど、恋の対象にならなーいい」

といってすねだした。


「あああ、よしよし今日の合コンがんばろーね木島、恋人なんて運だようん」

木本さんが、いじける木島さんをなだめながら、

少し楽しい雰囲気にテーブルにする木本さんをやっぱり凄いとおもいながら、話がすすみ、

お昼の時間がとても流れていることに気が付いた。。


急がないと食事をする時間がなくなるわ。

私はとにかく食事を口の中にかきこんだ。

せっかくの食事の味がごっちゃごちゃになったのだけれども、

木本さんと木島さんの顔を横目でみながら、

月本さんと高木さんのひきつった顔を見ながら、

人と人とのコミュニケーションってなんて難しいんだろうと思いながら、

恋人ってやっぱり必要なのだろうかと思いながら昼食はおわっていった。


あわててみんなで食事を終えて事務所にもどった。

おしゃべりをしていると、時間がたつのは早いもので

なんとか時間ギリギリにもどれた。

ちょっとあわてて走ったので、乱れた髪と身なりを治して席につくと、

なんだか木島さんの事をまた少し思い出した。


どうしてあんなに恋人がほしくなるんだろう、私にもあんな風な気持ちがうまれたら嫌だな。

恋をした事がない私にはわからない感情で、ドラマやアニメのようなあんな、

好きな人を思って取り乱したり喜怒哀楽をグルグル回る生活なんて怖いわ。


人間と付き合う事がとっても苦手なのに、ましてや恋人なんて夢のような話である。



そんな風に思いながら、午後の仕事に取り組み始めると、

さっきまでの会話の事を忘れる。


何のとりえもない私には今はこの席で仕事をするしかないのだと。

自分のできる事はこれしかないと、少し寂しく思いパソコンに向かうのです。

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