いつもの朝
私の顔はとてもじゃないが、かわいいとは言えない。
きっともっと美しい顔に生まれる事が出来たなら、
誰からも愛される人になれたんだろうな。
そう思いながら電車の窓から外を見ていた。
遠くの流れる景色をみながら、時々窓に映る自分の顔をみておもうんだ、
自分の顔がもっときれいなら愛されるのにと思いながら、
ゆらゆら電車に揺られていた。
いつもは始発の電車にのっていたのだけれども、
今日は寝坊してしまって1つ遅い電車にのっている。
おかげで片道45分かかる電車はずっとたったままになった。
乗り換えまではずっとこのままたっていないといけない。
足が痛いな、最近は仕事の疲れが上手くとれなくて、
きちんと眠れない日が多い。
おかげでとても疲れやすい日が続いてる。
それもそのはず、会社の上司の機嫌が最近は悪いから、
色んな注意を受ける事がストレスになっていた。
おかげで寝不足気味だった。
最近の私に対する小言はこれだった。
「1番下の君が改善案を考えなくてどうするんだ」
いつもこれを繰り返し言われる。
時々ならいいけど、月に10個の改善案を各部署から出すように社内で決まっていて、
出さない人が多いから、その埋め合わせを私にさせようとやたら催促してくるんだ。
それが毎月10個集まらないと部長の機嫌がとにかく悪かった。
1個あたり200円の報酬が付くのだけれども、
みんなめんどくさがって出さない。
そんな毎月のように会社で改善案を見つける事は出来ないのに・・・っていっつも心の中で思ってた。
しかもどうして、いつもいつも私だけにいうのかも不思議だった。
他の人に言えばいいのに・・・
いや、どうして私にいうのかは分かっていたんだ、
わかっていてわかってないふりをしていた。
理由はきっとそうあれだ。
『私が口答えしないから』
この会社に入ったのは17歳の時だった。
偶然にも学校をやめて2か月くらいで仕事が見つかったのがこの会社だった。
高校を中退して、すぐにこの会社に就職することができたのはいいけど、
17歳の私が働く事が何たるかも、社会の常識もあまりわかってないような、
私が周りが大人しかいない私が会社に馴染んで仕事できるわけなかった。
そんな私に上司はこう言ってくれた。
「いつも下を向いて言われたことだけをしていればいいと、」
そういわれてから私は上司の言われたようにそうやって毎日を過ごしていた。
先輩から仕事を言われたら、少し下を向いて「はい」といって言われたことだけをする。
まちがっても言われた以上の事はしてはいけない。
返事はそう「はい」なんだ。
電車に揺られて45分、乗り換えして15分と15分、
後は駅から歩いて15分の通勤をもう2年続けている。
始発に乗って会社にいき、上司の言われた仕事をこなし、
定時になればまた同じ電車に乗って家に帰る。
それを2年続けている。
大人になればこれが普通とは聞いていたのだが、
恐ろしくつまらない毎日だった。
これがいつまで続くのか、そんな見えない恐怖はあの時のいじめよりも怖く感じるのだった。