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20話 それぞれの旅立ち

「ここが王都か、スッゲーな!! 何だよ、この建物!? 人もメチャクチャいるぞ!」


 先ほどから大声ではしゃいでいるのはフレットだ。

 そのおかげで、周囲からはとても視線を感じる。

 見世物じゃないんだけどなぁ。

 まあ、フレットが喜んでいるみたいだから良いんだけど。


 俺とヒルダはフレットを連れて王都に帰ってきている。

 理由としてはフレットに冒険者になってもらうためだ。

 今後、フレットが生きていく上で、霊峰で一人ぼっちというのも辛いだろう。

 それに、せっかく出会ったんだし、もっと仲良くなりたい。

 まあ、フレットからすれば故郷を離れることになるし、良い気分はしないかもしれないけど。


 俺って同年代の男友達ってほとんどいないんだよな。

 騎士団の奴らは俺のことを厄介者扱いしてたし、俺が元騎士団長の息子だからか距離を置いたり、逆に下心見え見えで近づいてくるような奴だっていた。

 だから、言葉遣いこそ荒いものの、真正面から向かい合ってくれるフレットは特別に感じるのかもしれない。


「まずはフレットを冒険者として登録しましょ! このままのペースじゃ日が暮れちゃうわ」

「そうだな、まずは目的を達成しようか。フレット、行くよ!」

「おう!」


 王都観光は一先ずおあずけして冒険者ギルドを目指す。

 まあ、冒険者ギルドへ行くまでの道中でも、「スゲー」、とか、「これは何だ!?」、とかことあるごとにフレットが反応を示すものだから、かなり時間がかかってしまった。

 このペースで王都を案内していたらどれだけ時間がかかるんだろう……。

 ちょっと嫌気がさしてきたな。


「これが冒険者ギルドってやつか。デカイな!」


 冒険者ギルドを見たときのフレットの感想は、正直聞き飽きた。

 これはちょっとからかってみようかな。


「フレットのリアクションってワンパターンだよな」

「何だと!」

「怒るなよ、別にそれが悪いとは言ってないだろ?」

「まあ、そうだな。悪かった」

「納得しちゃうんだ……」

「単純ね……」


 茶化したつもりだったけど、予想外の反応が返ってきた。

 本当に面白いというか純粋なやつだ。

 このまま成長したらそれはそれで問題がありそうだけど、大丈夫かな……。

 というか、詐欺とかに引っ掛かりそうで怖いんだよなー。

 なんとなくフレットの今後に不安を覚えてしまう。

 考えすぎかもしれないけど。


 まあ今から不安ばかりを考えていても仕方がないよな。

 自分の思考に一区切りつけて、冒険者ギルドの扉を開ける。


「中はこうなってんのか! 意外ときれいなんだな!」


 まだ建設されてから年月が経っていないということもあるけど、確かに綺麗な内装だと思う。

 掃除も行き届いているし、何より明るい雰囲気だ。

 これなら一般の人とかも気軽に入れるだろうな。

 こういう環境づくりも大事なんだろう。


 そんな俺たちに近づいてくる人物がいた。


「シグルズ、ヒルダ! 無事に帰ってきたか! 心配したぞ、急に飛び出すもんだから」

「ただいま、父さん」

「すいません、心配をおかけして」


 近づいてきていたのは俺の父さんだ。

 心配させてしまったらしい。

 竜を追いかけるときは、夢中だったから飛び出しちゃったんだよな。

 

「誰だ?」


 フレットだけは状況を呑み込めていないみたいだ。

 まあ、当然だよな。


「この人は俺の父さん。冒険者ギルドのギルド長だよ」

「ギルド長? 族長みたいな感じか?」

「そうだぞ、坊主。俺が、このギルドを作ったから、族長みたいなもんだ」

「へー! スゲーな!」

「そうだろう! 俺はシグムンド。シグルズの親父だ。よろしくな!」

「俺はフレットだ! よろしく!」


 ガシッと握手を交わす二人。

 どうやら相性は良いみたいだ。

 まあ、父さんも脳筋みたいなところあるし、似た者同士なんだろうな。


 その後は自己紹介や雑談などをして盛り上がった。

 フレットの冒険者登録もあっさりと終わってしまったし、一先ずの目的はこれで達成だ。

 そして、今日は疲れたから休んで明日にはまた王都を案内しようということで話が纏まった。


 だから今、俺とフレットは俺の家の俺の部屋にいる。

 父さんからお前の部屋に泊めてやれと言われたのだ。

 別に泊めるのは構わないし、もともとそうするつもりだったんだけど、なぜか俺が床で寝る羽目になった。

 まあ、俺のベッドは二人くらい余裕で寝れるサイズだけど、男同士で一つの布団はちょっとキツイ。

 それはフレットも同じ考えだったらしく、


「じゃんけんで決めようぜ!」


 と提案してきたのだ。

 普通は部屋の主がベッドだろ!

 と文句を言いたくもなったけど、男として勝負から逃げるのはダサいなと思ったからその提案に乗ることにしたんだ。

 まあ、結果は見ての通り俺の負け。


「三回勝負にしてくれ!」

「しゃあねえな。これ以降は恨みっこなしだぞ?」

「分かってるよ!」


 と恥を捨てて懇願して三回勝負にしてもらったんだけど、まさかのストレート負け。

 フレットの勝負強さを垣間見た瞬間だよ。

 フレットはいびきかいて寝てるし……。

 お願いだから涎は垂らさないでくれよ……。


「おい、起きろよシグルズ」


 誰かが俺の体を激しく揺すりながら呼びかけてくる。

 もう少し寝かせてくれよ。

 床で寝たせいで疲れが取れてないんだから。

 俺は呼びかけを無視して寝返りをうつ。


「起きろや!」

「グハッ!!」


 体を蹴飛ばされた俺はゴロゴロと床を転がっていく。

 完全に目が冴えた。


「いてえだろうが! 蹴るんじゃねえ!」

「うるせぇ、一回呼ばれたら起きろよ!」

「別に急ぐことなんてないだろ!」

「はぁ? さっさと王都案内しろよ! 約束だろ!」

「そんなに楽しみなのかい、フレット君。いやー、可愛いねえ。子供みたいで」

「馬鹿にしやがって!」


 そこからは取っ組み合いだ。

 我ながら子供じみてるとは思うけど、この時は別に変に思わなかったな。


 しばらく取っ組み合いをしていると、部屋の扉が開いた。


「朝から何してるのよ」

「ヒルダ!? 何でここに?」

「シグルズの家に来たらそのまま案内されたのよ。面白いものが見れますって」


 相変わらず家の使用人は俺のことを面白がってるみたいだ。

 そのおかげで、ヒルダに恥ずかしいところを見られてしまったじゃないか。

 後で文句言わなきゃな。


「二人とも喧嘩は終わった?」

「まあな」

「別に喧嘩なんてしてないし……」

「はい、はい。じゃあ準備してね。私は玄関で待ってるから」


 そう言ってヒルダは部屋から出て行ってしまった。

 残されたのは物が散らかった部屋と俺とフレットだ。


「何か、ヒルダって母親みてぇだな」

「俺もそう思うよ」


 部屋の片付けもそこそこに急いで着替えを済ませて玄関へと向かった。

 その後は王都の観光だ。

 俺とヒルダにとっては見慣れた街もフレットからすればどれも新鮮なんだろう。

 俺自身あまり来ないところもあったから、だんだんと楽しくなってきた。

 生まれ故郷といってもしっかり観光してみると意外と楽しいものだ。


 ただ、今日一日では回り切れなかったので明日も観光することにした。

 家に帰って風呂に入る。

 部屋に戻ってじゃんけんをして、床で寝る。

 昨日と同じ流れだ。

 このまま行けば明日も喧嘩からスタートしそうだな。


 そうした日々を数日過ごし、ようやく王都を観光し終えたのだ。

 床で寝る日々ともこれでおさらばだろう。


 なぜなら、心身ともに回復した俺たちは竜の墓場を目指すことにしたからだ。

 純白の竜アナスタシスの願いを叶えてあげないとな。

 王都の出口付近で持ち物の最終確認をしていると、


「それじゃ、俺は別行動するぜ」


 とフレットが言い出した。


「何か他の用事があるのか?」

「まあな。埋葬とは別口で頼まれたことがあるんだよ」

「それなら私たちも手伝うわよ」

「いや、いい。俺だけでやる。あの竜の墓参りには今度行くよ。立派になった姿でな。だから、そっちは任せる」

「そっか。本当に一人で大丈夫か?」

「当たり前だろ。俺を誰だと思ってるんだ?」

「じゃあ、また今度会おうな、フレット。寂しくて泣くなよ?」

「誰が泣くかよ。お前こそヒルダに甘えるのもそこそこにしとけよ?」

「甘えてねぇよ!?」


 そんなやり取りをしてそれぞれの目的地へと歩み始めたんだ。

 最後まで言い合いで終わったけど、嫌な気分じゃない。

 これが友達ってやつなのかもな。


 晴れやかな気持ちで歩く俺にヒルダは着いてきてくれる。

 俺やヒルダ、そしてフレットの冒険はまだ始まったばかりだ。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

本作は今回で完結という形を取らせていただきました。

ただ、シグルズとヒルダの今後について続編を書いていくつもりでいます。

本作を楽しんでいただけた方は、今後投稿されるであろう続編に期待して頂ければ嬉しいです。


作者自身いわゆるオムニバス形式ということで、一つの世界について様々なキャラクター視点から掘り下げた作品を作りたいと考えていました。

本作もその一つです。

ただ、あまりにも様々な視点を同時にスタートさせてしまった影響で本編が全く進んでいません。

(作者の言う本編は「ラスト・バスティオン伝説 ~最後の勇者と最後の砦~」です)


そのため、続編が出るのはしばらく先のことになってしまうと思いますが、その間は同作者のシリーズ作品を読んで頂けないかな~と淡い期待を抱いていたりします。

(やはり評価やブックマーク、PV数などを見るとモチベーションに影響がありますので)


少々長い後書きになってしまいましたが、本作が少しでも読者の皆様に面白いと感じて頂けたのならば嬉しく思います。

そして、今後の作品も応援していただければとても嬉しく思います。

読んでいただき本当にありがとうございました!

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