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孤島の主(仮)  作者: 梅桃
第一章
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8・孤島の住人の正体は-2

「他人のふりしてないでドルトもさっさと準備なさいよ~ぉ? ほらほら~ぁ」

「えー……。二人が本気モードなんだから、オレこのままでよくね?」


「「ファルル(様)の安寧のため(です)だわ~ぁ」」


 一見仲悪そうなこの二種族のハモり具合。

 仲が良さそうで何よりである。

 二人が特殊なだけかもしれないが。


 一応言っておくが、これはまだ本気モードではない。


「ファルル様の住む孤島を、我等のガードがあるにも関わらず、平然と踏み荒らす輩に容赦は必要ありませんよ! (にこにこ)」


 偏ったファルル愛である。


「……へいへい……」


 くしゃっと頭を掻いてため息を漏らしつつ、ドルトも更に変貌させていく。


 金色だった短髪は深い藍色に変わり、後ろの方は一握りの量が長く伸び黄金の装飾で纏められ、赤茶だった瞳は金色の瞳に……。


「え~っ……そっちに変わるの~ぉ?」

「こっちでいいだろ……」

「えぇぇ~~……」


 カーリィにじぃっと見つめられ、深く、それはもう深くため息をつき。


「はぁ~~~……めんどくせえええっ……」


 と漏らした。

 どうせこの後はどうなるかは分かっているから、面倒臭い……。


 仕切り直して……。


 人の形を取っていた、ドルトは一見して。

 背丈を低くした四足歩行の生物へと変貌した。

 触ればどこまでも沈みそうなふかふかとした毛は深い藍色、尻尾は先に行くほど白くなり綺麗なグラデーションで演出されている。

 いや、これを演出というかは知らないが。

 左耳には黄金の装飾が付いており、アクセントとして際立っている。

 瞳の色は金色。


 そして、仰け反る様に顔を天に向け……


──アオオォォォォォーーーーーーォォォォオオオン!!!


 と、孤島全域に響き渡るの声量で遠吠え、その地を激しく揺らした。


 瞬間、聴覚的にも精神的にも体感的にもズシンッ!と来る威圧感を放ち、ついにはこの孤島は三者三様の威圧感に覆われある種の不気味さを増していた。


 大概、やり過ぎである。

 どちらかというと、ドルトの場合はやけくそな方である。


「うふふ……」


 カーリィは両手をワキワキ、顔をウズウズさせながら、もう我慢ならないといった感じでドルトに飛びつく。


「やぁーーんっ! ふっかふか~~~! 気持ちいいわ~ぁっ」

「ちょっ、やめろって! あ゛ーーーっ鬱陶しいっ!」

「えぇ~……。いいじゃなぁ~い。ドルのさっきのでちょっと足竦んだみたいだしぃ、少しくらい遊んでたってへーいきっ」


 と、容赦なくその体に手を巻き付け、つやつやふかふかの毛並みに顔を擦りつけ、もふもふする。


「うっぜーーーっ!」


 そう言いながらも、ちょっと避ける真似をするくらいで完全に拒否らないくらいには仲良しの証拠なのだろう。


「なんだかんだ言っても、ドルトも国王の息子ですし、フェンリルですしね。この孤島の空気はドルトに一番良く合っていると思いますよ」


 またなんか、おかしな単語が出てきた気がするが、気にしないで頂きたい。

 むしろフェンリルが獣族大陸に属するものなのかと疑問。

 というか魔族大陸に属するべきではないのかとすら思ったりもしなくもないが、深く考えると負けである。


 故に、フェンリル族の様に「どっちでも~?」な種族は、それぞれの感性により獣族大陸だったり魔族大陸だったりと二大陸間で別れて在籍している。


 そのお陰かどうかは知らないが、特に獣族大陸・魔族大陸は比較的友好的であったりもする。

 そういうものだ。


 そんなドルトは、獣族大陸の一つであり大陸の主国家でもあるフェンリル族主体のロズワール王国の出身である。


 ドルトには二人の兄がいる。

 三男なので余程の事がない限り後を継ぐことはない。

 気楽なものだ。


 ドルトが三男坊だからといって、二人の兄と遜色あるかと言えばそうではない。

 普通に、このまま順調に成長し力を蓄えれば、父である王や先に生まれた兄と変わらない。

 単純に、生まれた順番の差なだけである。

 その辺に関しては、妬みとかあるわけでもなく、むしろ喜ばしい限り。

 挙句に嫌な公務はほっぽりだして、全て代理に任せる風来坊である。

 カーリィも似た様なもので……。

 二人とも実の所、リティウスに国を放り出して……とか人の事を言えなかったりするのでお互い様である。


「中身は子どもですけどもね」

「おいこら、リト! カーリィのが子どもだろーっ」

「どっちもどっちです」


 と、久しぶりに本来の姿に戻って、首をコキコキと鳴らしたり、腱を伸ばしたり、背伸びをしたり、思い思いに軽く感覚を慣らして解していく。


 このそれぞれが血統書付きの三種族が揃って、本当に何も起きないのが不思議である。

 各国の均衡は、様々な条約と力関係により絶妙なバランスを保ち成り立っているのだ。

 何かが綻びれば均衡は崩れるのは必至なのだが。


 この孤島の存在は、生態系然り、有限・無限袋の存在然り、この三人とまだ見ぬ住民達により常軌を逸した場所となっている事を、「特に」ファルルは知らない。

 こういうものだと思い込んでいるのだから。

 ぽよぽよふわふわなファルル補正万歳である。


 ファルル曰く。

 リティウスは、立派な角と綺麗な目が素敵ね。(にこにこほわほわ)

 カーリィは、どこまでも飛んでいけそうな六枚の翼がとっても綺麗ね(ほぅっ)

 ドルトは、毛並みがとっても綺麗で気持ちいいわ。金の瞳が宝石みたい(はぁ~っ)


 と、そんな程度の感覚で。


 もう一度言うが。

 魔王でセラフでフェンリル(王族)なのは、ファルルは知らない。

 まだ、知らなくていいと思う。

 知らない方が幸せという事だってあるのだから。


 そんな三人にあれやこれやと世話を焼かれているファルル。

 彼女が、ある意味最強なのでは? そんな気がするのは気のせいではないはずだ。


 ちなみに。

 この孤島にいるのはこの三人だけではないのだが。


 ファルルを取り巻く環境は、とんでもなくとんでもないものである事は確かな様である。

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