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孤島の主(仮)  作者: 梅桃
第一章
7/44

7・孤島の住人の正体は-1

なんだか初めての評価とブクマを頂いていたようです(滝汗)

ありがとうございます!

拙いですが頑張ります~!

 所かまわず本気で力を解放してしまうと、力のないファルルのような人間はそれだけで押し潰されてしまう。


 辺りには重厚な威圧感のある空気が、ただひたすら漂っている。


 風貌を変えた三人。


 まずはリティウス。


 頭にはその輪郭に沿う様に角が生え、銀髪だった髪は光沢のある漆黒の長髪に、優しげだった目は切れ長に、深いエメラルドだった瞳は吸い込まれそうな深淵の瞳に、人と思わせていた耳は尖り、二本の牙が生えて口角を上げると鋭利な歯がはっきりと見える。

 更に爪は鋭く伸び、背中からは艶のある立派な黒い翼が生えている。

 見事なまでの黒ずくめに透明な肌色が浮きだって、見る者によっては不気味ささえ感じる。


 ちなみにこんな姿ではあるが、吸血鬼とか淫魔などではない。

 ただの悪魔族サタンである。


 時代と共に、過去のあれやこれは流されあやふやとなり、今では普通に適当な感じだ。

 そんなものである。


 とはいえ、リティウスは歴代の中でも特別能力が高い。

 魔力の器も体力の器も力の器も底知れず。

 桁違いである。


 その細身の体にも関わらずから放たれる気は、そこに立っているだけで皆が跪いてしまう程の圧倒的な空気。

 例え離れていてもこの孤島の範囲程度なら、常識人や小者なら硬直して動けなくなり、失神してしまうことだろう。

 慣れている者ですら、足が竦んでしまう程なのだから。


 ただ例外はいる。

 この森に住む生物は勿論、カーリィもドルトも平然としていた。

 自分達に無暗に害をなす存在ではないと知っているからだ。

 基本食料としての調達は、この孤島の生物ではなく全く別の場所からなので、動物達も大半は気にすることなく平然と周辺を闊歩している。


 が、害をなす魔物は普通に狩り取っている。

 そこは情け容赦ない。

 全てはファルルの安全のため。


 甘い。


 故に、この孤島の生態系は様々な事情が重なり常軌を逸したものとなっている。

 知らない者からすれば、宝の山なのだ。


「は~ぁ……。ほんっとリトってば規格外よね~ぇ……」

「まぁ、魔王って言うんだからこんなもんじゃなくねー?」

「ふっ、ふふふ。ははははっ! 当然です! これでも半分以下程度には押さえていますが。それに、近くにはファルル様がいらっしゃいますからね。負担を掛けてしまうのは本意ではありませんっ! ふはははは!」


((……))


 と、少々様子がおかしなテンションのリティウスに、ジト目を送る。


「ね~ぇ……。こっちの軽く壊れた感じが本来の性格って、ファルルに教えてあげてもいいのかしら~ぁ……」


 ファルルが目の前にいればまだ理性は保たれる。

 が、目の前にいなければこんなものである。

 本来の姿に戻れば、魔族──悪魔族の血が騒ぐのだろうと思われるが、これでも抑える事を頑張っているという事は彼のために付け足しておこう。


「ファルル様は、そんな小さな事を気にされる方ではありませんよっ! ふふふっ」

「その前に、魔王が孤島に住み込んで、料理洗濯掃除するとかどんだけ魔族大陸は適当っつぅか暇なのかって感じだよなー」


 何やらおかし気な単語が出てきた気がするが気のせいだろう。

 荒くれ者が多い大陸の、ただの魔(族大陸の)王というだけの話である。


 魔法袋に続き、魔王の存在。

 ファルル、とんでもない物に囲まれとんでもない者に囲まれている様だ。


 ちなみに、正式に呼ぶのであれば魔大陸王陛下である。


「二人とも人の事は言えないでしょうに」

「えーっ? リト程じゃないと思うけどな~ぁ」


 とか言いつつ、カーリィは平屋周辺を更に結界で聖域として覆う。

 そこに、流石にリティウスの魔気に当てられちょびっと気持ちの悪くなった小動物などが集まって来る。

 平然としているとはいえ、やはり与える負荷はそれなりなのだ。

 多少気持ち悪くなるのは仕方ない。


 そんな作業をしながら、カーリィも更に変貌していた。

 

 くるくるふわふわヘアの茶髪は頭部上側で結われたキラキラの金髪へ、大きめに模られていた目は少し細長くなり、茶色だった瞳は透き通ったスカイブルーへ、健康的に見えていた肌も白く透明感のある肌色へ、そして赤く燃え上がる様な気を纏いその姿を現わした。

 背丈も伸び、女の「子」からスタイル抜群の女性へと変わる。

 爪先はうっすらと薄紅色を差し、口角を上げて優美に微笑む口元と同じ色をしている。

 そして、背中に出現させた六枚の翼を豪奢に広げた。


 放つものがリティウスとは真逆であれど、カーリィもカーリィで相当な威圧感を放っているので更にずぅんっと重圧が伸し掛かる。


 赤く燃え上がる気を纏った彼女の周囲では、金色やプラチナの光の粒子が漂いより圧巻的な空気を醸し出している。


「よぉ~っし。こんなものかしら~ぁ。うふふふふっ!」


 そして、カーリィも多少壊れ気味である。


「ほんと、お前も大概だよな」

「全くです」

「ふふん。アタシも半分も出しちゃいないわよ~ぅ? ほほほほほっ!」

「こんな適当な感じの奴がセラフとか……ないわー……」

「なぁ~んですって~ぇ? 今すぐ天槌を喰らわして差し上げてもよろしくてよ~ぉ? お~っほほほ!」


 と、なんだかまた様子のおかし気な単語が出てきたのは気のせいである。

 気のせいったら気のせいだ。


 カーリィは、天使族の高位である熾天使セラフィムの一人だ。

 更に、一応こんな感じでも熾天使の頂点だ。

 つまり天使族の長である。

 神族の高位者には及ばないが、放たれる圧は神族の低位者と大して変わらない。


 このリティウスとカーリィの二人だけで、二種族大戦が開けそうである。

 とりあえず、それだけは止めて欲しい。


「つぅか、悪魔族の癖に絶対聖域結界が平気とか。おかしいだろ」


 思わず肩を竦めるドルト。


「そうですか? 普通ですよ? 普通」

「普通じゃねぇから……。カーリィだって、リトの気で平然としてるとか大概馬鹿げてるよな」

「そ~ぉ~? 普通だわ~ぁ。ねぇ、リト~? 普通だわよね~ぇ。うふふっ」

「普通ですね。はははっ!」

「……」


 テンションも会話も、少しばかりおかしいのもきっと気のせいでああろう。

 という事にしておこうと思う。

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