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孤島の主(仮)  作者: 梅桃
第三章
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1・『オリジン』-1

本日二話連続UPです。

こちらを先に読まれている方、前話もありますのでご確認下さい。

──『オリジン』が冒険者を引退した。


 その噂は冒険者の間で瞬く間に広まった。


 オリジンは、水面下で色々と有名だ。

 その一番はパーティメンバーである。


 人族の二人。


 一人は、技量・力・耐久、武器や防具に至るまで、それらをひっくるめた強さをやたらと追求する剣士。

 冒険者となり僅か一年程で頭角を現してきた。

 言うまでも無くガレインである。


 もう一人は、飄々としていているが、誰もが匙を投げるトラップや魔法陣の解除、すばしっこい動きて相手を翻弄する盗賊。

 ガレインとは冒険者となる前に出会い意気投合してからの付き合いで、同じく盗賊としての頭角を現してきた。

 こちらも言うまでも無く、サバトである。


 ここまではあり得る話でもあるので噂になる事はほとんどない。

 といっても、冒険者となり一年後には若いながらも将来性の高い二人は、注目を集め始めるのだが。


 問題はこの先である。

 

 滅多に表舞台に出てこないと言われるエルフの、且つ希少なハイエルフ。

 名をディルメロッド。


 ハイエルフは、上位精霊魔法を使う事で有名だ。

 エルフの内、上位精霊から加護を受けた者がハイエルフとなる。

 更に、複数の上位精霊から加護を受けた者をハイヤーエルフと呼び区別をつけているが、その数は更に希少となる。

 ひっくるめてハイエルフと呼んでいるのだが、『オリジン』に加わっていたのはハイヤーエルフの方であった。


 そして、ダークハイエルフ。

 名をアシュリー。


 エルフ族と繋がりが少ない人族では、エルフとダークエルフは険悪であるというのが一般的な解釈だが、実はそうでもない。

 単純にエルフの里の生活が性に合わず里と縁を切った者、つまりエルフの里の加護を受ける事が出来なくなったがために褐色の肌となってしまっただけなのだ。

 その辺りもエルフたちは理解しているので大して問題にもならず、ただ性に合わないだけで、大半は決してエルフの里と仲違いしているわけではないので、交流もそれなりにある。

 では、里から出ているハイエルフはどうなのかと言えば、里と縁を切ったわけではないので加護を受けていられると言うだけの話である。

 エルフとダークエルフとの違いは、寿命がハーフエルフよりは長いがエルフより短いというくらいなのだが。


 そもそも滅多に表舞台に出てこないエルフの、更に希少なハイエルフとダークハイエルフ。

 そんな二種族がセットでいる事を見る機会は無いに等しい。

 故に、二種族が同パーティにおり和気藹々としている事自体に慄いた。


 次に、偏屈者が多いが他種族との交流が頻繁に行われているドワーフ。

 名をゼドー。


 エルフとダークエルフでさえも驚く事なのに。

 二種族とは価値観の相違で気が合わないと言われるドワーフすらも仲間となった事にあんぐりと口を開け、ギルド内は騒然となっていた。


 更には、『オリジン』の様子のおかしな武器を作っていたために注目を浴びる事になってしまった。

 もっとも、ガレイン達が無理難題を押し付けるため思考錯誤を繰り返す内に腕も上がり、だんだんと偏屈ドワーフによる偏屈装備が増えて行っただけなのだが……。

 パーティに入り数年後には、『オリジン・ドワーフシリーズ』として冒険者となったからには一度は手にしてみたい憧れの装備として見られるようになってしまう。


 ちなみに。

 パーティとして活動していた時分は、武器専門のはずが防具にまで手を付ける羽目になり、涙目になっていたのはここだけの話。


 最後に、周囲が唖然とする要因となったメンバー。


 魔族の底辺に位置し、人族の大半が敬遠の対象として見ていたコボルト。

 集団ごとに異なる性質を持ち、メンバーであるコボルトは、時代が変わっても他種族(主に人族)からの強い迫害を受け続けているという意識が色濃く残る集団の出身であった。

 が。

 そのコボルトは気が弱く集団の仲間とは性格が正反対で、家族からも白く見られており居場所がなかった。

 ただ、集団の一人として見られていただけである。

 コボルトは他集団の者を仲間として受け入れる事はしない。

 それが分かっていて、集団にも居場所のないコボルトは逸れとなった。


 ひ弱で鈍くさいコボルトは、狩りが出来ず魚すらも取れずただひたすら植物を食べ、さして知能も高くないコボルトはいつ強い魔物に襲われるかと怯えながらも、洞くつを転々としながら日が昇れば起き沈めば寝ると言う原始的な生活を送っていた。

 

 そんな折、ガレイン達と出会う。

 あまりにも貧弱でどの集団の毛色とも違うコボルトに興味を持ち、また、コボルトもそんな自分に関わろうとする彼等に興味を持ち、仲間となる。


 コボルトには、名を付けるという習慣はない。

 そんな名無しだったコボルトは、エンウィーダと名付けられた。


 エンウィーダがオリジンのメンバーとなったお陰で、少なくとも拠点としていた街ではコボルトに対する偏見も薄れた。


 『オリジン』とは。

 コボルトの様に同種の集団にいながらも馴染み切れない者や、自身の所在が定まらない者の集まりであった。


 そんなメンバーと共に活動していた『オリジン』。


 ダンジョン巡りは、ほとんど人の手がつけられていない場所をメインし、また強靭な魔物達のいる場所へ向かい、かと思えば、立ち寄った街でのんびりと腰を据え住人の依頼を引受け、日々を過ごす。

 時には、高ランクパーティですら手こずる様な魔物獣討伐で共闘したり、割に合わない報酬にも関わらず村落へ行き依頼を引き受けたりもする。


 そんな彼等のパーティは、いつの間にか冒険者の間に広まり上位ランクパーティとして認識されていたのだが、ギルドランクを引き上げる事をしなかった。

 上げればそれなりに特典も付くのだが、その分制約も増える。

 目立ちたいわけでもないし自由に動き回りたかった彼等は、幾度となくギルドから催促が来ようとも一定のランクから上げる事に応じる事はなかった。


 一貫性のない行動と上位に位置する実力があるのにランクを上げない、『偏屈パーティ』。


 そんな風にも呼ばれていた。

ブクマ頂いてました! ありがとうございますm(_ _)m


更に過去編入りました。

だんだんと過去へ遡っていくスタイル。(;^ω^)

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