表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
孤島の主(仮)  作者: 梅桃
第二章
43/44

17・集落にある呪具

「大分話が逸れたけど、腕輪の話に戻るわよ~ぉ? で、この腕輪は分かる古魔術語だけで見れば、負の望みを代行させるようなものって事なわけだけど~ぉ」

「その負の望みっていうのはなんでもいいのか?」


 と、ガレインが問いかける。


「多分そうじゃないかしら~ぁ。ちなみに小さい所で分かりやすく言うと~ぉ、これから降り掛かであろう受難をこいつに浴びせてやれ、とか~ぁ、失敗は全部こいつのせいになる様にしろ、とかそういうの~ぉ? ここからはちょっと憶測になるけれど、この腕輪を対象に装着させれば依頼者が死ぬまで効果持続って感じじゃないかしら~ぁ」

「対象が先に死んだ場合は……」

「そこで契約終了になるのか、他の対象を見つけるのか……。他にもあるわね~ぇ。まぁ、呪具と言うのは何でもそうだけど~ぉ。何者かの介入により契約中にこの腕輪そのものが壊れてしまった場合、媒体……今で言うとこの子だけど、当然壊れてしまうわね~ぇ。良くて廃人、最悪……死。後は呪具の特性上執行者に反動があるか周囲に影響を及ぼすか、ね~ぇ……」

「最後は自業自得でざまぁみろだが。周囲に影響あるかもってのはごめんだな。それに嬢ちゃんがそうなるというのは納得いかねぇな」

「現時点で解呪も破壊も不可能な以上、今の所さっきのは起こりえないわ~ぁ」


 そして。


「詳しく分からないわね~ぇ。ちょっと神族引っ張り出してみる事にしようかしらね~ぇ」


 と、ガレインとサバトにとって更にとんでもない事を言い放つカーリィのせいで、落胆のため息から別の意味でのため息に変わったのは気のせいではないはずだ。


「はは……」


 まさか、神族という言葉が出て来るとは思ってもいなかった。

 普段お目に掛からない天使族、しかも上位職である熾天使がこの場にいる事自体、内心ではいっぱいいっぱいの二人である。


 そこに神族まで現れるとなると、もう笑うしかない。

 それも、空笑いの方で。


「まぁ、俺達もこの腕輪の事に関して調べてはいるんだがこれといった成果がない。だが、ダンジョン産ではない事と明らかに人為的な手と精霊以上、もっと言えば神的な手が加わっているのは分かっている」


 場所を変え、酒とつまみを口にしながらガレインは言った。

 分かっていると言ってもその程度の事で、何時誰が何処で何の目的で作ったかが分からない事には変わりない。


「もしかして、集落を拠点にしつつもあなたの仲間がいないのは」

「あぁ、腕輪の手掛かりを探しにな。あちこち飛び回っている」

「治してもらったけどよ、オレもコイツも冒険するには足手まといにしかならねぇ事情だったからな。だから、拠点を動かず立ち寄る旅人等から何かないか探っていたりな」


 その成果で得たのが、人族には手のつけようのない神的な類だ。

 もっと言えば数年もかけているに関わらずたったそれだけなのだ。

 だが、出来た事がないわけではない。


「魔力を吸収してるって言ったろ? 前はもっと多量の魔力を吸っていたんだ。あの腕輪は依存している奴の魔力を吸って力を得ている。魔力量が多ければ多い程効果は絶大だ。吸われる方はそれだけで弱ってしまうからな。もうお前さん方には分かっているかもしれんが……」


「首飾りですな?」


 バロフの言葉に頷いた。


 微々たる成果だが、せめて負担を減らそうと集落の職人が腕輪の効果に耐えうる物を作り上げた。

 腕輪に干渉するのはどうやっても無理だった。

 なら上書きとは違う方法で魔力の吸収を阻害するものを作れば多少は変わるのではないか。

 そう考えたのだ。


 完全に抑止できなかったのが無念だ。自分の腕はまだまだか……。と落ち込んではいたが、それがあるないではその負担は段違いだ。


「あの剣を打ったドワーフですかな?」

「いんや。そいつは防具も作れるが基本的には武器専門だ。もう一人のドワーフが装飾や防具の類を専門にしているからな。そいつが作ったんだ」


 大したものだとバロフは呟いた。


「そもそもどうしてファルルちゃんがあんなのしているのよ~ぉ?」


 カーリィの疑問ももっともだ。


「あぁ、ちょっと話すと長くなるんだがな……」


 ガレインの深いため息と同時に、サバトも少しばかり渋い顔をした。


「まぁ、これからこの話をすると夜が明けちまうぜ。続きは明日にしたらどうだい。つぅかよ、オレが眠たいだけなんだがよ。はははっ」

「それもそうだな。それじゃ部屋に案内しよう」


 それもそうだと頷く面々を見、サバトは一人家に戻って行った。


(話したからと言ってどうにかなるっつぅ事でもないだろうけどよ)


 そんな事を思いながら。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ