9・集落の宴会
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「おお、客人。こっちだこっち! 嬢ちゃんもミクリアさんもこっち座んな!」
サバトが目敏くリティウス達を見つけ手招きで呼びながら、予め確保して置いた一番勝手のいい場所に誘導する。
地べたではなく、切り株で作った椅子が並び、中央にある大きな切り株のテーブル。
主だった者や客人達が座る場所の様だ。
同じ様な場所が他に二ヶ所あり、女衆や男衆で別れて座っていた。
同性同士集まり、普段言えない悪口雑言を吐くために。
ただ、声が大きいので筒抜けなのは気にしてはいけない。
時折、お互いのテーブルからそれぞれに野次が飛ぶのも一興だ。
酒や料理がこれでもかと並べられていく中、程なくして。
集落の長だという初老の男が小高い壇上に上がり、宴会の合図をした。
「何の祝いかしらないが一ヶ月ぶりの宴会だ」
「何の祝いかも知らねぇのかよー!」「俺達も知らんがな! はっはっは!」と笑いながら野次が飛ぶ中、
「うるせぇ。俺ぁ、さっきまで山入ってたんだよっ」
頭を掻きながら一緒になって笑う。
「ファルルちゃんが少し成長したって聞いたぞっ」
「あぁそうそう! 人見知りから少し脱却したっつってたな!」
と、野次に紛れて追加の情報が与えられた。
おかげで、話題となった当のファルルはミクリアの腕にしっかりと掴まって顔を埋めている。
「おお。そりゃ良い事だな! ファルルもちょっと成長したか。まぁ、いつも通り飲んで食べて騒げばよし! でもって客人方が珍しいもんを差し入れしてくれたみたいでなぁ。何と驚け! 今日は山の幸だけじゃねぇぞ。海の幸が盛り沢山だ!」
「おおっ!」
「こりゃ楽しみだ!」
「まじか……」
「おいお前ら、よぉーっく味わって有難く頂けよ? 俺は、三十年ぶりくらいだがな! 心から感謝する。まぁ、待ちきれねぇ手の早え奴が何人かいるみたいだが……」
「「「わはは!」」」
「おいお前等、ちょっと手を止めろ。乾杯するぞ! ちぃっと成長したファルルに、乾杯!」
「「「乾杯!」」」
「あぁ、それからあっちの方で海の幸の網焼きやってるからな! 食いたい奴はありがたーーーく、ものすごーーーーーく感謝しながらてめぇらで勝手に取りに行けっ」
適当である。
今回の宴会の名目はファルルだが、飲んで騒げればそれでいい。
そして、男はサバト達の座るテーブルへと移動した。
席に着こうと椅子に手を掛けた時、リティウスとバロフの姿が視界に入り、硬直したまま二人を凝視した。
(はあっ!?)
思わず指を差し口をパクパクさせている。
(いや、まさか。そんなはずはねぇぞ? 俺ぁとうとう耄碌したのか? いやいや。待て待て待て待て。俺の記憶が間違ってなきけりゃ……)
「おい、ガレイン。おめぇ、何やってるんだ」
「あ、いや。すまないな。客人、失礼した。俺はガレインという。一応集落を取り仕切ってるもんだ。長なんて言われてるが、ちっぽけな集落なんだ。大したことはない。長なんてのはただの雑用係だしな。こいつや集落の連中に扱き使われてよ。まぁよろしく頼む。客人、名前を聞いてもいいかい」
「私はリトと申します。今日は宴会に誘って頂いてありがとうございます。てっきり、こちらの家の方が集落を治めているのかと思っていましたが、違ったのですね」
「おうよ。ファルルとミクリアはまぁ色々とあってな。この地に家を構えてるんだ」
「私はバロフと申す者。集落の皆さん方は良い顔をなさっておられますな」
「そうだろう? こんな辺鄙な土地だが、みんな頑張ってくれているんだ。なんもない所だが、ゆっくり過ごしてくれ。大層なご馳走を振舞って貰って、二人には本当に感謝している」
一通りの挨拶を終え、ガレインは二人に頭を下げた。
次々に運ばれてくる料理に舌鼓を打ちながら、雑談をする。
(リトにバロフ……。間違いねぇな。懐かしいなぁ。全く、五十年以上も変わられておらんとか……やっぱり人間じゃぁねぇなぁ……)
「しかし、このファルルが初日から懐くとはな。ちっと成長したかい。なぁファルル?」
粗野だが決して乱暴ではなく、ファルルの頭をグリグリと撫で掻き交ぜる。
されるがままに頭を揺らしながらも恥ずかしそうに笑みを浮かべ、ガレインの脇に顔を埋めた。
「あはは。まだまだだなっ」
「まぁ、これをきっかけにもっと外に出て来るんだぞ?」
「成長すりゃその内それらしくなる。余計なお世話だ。なぁ? ファルル?」
ファルルの頭をポンポンと叩いて、酒を煽る。
「ぎゃははっ」
「いいぞ! もっとやれーっ」
あちこちからそんな声が上がり、笑いや手拍子で広場全体が盛り上がっていく。
ガレイン達も同様にその様子を楽しみながら、酒や料理に手を伸ばし談笑する。
壇上では、既に出来上がった男達が馬鹿な芸や踊りを披露し場を賑わせたいた。
2-6 ある一文を削除しました。
ストック分見返して情報分が被っていたので(-"-;A