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孤島の主(仮)  作者: 梅桃
第二章
33/44

7・集落の始まり

 集落には名前はない。


 街道集落。

 旅の中継所。

 実りの里。

 救いの里。


 と、まぁ呼び方は様々だが、街道集落と呼ばれるのが一般的だ。


 この道を行き交う者は多く、数十年前まではそこかしこで野宿をし、また街に向かって移動する。

 道は長く、整備もされず、そして魔物や魔獣と格闘する事もしばしばで、隣街へ移動するにも相当な体力と精神力が必要だった。


 ある日、丁度中間地点に引退した冒険者達が休憩所として周辺を切り開いた。

 最初は、行き交う商人や旅人・冒険者、すぐ後ろに聳える山から食料等を調達し、旅人達が気兼ねなく休める場としての機能のみであったが、この地にそんな場所が出来たのは彼等にとっては充分であった。


 宿賃は、金品であったり食料であったり様々であるが、それは今でも変わっていない。

 宿に泊まる財的余力のない者にも、囲いのされた立て付けの大きな屋根の下で身を休める様にとも気を遣っていた。


 数年たった頃、中間地点に出来たただの休憩所には、同じく冒険者を引退し余生をのんびり過ごしたいという者がちらほらと集まり始め、家が建ち始めた。

 彼等は、冒険者らしく商人や農業者に負けず劣らず知識があり、折角集まったのだからもう少し開拓しようと魔法や技術を活用し土地を整備していく。

 お互い補えるあえる技術を持っていたのも、開拓を速める事に繋がった。

 昔よくここを活用していたというリタイアした商人や旅人達も住み着くようになっていた。


 そして集落が出来上がる。

 開墾された田畑では、栄養をたっぷり含んだ土壌と定期的に降る恵みの雨のお陰で、季節ごとの作物が豊富に実り、集落といえども豊かな生活を送る事が出来るようになった。

 集落とはいえ、本当に豊かな土地なのだ。


 なぜ、この地に誰も目を付けなかったのか。

 口には出さないが多くの人が、惜しい事をしたと思っているに違いない。

 が、実際やれと言われれば、二の足を踏むような地でもあったのは間違いない。


 そんな集落には、様々な種族と職人で大半が埋まっている。

 人間・エルフ・ドワーフ・獣人・各種族のハーフ。

 人族大陸にしてはここまで種族が混在しているのが珍しい。

 力自慢も多く、現れる獣・魔物・魔獣も、集落の住民・そして頻繁に立ち寄る冒険者達があれよあれよと倒し、平穏を維持している。


 小さいながらも、冒険者兼商人協会を設置した。

 元冒険者や元商人が常駐する事にする。

 人の流れが途切れないので、それなりに需要はあったようだ。

 現金でのやり取りではなく、物々交換も出来るようにした。

 調達した素材と不安になりつつある食料を交換したり、協会が入手した素材と獣肉を交換したり。

 目的地の方角へ行く者に、逆へ向かう者が配達を依頼したり。

 その場合は、一番近くの東西の街までいき、街の各協会を配達物を届け中継して貰う事にした。


 休憩所として成り立ってから三十年、住人も増えず減らず、そして住人と旅人達、東西の隣国との絶妙な均衡を保ち今日に至る。


「おおーい! 宴会だ宴会! 宴会するぞー!」

「おおー! 一ヶ月ぶりの宴会だなぁ! 久々に飲み明かすか!」


 投げだしていた道具や収穫済みの作物を片付けつつ、集落に戻った雨宿り組は外で仕事をしている者達に声をかけた。

 こうやって声を掛けるだけで、掛けられた者も更に声を掛け、数十軒そこそこの全てにあっという間に伝わっていく。


 宴会の理由は雨宿り組しか知らないのだが、彼等は理由も聞かずに仕事を中断し準備を始める。

 ついでに宿に泊まっている客達も引っ張り出して騒ぐのが、集落の宴会の正しい楽しみ方でもある。


 宴会の度に、ファルルはミクリアや集落の人達から離れる事が出来ずに、おどおどしながら遠巻きにその様子を眺めるのもいつもの事である。

 旅人という見知らぬ者が大勢集まるのだから、ファルルにとっては心臓がバクバクする程のイベントなのだ。

 仕方ない。


 ぞろぞろと家の中から住人が出てきて、女衆達が料理を作り始め、広場の切り株で出来たテーブルや椅子を綺麗にし、地べたにも座れるように敷物を並べ、松明や魔法具のランプに明りを灯す。

 手慣れた様子で着々と準備が進む内に、あちこちから楽し気な歌声が聞こえ始める。

 適当にその場で作る詞に適当に音を付けて歌っているだけなので、語尾がどん詰まりになったりするのはご愛敬。

 楽しければそれでいいのだ。


 こんな事が日常茶飯事で、この光景を初めて見る者もそうでない者も、その足を止めふらりと集落に立ち寄る。


「そこのおっちゃんおばちゃんにーちゃんねーちゃんも宴会楽しんでいきなよ!」


 そんな呼び声があちこちから掛かり、いつの間にか広場は賑やかになっていく。

 そして、集落にゆっくりと夜の帳がおり始めた。

2-1 距離感が分かり辛いなと思いまして、修正しました。


馬でも二週間はかかるんだ。 → ここから馬でも東西隣街まで二週間はかかるんだ。


集落が丁度中間地で国境でもあるという設定なので、両隣国にしようかと悩みましたが……。

両国間が馬で4週間。これが離れている方なのかそうでないのか良く分からないまま、とりあえずこんな感じで設定してます^^;

地理関係(特に距離感)にはガチで疎いので大目に見てやって下さいまし(;^_^A

いや、もうちょっとこんなもんじゃね? って詳しい方いましたら教えて下さいー;;

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