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孤島の主(仮)  作者: 梅桃
第二章
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4・集落の宴会事情

 ファルルは、突然現れた二人の剣幕に体を強張らせてサバトの腕を掴んで、びくびくと様子を眺めていた。

 涙目である。


「バロフ……。分かりましたから落ち着……」

「貴方が素直にお戻りになれば済む話でございますな」

「分かりましたから……。子どもがあなたの剣幕に怯えていますよ。他の方々も驚いていますし、少し落ち着きなさい」


 言われて、サバトの後ろで固まっている涙目のファルルに気付き、


「これは……。お嬢さん、気が付かずに怖がらせてしまいました。私はバロフと申します。突然訪問し、皆様方に不躾な振る舞い深くお詫び致します」


 深く頭を下げ、怒気のはらんだ顔をようやく緩めた。


(む。あの腕輪は。何やらよろしくないものの様ですな)


 目敏く腕輪に気付くもそれを悟られない様、手にしている月幸花と肩に止まっている月虹鳥に目を遣り、


「リト様……。あのげっこ……いえ、なんでもございません。月虹鳥ですか。良い鳥を頂きましたな。この鳥は飼い主の災いを退け幸運をもたらす鳥と言われております。月虹鳥の羽で模された花は、実りある豊かな道を照らすと言われております。大事になされるがよろしかろう。お嬢さん、お名前をお伺いしてもよろしいですかな?」


 バロフもまたファルルの目線にまで腰を落とし、頭に手をかけやんわりと話しかける。


「あ、う……」

「お嬢様……」


 少し離れた場所でハラハラしつつも、ミクリアは「頑張って下さいませっ!」と目で応援する。

 それを見たファルルは、ゴクリと息を飲み込みつつ、


「ファ……ファルル、モ、モルナリット…オズラーク、です……。ようこ、そ、おいで……下さいま、した……」


 本日二度目の自己紹介である。


「「「おお。嬢ちゃんが……」」」


 ミクリアを始め、集落の男衆達は本当に珍しいとばかりに二度目の感嘆の声を上げた。

 親バカにも近い勢いである。


「ファルル殿と申されるのですな。よいお名ですな」


 はにかむ様に俯いて、サバトの背中に顔をこすりつける姿が何とも可愛らしい。


「嬢ちゃんが一歩成長したなぁ! 今日は宴会でもするか!」

「おお、それはいい。リト、お前さんもバロフさんもカリカリしておったらせっかくの月虹鳥の幸運も逃げてしまうぞ! 今宵は一緒に宴会で楽しもうじゃないか」

「久しぶりに客人を交えて宴会か! 色んな話を聞けそうだ! こりゃ楽しみだな!」

「それはよろしゅうございます。私も宴会のお手伝いを致しましょう」


 ミクリアも、パンッと両手を軽く叩きにこやかに頷く。


 思わず顔を合わせるリティウスとバロフであったが、拒否する間もなくあれよあれよと参加が決まってしまい、既に宴会準備の話で盛り上がり始めていた。


 集落で宴会の口実のラインは低い。

 ちょっとした慶事ですぐに宴会が発生する。

 生まれた赤子が初めて立った事でも喜び、旅人が道中の話をしてくれると言うだけでも宴会をする。

 娯楽の少ない集落ならではの楽しみ方だ。  

 

「まぁ、たまには気楽に過ごすのもいいではないですか(にこにこ)」

「はぁ……。あなた様は気楽過ぎますがな……。まぁそうですな、たまには気兼ねなく楽しませて頂きましょうかな」


 苦笑しつつも、バロフも心なしか楽しそうである。

 いつも堅苦しい(押し付けられる)業務をしかめっ面でこなしているのだから、仕方ないと言えば仕方ない。


「リト様、バロフ様。準備が整うまでこちらでゆっくりなさって下さいませ」

「お気遣いすみませんな。主に変わりお礼申し上げる」


 いつの間にか雨も上がっており、雨宿りしていた集落の面々は、ミクリアが乾かした自前の服に着替え、途中だった仕事も中断し宴会準備のために集落へと戻っていった。

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