3・孤島の日常
「カーリィ。今日は何を採ってきたのですか?」
「んーっとね、今日はキノコ各種にキャロット、トウモロコシも採って来たわ~ぁ。ベリー数種類にスターレモン、それからアップル、他にも色々こまごまとっ。ちょっとだけ隣の島にまで行って来ちゃった~ぁ」
「私は、鹿と鳥を少々、ですね」
「なんだよ、リトもカーリィも戻ってたのかよぉ。ファルルー、ただいまっ」
と、勢いよくファルルの肩に飛びつくように一人の少年が現れた。
「わっ……」
「ドルト、お帰りなさい」
「ふっふ~ん。ドルト遅いわよ~ぉ?」
「今日大量だったんだ。止められなくってさぁ、へっへ。あぁ。それから昨日から居ついてた奴、あんまりしつこいからちょっときつくやっといたわ。慌てて船に乗り込んでたからもう来ないだろ」
ドルトと呼ばれた男の子は、鼻の下を指で軽く擦りながら、日に焼けた肌にぴったり合う白い歯を見せながら、ニカッと笑う。
「ドルト、えら~ぃ。久々にしつこかったわよね~ぇ」
二日間、孤島の禁忌を昼も夜も無く犯し続け、その度にしつこく放り出していたのだが、諦めの悪い侵入者は、たまたま見つけた度の大陸にも居ない生物を見つけ密漁し持ち出そうとしていた。
そこへドルトがこれでもかというくらい魔気を放ち続け、ボロボロになり気絶者続出。
そのまま海に放り込んだ。
それでも、誰一人死人を出さないくらいには気を遣ってはいる。
が、泡を吹き気絶する程度にはボロボロにしたのだった。
「これでまたファルル様の安全が確保されましたね」
「ってか、今更だけどよ、もういっそ遮断すればいいんじゃね~?」
「それは駄目です。ファルル様の息が詰まってしまうでしょう」
「へいへい」
遮断すれば、外から見えなくなる代わりに内からも外が見れなくなる。
そして、自然の気の流れも変わり、閉鎖された空間になる。
工夫も出来るが、出来るだけゆったりとした自然を感じて貰っていて欲しいので、リティウスはそれを否定した。
「さて。今日の収穫は……っと」
ドルトがいうと、それぞれに袋から今日の収穫をどっさりとこれでもかというくらい取り出し、庭に並べて行く。
海の幸山の幸がそれはもうどっさりと。
少々とは一体何だったのか。
疑問に思ってはいけない。
ちなみに肉も魚もすでに全て処理済みである。
有能なファルルの仲間達。
「みんな凄い……。リティウス、カーリィ、ドルト、今日もありがとう~。ふふっ」
胸元で両手を合わせて、にこにこと笑顔を浮かべてお礼を言う。
「「「どういたしまして」」」
この笑顔を見れただけで頑張った甲斐がある。
三人は思わずにへらっと顔を緩めて、にこにこファルルを暫く眺めていた。
「不足していた物は揃いましたし、暫く収集は必要ありませんね。倉庫へ持っていきましょう。せっかく新鮮な果物があるんですから、終わったら外でティータイムにしましょうか。昨日仕込んでおいたデザートも美味しく出来上がっているはずです」
「おっ。やったーー」
「あっ、天気もいいし、ここでティータイムにしよ~ぅ」
「賛成。ファルルは危なっかしいんだから。ここで大人しく待ってなよ?」
ファルルがコクンと頷いたのを確認して、それぞれが準備に取り掛かる。
一気に賑やかになった場を楽しんでいたファルルは、みんなを見送り泉の側にある切り株に腰を下ろした。
そんな孤島の住人達の日常は、こんな感じでゆったりと流れていた。